02
「……別にさー、俺はお前の敵のつもりはないぜ?」
皺のよったシーツにチラリと視線を向けた後、何事もないように話を進める紅蓮
お前の、という部分が強調されたような気がしたのは、きっと愛結の聞き間違いではないはず
『なら、何で……何で、私に剣を…っ』
覚えている最後の光景は、紅蓮の武器"篝火"が自分の腹を突き刺したもの
ズキリと僅かに悼む腹が、あれが嘘ではないと主張する
『、あっ…ツナたち、ツナたちは!?リング戦もどうなったの!?』
そうだ、あの時はリング戦、大空の戦いの真っ最中だったはず
自分が抜けたせいで不利な方向にいってなければいいが…
「あァ?何で今アイツらの名前が出るんだよ」
『いいから教えて!あの戦い、どっちが勝ったのか知ってるの!?』
「……興味ないから詳しくは知らんけどガキ共のほうが勝ってたんじゃねーの」
不機嫌そうな顔をしながらも教えてくれた情報に安堵する
きっと勝ってくれると信じてはいたが、やはり心配は心配だった
『そっか、勝てたんだ…うん、良かった、』
「……」
油断していた愛結は気付いていない――自分がツナたちのことを口にするたびに紅蓮の表情が段々消えていることに
「………うぜ」
『え?』
いつの間にかすぐ目の前に立っていた紅蓮に軽く肩を押され、あっけなく体は後ろへ倒れていく
視界に白い天井と不機嫌そうな顔をした紅蓮が映る
『……、な…』
「俺の前で」
驚く程低い声と、真剣な目
「俺の前で俺以外の奴の名前だすな」
どこか嘆願の響きもあったそれに飲まれそうになるが、寸前で踏みとどまる
『…っ、仲間を…心配するのは当然よ、』
グッと部屋の気温が下がったような気がするが、怯まず紅蓮と視線を合わせる
『仲間なの、私の大事な』
「…違う、お前の"仲間"は、俺がいれば充分だろ」
もっと早く引き離せばよかった
小さく呟かれた言葉に一瞬気をとられる
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