04
『…っはなして!』
掴まれた手を振り払おうとするも、紅蓮の手はピクリとも動かない
男と女の、根本的な力の差に心が折れそうになるも、ここで退くわけにはいかない
『は、なして……っ!』
どこまでも余裕な笑みを浮かべる紅蓮を、思いっきり睨みつける
そうでもしないとあまりの無力感に涙がこぼれそうだった
「………何、それ」
だがそれが紅蓮の機嫌を損ねたようで、彼の顔から笑みが消えた
「あのさぁ、状況分かってる?愛結チャンよぉ」
『ちょっ、』
グイッと手を頭上で一括りにされて非難の声をあげるも紅蓮は一切表情を変えない
「今お前は俺に全部、命すら俺に握られてる状態なの、分かってる?だから――」
つぅ、っと空いている手で愛結の首を撫でる
「――今ここでお前の首を絞めることぐらい余裕でできちゃうんだぜ」
その言葉に目を見開いた愛結
徐々に力を込められていき、段々霞んでいく視界で見えた紅蓮の顔は――笑っていた
『ぐ…、れ……』
もうダメかも、そう思った時、唐突に首の圧迫感が消えた
『ゴホッ、ゴホゴホッ…』
「なーんてな、俺が愛結を殺すわけないじゃん。言っただろ?俺は敵じゃないって」
あと少しでも強く絞められていたら間違いなく死んでいたというのに、紅蓮は楽しげに笑う
拘束していた手も離され、ようやく呼吸が整った愛結はくっきりと付けられた紅蓮の手の跡を見てため息をこぼす
――どうりで痛いはずだ
「俺たちがお前を殺せるはずないしな」
先程殺されかけた手で、優しく首に触れられる
殺せないのか殺したくないのか…先程の言葉からでは判断できないが、取りあえず現状殺される心配はない…らしい
だが、俺"たち"と言ったが……
『……他に誰か、いるの?』
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