悲しき詩 | ナノ




05



「あー…まぁ、俺の仲間…というより"家族"がな」

『家族…?でも紅蓮、前家族は皆亡くなってるって…』

「あぁ、確かに俺を産んだ家族は死んでる。でも、本当の家族は別にいるから。俺も、お前も……」


そう言って愛結の顔に触れる紅蓮の顔は、少しだけ悲しそうで…でもどこか懐かしそうで、何かに耐えているような、そんな色々混ざり合った顔


『…っ触らないで!』


パシッ

胸の奥が苦しくなった気がして、反射的にその手を振り払う


「……おー怖い怖い。ヒステリックな女は嫌われるぜ?」


振り払われた手をヒラヒラとさせて笑う姿は、見慣れた、自分の知っている"紅蓮"だった

先程の顔は見間違えだったのではないかと錯覚するほどに


「まぁ、今の俺から言えることはお前の逃げ道はどこにもないってこと。大人しくしててくれれば頭のソレも大人しくしてるんだから、頼むぜ」


言いたいことだけ言うと、この空間に唯一ある出入口、まっ白いドアに手をかける


「このドアも当然愛結じゃ開けれないからなー」


余裕たっぷりに笑う紅蓮に腹が立ち、その苛立ちを全て込めて近くに会った枕を思いっきり投げつけた


バンッ


「おー怖い怖い」


本人に当たることはなく、ドアに勢いよく叩きつけられた枕に舌打ちがこぼれる


『っ紅蓮のバカ――!大っ嫌い!!』

「俺はアイシテるぜー」


ドアの向こう側、ハハハと軽い笑い声がだんだん遠くなっていき、そして聞こえなくなる

自分1人だけとなった白い部屋、愛結は苛々した気持ちのまま、勢いよくベットに飛び込んだ

寄生型のお蔭で傷はだいぶ癒えており、腹の傷ももうしばらくたてば完治するだろう

この時ばかりは寄生型であることに感謝だ


『……もう、何なのよ、一体…』


紅蓮が、何考えているのか全く分からない

敵ではないとは言っていたが、傷つけられ、閉じ込められている今その言葉を信じることはできない

忌々しい頭の輪っかのせいでイノセンスも封じられている今、愛結に出来るのは体力を回復させることしかなかった

ただ誰かの助けを待つお姫様なんてガラではない。どんな手を使っても、何が何でも必ず生き延びる―――教団から逃げたあの日、私はそう誓ったのだ


『見てなさいよ、紅蓮……』


絶対にココから逃げて、ツナたちのもとに帰ってみせる

―――ココがどこなのか、見当もつかない状態ではあるが




オヒサシブリ?
(頭に浮かぶのは、彼らのこと)


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