■ 恋慕、死なば諸共
「大人しく降参したらどうだ」
「NOCじゃないんだから、降参も何もないでしょ」
「そんなに鉛玉が恋しいか」
「ジン、あなたに殺されるのなら本望よ」
埒の明かない平行線上のやりとりに、彼の煙草だけが短くなっていく。額に突きつけられたままの銃口はまだ少しだけひんやりとしていた。
NOCなんかじゃない。だけど、それを立証できる人はいない。疑り深いジンに疑念をかけられたが最後、誰も彼の納得するような身の潔白を証明できず、赤い花を散らしていく。
「これが最後だ......洗いざらい吐け」
冷たく、いつにない表情をした彼。だけど彼の手にかかるのなら。
「残念。なにも出ないって言ってるのに」
「フン強情なやつだ......あばよ」
「悔いはないわ......ジン、愛してる」
満足気な、それでいて複雑そうな表情を一瞬だけ浮かべ彼は引き金を引く。
「“愛してた”ぜ」
息絶えた女に吹きかける煙は憐憫か弔いか。
不器用な二人の恋は永遠に成就しない。
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