00 始まっていた物語
【序章】
――僅かな浮遊感
「ごめんね、亜希ちゃん」
――悲しそうな表情の女
「亜希ちゃんがいるかぎりあの人は私を見てくれないから」
――その手を前に突き出したまま、女は笑った
「……ごめんね、亜希ちゃん」
――まるで天使のような笑みで言うのは悪魔の宣告
「私のために…いなくなって?」
――直後に重力に従い堕ちていくカラダ
『……おり、ひめ』
――上を見れば笑顔で手を振っているクラスメイトの姿がはっきりと見えた
『――ッ!!』
校舎の屋上から突き落とされ、思いっきり地面に叩きつけられる
……コンクリートではなかったのが唯一の救いだろう
冷たい土の感触を頬に感じて少しだけ安堵する
――何でこんなことになったのだろうか?
何度自分に問いかけても答えがでなかった疑問
そのまま意識が遠くなり―…そのまま瞼を閉じた
双子の姉の顔が、最後に浮かんだ
始まっていた物語(それがオモテに表れたダケ)
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