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03





≪もしもし!?亜希なの!!?≫


キーンと耳鳴りがする程高い声で叫ばれて思わず携帯を耳元から離す


≪いったい何時だと思っているの!?こんな時間まで連絡1本しないで…!≫


言葉だけ聞けば"夜遅くまで"遊んでいる娘を心配している親だと思うだろう

だが…今はまだ、7時だ


『ごめんなさいお母さん…少し寝ちゃって…』


家から一番近いという理由でこの高校に通わされているせいで家にはいつも5時前帰宅という毎日

もちろん遊びにいったりだなんてできやしない


≪まぁ学校で寝てたというの!?大丈夫?何も変なことされてない!?≫


先程とはうってかわって今度は泣きそうな声で聞いてくる母親に必死にため息をかみ殺す


『大丈夫よお母さん。今から帰るから、ね?』


≪今すぐ帰ってらっしゃい!あ、私が迎えに行ったほうがいいかしら…≫


『…っいらないってー。大丈夫だから…』


その後二言三言話してやっと通話が終わった


『――はぁ……』



















自分を産んでくれた人たちがオカシイことにはだいぶ前から気づいていた

ヒステリーで超過保護な母親に、過剰な期待をかけてくる父親

愛情という名の鎖に、期待という名の錘




「亜希ちゃんは可愛いからねぇ。親御さんもきっと心配してるでしょうね」


「愛されているわねぇ。羨ましい程理想の家庭だわ」


近所の人たちが身勝手な理想を見ていることにもだいぶ前から気づいていた




昔からドコへ行くにも隣には母親がいた

"1番"しか認めてくれない父親のために必死に勉強した




そんなギリギリの生活の中でも…双子の姉がいたから、耐えれたというのに

あの人たちは、その片割れすら奪っていった

あの時の絶望は…とても言葉で表すことなんてできない

やっと、最近になっていつも通りの生活が出来るほどに癒された




私にとって家は地獄でしかない

学校も…安心できる場所ではなくなった




『…………』


【佐藤】と書かれた玄関の前で一度深呼吸して…笑顔をつくる


――よし、ちゃんと笑えてる


ガチャ


『ただいまー』




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