6
耳郎ルーム
「思ってた以上にガッキガッキしてんな!」
彼女の部屋には、ギター、ベース、キーボード、ドラムなどバンドを組めてしまうほどの楽器が揃っていた。
「耳郎ちゃんはロッキンガールはんだねえ!」
「これ全部弾けるの!?」
「まぁ一通りは…」
「すごいな。響歌」
「女っ気のねえ部屋だ」
「ノン淑女☆」
女子たちがテンション上がる中、上鳴と青山がここぞとばかりに反撃し、耳郎のイヤフォンジャックで制裁を受けていた。
アホだなと凛は、哀れんだ目で彼らを見つめていた。
葉隠ルーム
「どーだ!?」
大きなぬいぐるみに、さくらんぼのカーテンなど葉隠に合った実に可愛らしい部屋だった。
「お…オオ。フツーに女子っぽい!ドキドキすんな」
「プルスウルトラ」
「正面突破かよ!峰田くん!」
峰田が堂々と葉隠のタンスを開けようとするのに当然葉隠は怒った。
「峰田…」
地を這うような低い声に峰田はビクッと肩を揺らした。
「そういえばさっき、私の部屋でもやらかしてたよな」
「いや〜手が滑って…」
「そんなに滑る手ならテープで留めておかないとな。瀬呂」
「はいよ」
凛の合図に瀬呂がすぐやってきて、峰田はあっという間に瀬呂のテープに簀巻きにされたのだった。
芦戸ルーム
「じゃーん!カワイーでしょーが!」
柄物やビビッドカラーで埋め尽くされた部屋は決して煩いとなることがなく、相乗効果によってかわいく統一されていた。
麗日ルーム
「味気のない部屋ではございます…」
扇風機にお煎餅、蚊取り線香など生活感のある部屋は、ほんわかした麗日をよく表していた。
「次は、蛙吸さん…」
「ってそういや、梅雨ちゃんいねーな」
そう。5階の1人・蛙吹はこの場にはいなかったのだ。
「あ、梅雨ちゃんは気分が優れんみたい!」
「優れんのは、仕方ないな。優れた時にまた見せてもらおーぜ」
「梅雨…心配だな…」
皆は、体調が悪い中尋ねるのは迷惑がかかるということで、最後の八百万の部屋へと向かった。
八百万ルーム
「それが…私見当違いをしてしまいまして…皆さんの相違溢れるお部屋と違って、少々手狭になってしまいましたの」
なんと、部屋の3分の2をベッドが占めていたのだ。
「でけぇー!!狭!!どうした八百万!」
「私の使っていた家具なのですが…まさかお部屋の広さがこれだけだとは思っておらず…」
その一言で分かっていたことだが、生活水準の違いを見せつけられたA組だった。
―――
談話スペース
「えー皆さん。投票お済みでしょうか!?自分への投票はなしですよ!?それでは、爆豪と梅雨ちゃんを除いた…第一回部屋王・暫定1位の発表です!得票数6票!圧倒的独走!単独首位を叩き出したその部屋はーーー砂藤力道!!」
「はああ!!?」
芦戸の発表に、まさか自分が呼ばれるとは思っておらず砂藤本人が驚愕の声をあげた。
「ちなみに全て女子票!理由は『ケーキ美味しかった』だそうです」
「部屋は!!」
女子たちは凛含めて、誰もが味を思い出してよだれを垂らしていた。
もはや、部屋王とは何だったのかと思えるほど、インテリアは関係なかった。
峰田と上鳴が納得いかないと砂藤に八つ当たりする中、轟がずっと思っていたことを口に出した。
「終わったか?寝ていいか?」
「うむ!ケーキを食べたので歯磨きは忘れずにな!」
「終わるまで待ってたんだ」
「ああ。ずっと眠そうなのに、こういうところ律儀だよな」
緑谷の言葉に同意しながら、凛は小さく笑った。
その後、戻ろうとした轟含め緑谷、飯田、切島、八百万が麗日に呼び出されたので、おやすみの挨拶をして、凛は自室に戻った。
今日皆で騒いだことに、凛はやっと日常に戻ってきた感じがした。
明日から再び始まるヒーローを目指して切磋琢磨する日々に、気合いを入れ直し凛は眠りについた。
[ 69/79 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]