天女情報



「ばれていたか」

「ふん、当たり前じゃ。儂を誰だと思っておる。」

「……引きこもりな変人、か?」

「違いない」


カステラを食べ損ねたな、などと考えながら自室がある教員長屋へと向かう。
半助はそれに何も言わずに後をついてきた。


「しかし盗み聞きとは、お主良い趣味を持ったな」

「仕方がないだろう。これでも親切心でお前に教えてやろうと思ったんだから」

「何をじゃ?」

「天女について、だ」


半助の言葉に儂は目を向ける。
すると半助は天女について話し始めた。


「今日の午後、五・六年生で合同の実習授業があったのは知っているだろう?」

「ああ、七松六年生が楽しみじゃと言っておったからのう」

「実習中に、天女が落ちてきたんだ。
それをその七松が見事にキャッチしてな……天女は見たこともない着物を着ていて、自分のことを天女だと言っているんだ。」


粗方学園長から聞いたのと同じ話だ。
しかし半助の話には、まだ続きがあった。


「それで、身寄りもないというから急遽職員会議になったんだが……」

「天女とやらは事務員になったのじゃろう?学園長から聞いたぞい」

「いやそうなんだが……私たち教員は断固として反対したさ。
実戦経験のあるプロ忍に近い六年生はともかく、一年生や二年生はまだ幼い。
それなのにもしその天女がくノ一や間者だったらどうする?何かあった後じゃもう遅い。」

「……矛盾するのう。それだけの理由があれば何故事務員なんぞに」


学園外に出さないだけなら、ほかにも手段はある。
ここは仮にも忍術学園。くノ一教室の生徒でも、女一人を軟禁監禁するなんて簡単だ。
そうでなくとも関係が良好な城に身柄を引き渡す、そのくらいは普通だろう。


「最初に天女を見つけた五・六年生が猛抗議してな……。
そんなことをするなんて可哀想だ、とすごい剣幕で、とうとう学園長が折れたんだ」

「五・六年生が?……ふむ、なかなか興味深いのう。じゃが、どうせお主ら教員は静観じゃろう?」

「余程のことがない限りは、な」


余程のこととは、死人が出ないことだろう。
まあ、教員にとっては忍者の卵の成長が一番大切といったところか。
あの天女が忍者の三禁の一つである【色】に対しての訓練になれば――――大方、そんな考えだろう。


「で、お前はどうするんだ?」

「ん?半助、お主さっきの話を聞いておらんかったのか?儂は学園長の意思に従うと言っておるじゃろう」

「私は"忍術学園用心棒"にではなく、"暁成秋椰"の意見が聞きたいんだが」






痛いところを突かれた。






学園長も気づかなかったのに、流石、というべきか。
なんとかはぐらかそうかとも考えたが、半助はじっと目を見つめてくる。
……やれやれ、ここは正直に話すしかないか。
儂はふう、とため息をついて、捨て台詞を呟いた。


















「……やはりお主には敵わんのう」
















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