■ 柔い肌に触れたいと

   最近どうしても気になることがある。

「あの、スモーカーさんストップ」
「......」

   そう、これ。スモーカーさんが急にこちらのほっぺたをつまんで、あろうことかふにふに上下左右に動かすのだ。確かにほっぺは柔らかい方だと思うけど、わたしをスクイーズか何かと勘違いしてません?力加減はかなりしてくれていて大した痛みはなく、それが余計に愛玩動物に対する戯れのようでなんとも言い難い感情になる。さらに言えば喋りづらいし無言のスモーカーさんも怖い。

「あふぉ、のひひゃふんれふけろ」
「あ?」
「の、い、ひゃ、う!」
「分からねェ」
「いや、だから伸びちゃうんですけど!?」

   ぱっと解放された頬を守るように手で隠す。大丈夫、まだ伸びてない。近い距離にいるスモーカーさんを見れば不思議そうな顔をして胸元にストックされた葉巻へ手を伸ばしていた。

「もう、なんでったってそんなにほっぺを触るんですか」
「なんだ、まァ、触り心地が良くてな」

   少しバツが悪そうな様子で火をつけた彼はこちらに煙が行かないようそっぽを向いてしまうから、追いかけるように煙の立つほうへ回り込む。

「お疲れなら早く寝た方がいいですよ」
「嫌か?」
「うーん。嫌、というか変な感じだなって」
「別に意味はねェが」

   そう言いつつもいつもより柔らかい目線はどこか慈しみの色を宿していて、やっぱり不思議な気持ちだ。
   まさか、あるいは、ひょっとして、太った、とか......?そうかもしれない、最近の自分を省みれば原因がないこともない。それでスモーカーさんはこの表情なのだろうか、甘やかされている自覚はあったけれどこのままではまずい。夏も近いことだ。ただ触れたいだけだったというスモーカーさんの気なんて知らず、わたしはダイエットに勤しむことを決意した。

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