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≪いっつも一人で泣いてるからさー少し元気づけてあげたいんだよね!≫
『へー。じゃあ明日は花、2人分持ってこなきゃね』
≪うん!……っ、いたたたた…≫
元気よく返事したかと思えば急に苦しそうな声をだしたミヨちゃんに亜希は慌てる
『だ、大丈夫!!?』
辛そうな表情で胸元をおさえているミヨちゃんに何もしてあげることができず少し泣きそうになる
≪…っだ、大丈夫だよ…≫
肩で息をしながらももう痛みはひいたらしく少しだけ笑うミヨちゃん
≪最近よくあることだから…もう慣れたし≫
『慣れたって…』
あんなに苦しそうにしていたものが慣れたからといって平気になるわけがない
"慣れる"というのは恐ろしいことだと思う
感覚が麻痺していき、その時感じたことがなくなっていく
"痛い"と感じたことがなくなっていくたびに、楽しかったこともなくなっていく気がする
≪……そんな顔しないでよお姉ちゃん≫
よほど今自分は情けない顔をしているのだろう
年下の子に慰められてしまった
≪そりゃ確かに痛いけどさ。お姉ちゃんといると少しだけ痛いのがなくなるんだよ!!≫
『…別に気を使わなくても……』
≪本当だって!何かこう…あったかくなるっていうか……≫
一生懸命喋るミヨちゃんを見て亜希はクスリと笑う
『そうだったら嬉しいけどね』
≪信じてないね、お姉ちゃん≫
ぷぅっと頬を膨らまして拗ねているミヨちゃんの頭をヨシヨシと撫でる
『嘘だよ。ちゃんと信じてるよ?』
――だってミヨちゃんは私の"友達"だもの…
いつかは”成仏”というカタチで別れることになるだろうけど、今は大事な友達
今日初めて心からの笑みを浮かべたと思う
朝からずっと作り笑顔と無表情ですごしてきたから…
『早く成仏しなさいよ?』
ミヨちゃんのことを考えると早く成仏したほうがいいに決まっているが、亜希の気持ちとしてはまだ、少しでも長くいて欲しいと思ってしまう
≪大丈夫!成仏するときはちゃんとお姉ちゃんに挨拶にいくから!≫
そう、と呟いていつものように始まったミヨちゃんの話を聞いていく
犬が目の前を通っていって驚いた、やっとつぼみだった花が咲いた、とかそんな他愛もないことを話すミヨちゃんを、亜希は眩しいものを見るように目を細めて見ていた
。
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