04
『な、でここに……』
上手く口が回ってくれない
それほど、彼女がここに現れるのは衝撃的だったのだ
「亜希ちゃん、朝から何か調子悪そうだったし…心配だったからついてきたの」
大丈夫?と心配そうに言われてももう恐怖しか感じない
何でそんなに"普通"に喋ることができる?あなたのせいで私は今――!
『…っ何で嘘をついたの…?』
「嘘?」
『私に、イジめられた…とか……』
「あぁ、それね」
クスリと笑って織姫はベットに腰をかける
反射的に少しでも距離をとろうと後ろに後ずさってしまう
「ごめんね?利用しちゃって。でも元はと言えば亜希ちゃんが悪いんだよ?私からあの人を奪おうとするから…」
『あの人…?』
また"あの人"だ
『…ねぇ、誰のことを言っているの…?私は誰も奪おうなんか……』
「嘘ばっかり……いっつもそうだよね、亜希ちゃんは。何も知らないって顔して…私から色々なものを奪っていっちゃう」
『私、本当に…っ』
「っもうやめて!!」
説明しようとした言葉は織姫の大きな声に遮られる
あの織姫が大声を出すということが信じられず、少し茫然と彼女を見つめてしまう
「私は亜希ちゃんやみんなが思っているような、優しくていっつも笑ってるだけの女の子じゃない!!私だって普通の人間なのっ!恋だってするし、嫉妬だってする!!」
『織ひ…』
「なんで黒崎くんは亜希ちゃんのことばっかり見てるの?今だってそう…どんなに私が話しかけても、黒崎くんの視線の先には亜希ちゃんがいる…っ!こんなことになるなら…」
泣きそうな顔で、織姫は立ちあがった
見下ろす織姫と見上げる亜希の視線が交わる
「こんなことになるなら、亜希ちゃんなんかとトモダチになるんじゃなかった!!」
そのまま、保健室を勢いよく飛び出していった織姫を…どんな顔で見送ったのかは、よく分からない
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