悲しき詩 | ナノ




18


エクソシストのこと、ノアのこと、愛結のこと――話さなければたくさんあった


「ふぅん…あの時の連中、ノアに愛結は捕まってるわけ」


咬み殺すべき"敵"を把握した雲雀は今にも動き出しそうではあるが…


「それも存在しないはずの"江戸"にいる可能性が高い、と…」


獄寺が呟いた通り、"江戸"が示す場所に行けない限り愛結を助けに行くことすらできないのだ


「何かの暗号…?いや、場所ではなく人という可能性も……」


頭の回転が早い獄寺はブツブツと呟きながら考え込んでいる

その横で、珍しく山本も真剣な表情で何かを考え込んでいた


「…山本?」

「ん?あぁ…姉ちゃんのこと考えてたんだけどさ」


姉―――あの日いなくなってしまった、山本那美


「姉ちゃんってアクマで、中身?は波留兄だった、んだよな…」


分かってはいるが、どうしても納得できなくて、山本は顔を俯かせる

どうしようもなかったと、アレは姉ではなく婚約者だった波留だったのだと分かってはいるが、それでも山本にとっては"姉"だったのだ


「………」


アレンはそんな山本を痛ましげな目で見つめる

彼のような表情をした人間を、一体何人見てきただろうか


「……知っていますか、山本。アクマに囚われた人の魂はみんな、解放を望んでいるんです」


この目で様々なアクマの魂を見てきたが、どれも全て、悲しい叫びに満ちた辛く痛ましいモノだった


「僕たちエクソシストは、その悲しみの連鎖を断ち切るために戦っています」

「悲しみの、連鎖……」

「―――僕は、マナを…育ての親を、アクマにしました」

「え…!?」


初めて聞く事実にツナは驚く


「マナに殺されかけた時に、このイノセンスが目覚めたんですけど……マナを壊した僕に、彼はありがとう、と言ってくれました」


壊してくれてありがとう、と


「今は納得できないと思います。同じように悩む人を数えきれないくらい見てきました。時間が経てばきっと、折り合いをつけることもできます。いつか、大切な思い出になると思いますから……」


アレンの心が込められたその言葉に、山本は小さな声でありがと、と呟いた




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