悲しき詩 | ナノ




01 オヒサシブリ?



『―――、ん……?』


目が覚めて最初に見えたのは、見覚えのない真っ白な天井だった

上半身を起こして周囲をぼんやりと見るも、やはり見覚えはない

自分が寝かされていたベットも、壁も床も家具も、全部真っ白な部屋

それ以外の色を拒絶するかのように、恐ろしい程何もない白

そんな白い世界の中で、今着ている黒いドレスは浮くなんて言葉では言い表せないくらいに、違和感を醸し出していた

教団の服を着ていたはずだが…


「―――オハヨ、愛結」


第三者の声……いや、聞き覚えのあり過ぎる声に、視線を向ける


『………紅蓮、』


いつの間にかドア近くの壁に寄りかかって軽く手を振っている男の名前を、愛結は小さく呟いた


「服はボロボロだったから着替えさせたぞ。よく似合ってる、黒いドレス」


いつもと変わらない調子でこちらに近づいてくる紅蓮


「このまま起きないんじゃねェかと思うぐらい寝てたぞ、お前。寝過ぎも体によく、」


『――どういうことなの』


だからこそ、怒りがこみ上げてくる


「は?何だよ急に」


『っ、なんで、アンタがココにいるの!なんで…っ!!』


感情的に怒鳴りかけるも、何とか抑えて大きく息を吸う

紅蓮相手に怒りに任せてしまえば、全てはぐらかされて終わりだ


――冷静になれ、私


ポーカーをするみたいに、表情を隠して相手のカード(腹)を探らなければならない


『―――…、アレンから聞いた。私を"裏切り者"だと教団に報告したのは紅蓮だって』


「あぁ、それ聞いたんだ。本当だぜ。俺が教団にそう報告したぜ」


嘘だよね?と言外に匂わせた問いかけに、あっさり紅蓮は認める

ハハ、と笑うその顔から罪悪感は見つけられない


『……ねぇ、紅蓮…』


どうしてそんな嘘をついたの?

あなたは、私の敵なの?

様々な思いがこみ上げてきて言葉にすることができず、ただギュッと白いスーツを握りしめることしかできなかった

.

[ 170/461 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -