03
「うわ!!落ちた!!!」
長鼻の男が大きな声で叫んでいたら、その脇から別の声が入ってくる
「ンマ――!心配するな」
「え?誰!?」
「奴は町を自由に走る。"ガレーラカンパニー"、1番ドック。"大工職"職長、カク!」
成程、先ほどのスピードを見せた男が"カク"という名前の男らしい
オカマ口調の男と美人な女性が麦わら帽子の彼と接触する
だけど、そんなこと今の自分には何の関係もない
『―――ルフィ、』
あれだけ探したというのに、いざ本人を前にすると何て声をかければいいのか迷ってしまう
小さな小さな声でその名前を口に出す
もちろん、相手に届いているなんて思っていない。これだけの人ごみの中、こんな小さな声が届くわけがない
「ん?」
――だけど、それは大きな間違いだった
地獄耳としか言いようがない耳で自分の名前を聞きとったルフィが、こちらを見た
『……っ』
目があった瞬間、我慢することができずに勢いよく走ってルフィに飛びついた
周りにいた人間は驚いたようにこちらを見ていようが関係ない
飛びついた際、今までずっとかぶっていたフードが外れ、顔が露わになる
『ルフィ、久しぶり!私のこと覚えてるかしら!?』
「は?え?……は?」
腰まであろうかという長い赤髪、白い包帯で片目は見えないが黒い目が嬉しそうに瞬きを見せている
ロープなんて野暮ったいものを羽織っているが、全体的に華奢な印象を受ける体つき
年の頃は…20歳前後ぐらいだろうか?
ルフィに笑いかけている彼女は文句なしの美貌を惜しみなく笑みの形にしている
儚げな印象を受ける、"綺麗"なその女性を、ルフィは十分すぎる程知っていた
だが……おかしくないだろうか?
「……アリス、姉ちゃん…?」
アリスに最後に会ったのは確か10年前だったが…全く、容姿が変わってない…?
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