一階に一旦降りて、女子棟に来た凛たち。
さっそく、二階の凛の部屋から回ることになった。


凛ルーム

大丈夫。バレない。さっと見せてそれで終わりだ。
凛は、自分に暗示をかけるように言い聞かせて、思い切りよく扉を開けた。

「ここが私の部屋だ」

彼女の部屋は基本的に白で統一されており、にシンプルな部屋だった。
しかし、ただシンプルなだけでなくガラスのローテーブル、月のように丸いランプ、文字盤のない棒だけで構成された壁掛け時計など全ての家具がオシャレだった。
ローテーブルの下には明るめのグレーのカーペット、勉強机の上には水色と黄色のブリザードフラワーが差し色に置かれていた。
極め付けにほのぼのするのが、タンスの上に写真が何枚か入れられるガラスの写真立てが置かれており、そこには今までクラスで撮った写真やオールマイトなどお世話になった人たちのが飾られていた。

「ここが凛の部屋…」
「お!?轟どうした?」

瀬呂が驚くのも無理はない。
今までの部屋では、さほど興味がない轟は中に入るのなんてほぼ最後だったのに、急に凛の部屋には一番乗りで入ったからだ。
実は轟は、自身の部屋での彼女の言葉に気づいてしまったのだ。自分はまだ凛の部屋に入ったことがないと。1番最初に入りたいのに、このままでは他の奴に先を越されてしまうと。
無事に一番乗りすることができて、轟はホッと胸をなでおろした。

「わ〜大人女子って感じ!」
「おしゃれ〜」
「大人のお姉さんって感じの部屋だな」

「わー!この写真!オールマイトが遊園地に行ってる!レアだ!!」
「そういえば八木ってオールマイトの娘だもんな〜」

次々と高評価が出る中、凛はこのまま無事に終わりそうである者に対して気が緩んでしまった。
峰田だ。彼は自分が己の趣味のために隠し場所や隠密を得意としているため、発見してしまったのだ。巧妙に何か隠されている痕跡を。
女子の秘密ほど暴きたくなるのが峰田という男。

「おっと、手が滑ったぜ〜」

峰田がなんともわざとらしく、隠し場所を開けてしまった。
あ、と凛が手を伸ばしたのも虚しく中からふわっとたくさんのものが出てきた。

「かわいい〜!!」
「これ触り心地最高で有名なやつだよね!?」
「ふわふわ〜」
「こっちには、アクセサリー入ってる!えーなんで出さないの!?」

中からは、たくさんのぬいぐるみや、たくさんのアクセサリーが入っていた。
それらは、部屋に飾っても決して大人女子風の部屋を崩すことはなさそうなので女子たちは不思議そうな顔をした。
見つかってしまったものは仕方がないと、凛は観念して口を開いた。

「だって…ほら、似合わないだろ。本当はこういうの好きなんだが、私のキャラではないだろ。ヘアアクセサリーとはまたレベルが違うというか…」

「そうかな?凛に普通に似合ってると思うけど」
「うんうん。普段凛々しいから、逆にギャップ萌え!って感じだよ〜かわいい!」
「好きなものを隠す必要はないぜ!」

俯いてた凛はクラスの皆から、発せられる言葉に凛はもう隠さなくてもいいんだと思った。

「ありがとう」

彼女はぎゅっとぬいぐるみを抱きしめて、照れながらもお礼を言った。
そして、さっそく持ってたぬいぐるみを部屋のベッドの上に置きに行った。

「轟くん。どうしたの?」

皆が凛に温かな眼差しを向ける中、緑谷は隣で難しい顔をしている轟を見た。

「…いや。前から凛がこの事で悩んでてやっと堂々としていけるようになって嬉しいんだが、俺だけが知っていた凛の秘密だったからなんだか寂しい気がしてな」

「ねーねーずっと聞きたいと思ってたんだけどさ」
「奇遇だな。俺もだ」
「凛と轟って付き合ってんの!?」

芦戸と上鳴に興味津々といったキラキラした目を向けられて凛は顔を赤くした。
特に隠そうなどと決めてもいなかったので、自分の一存では決められず凛が言いあぐねていると

「ああ。付き合ってる」

轟がいつも通りの澄ました顔で、あっさりと言いのけた。

「やっぱり!朝から手ェ繋いでたよな!」
「らぶらぶだ〜」

2人の交際宣言に、わっと盛り上がるA組。

「いつから付き合ってるん?」
「1週間前ぐらいだな」

麗日の問いにもあっさり答える轟。

「やっぱりヘアアクセサリーの色って自分の色で選んだのか?」
「その時は意識してなかったが、今思えば無意識にそういう意味で選んでたのかもな」

瀬呂の問いにもあっさり答える轟。

「どこまでいったんだよ!!キスか!?まさかそれ以上…!?」
「それ以上がなんなのかわかんねえが、キスは…ぶっ」
「そこまで素直に答えなくていい!」

峰田の下世話な問いにまであっさり答えようとする轟に、さすがに質問が質問なだけに凛は慌てて轟の口を手で塞いだ。

でも、そんな慌てた彼女の反応がキスはもう済ませていることを物語っていた。

「ほら、皆も早く次の部屋へ行こう!」

凛が無理やり話を切り上げようとするのに、皆は本当はもっと聞きたかったが、寮生活は今日から始まったばかりだ。
明日からいつでも時間はあるかと、彼女に同調し、次の部屋へと向かった。

ヒーロー科ということもあり、恋愛ごとに縁のないA組にとって、今後も話題の注目物件になってしまうのを、今後凛は思い知ることになる。

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