「ん…」

「凛ちゃん!目が覚めたかい!?」

「父さん…」

凛は、現在病院のベッドで酸素マスクをつけた状態だった。
周りにはたくさんの機械が密集しており、個室の集中治療室であることがうかがえた。
そんな彼女のすぐ近くにオールマイトが座っていた。どうやらずっと付き添ってくれていたらしい。
彼はまだ見えるところは包帯だらけで、腕には右腕はギプスで吊るされていた。

そんな彼の姿を見て、凛はボロボロと自然と涙が溢れてきたのだった。

「ごっ…ごめんなさい…ごめんなさい…」

「なんで凛ちゃんが謝るんだ??」

オールマイトは滅多に見ない彼女の涙する姿に、わたわたと慌ててしまった。

「私がっ…捕まってしまったから…あんなことが起こった。私が弱いから…ヒーローとしてのオールマイトを終わらせてしまった…!」

彼女の言葉が、姿がオールマイとか突き刺さった。
そんな思いを抱えてると思わなかったからだ。
オールマイトは泣きじゃくる彼女を安心させるように、ぎゅっと優しく包み込んだ。

「これは凛ちゃんのせいじゃない。君も知るように、どの道限界は近かった。遅かれ早かれこうなっていた。それよりも、私は凛ちゃんが無事だったこと。最後まで信じてくれたことが私に力をくれた。ありがとう」

「うぅ…私こそ…ありがとう…ひくっ…お疲れ様」

オールマイトの言葉に凛は、さらに涙が溢れてきた。
そんな彼にこれ以上謝るのは失礼だと思い、凛はヒーローがもらって1番嬉しい言葉を贈った。
そして、最後の仕事を終えたNo.1ヒーローの父へと。気持ちを伝えるように抱きしめ返した。


―――


入院中、凛の病室は一部の者を除いて面会謝絶だった。
凛が目を覚ましたのは事件から2日後で、酸素マスクが取れ動けるようになる頃には4日も経っていた。
その頃には、オールマイトの引退、ベストジーニストの怪我によ活動休止、ラグドールの拉致後の個性不調など、世間は急速に変わっていった。

そして、それは雄英高校も同じだった。

「相澤先生!?」

相澤が入院中凛の見舞いに来た。
1年A組の担任として彼は面会を許されていたのだ。
凛は寝ている間に担任が来るとは思わず、目を見開いた。

「もう体は大丈夫なのか?」

「はい。もうすっかり。なのに、父が過保護でまだ病室を出ることを許してくれないんです」

「まったく…あの人は…」

相澤はオールマイトが過保護にしている姿が容易に想像でき、呆れてため息をついた。

「俺の方からクラス全員にお前と爆豪と無事は伝えているが、おまえちゃんと連絡してないだろ。学校に何度も連絡かかってきたよ」

あ、と思わず凛は口元に手を当てた。
部屋から出れていないため、携帯を見ていなことに凛はやっと気がついたのだ。

「動けるなら連絡してやれ。皆心配している」

「はい」

ああ、心配をかけてしまったと凛は申し訳ない思いでいっぱいになりつつ、反省しながら返事をした。
すぐに凛は、先ほどの相澤の言葉に気になる言葉があることを思い出した。

「そう言えば家庭訪問って…?」

「そうだ。今日はその件を兼ねてここに来た」

そう言って、相澤が凛の前に『全寮制導入検討のお知らせ』と書かれた紙を取り出した。

「全寮制…」

「ああ。生徒をより身近で守るために導入することになった」

凛に迷いなどなかった。
確かに父と一緒に生活できなくなるのが寂しくないと言ったら嘘にはなるが、同じ敷地内では過ごすことになるし、一緒に切磋琢磨し合う仲間たち毎日会えるそんな日々に心を躍らせた。

「父からも反対はないと思いますし、私としても何も言うことはありません。ぜひ、お願いします」

「まずは、登校日までに怪我を治せ。きつい訓練が待ってるからな」

相澤はそんな凛にふっと笑って、実に合理的で、しかし凛を気にかけるような相澤らしい言葉を残したのだった。


―――


翌日
全寮制の説明を踏まえて、相澤とオールマイトはA組の家庭訪問していた。

「父が同席できず、すみません」

申し訳なさそうに謝る轟の姉・冬美に相澤は小さく首を振った。

「いえ、神野の事件以降、お父さんも立場的に忙しいでしょう。お気になさらず」

「全寮制に関しては父から賛成の旨を伝えるように言われています。これからも、焦凍のことよろしくお願いします」

頭を下げる冬美の横で轟も小さく頭を下げた。
轟自身も全寮制に対しては、言うことはなかった。
訓練を遅くまでできる上に、父に会う時間も少なくなる。母に会う時間が減るのは残念ではあるが。

轟はそれよりもずっと気になっていたことがあった。

「相澤先生。凛は…?」

「連絡した通り、命の別状はないし無事に回復に向かっている。ただ、事件が事件だけに面会はできない。お前達に会えるのは、学校が再開した時だ」

「そうですか…」

相澤の言葉にやはり連絡以上の情報は得られないかと、轟は俯いた。
最後に見たのは彼女が血だらけのまま運ばれていく姿だった。
言葉では聞いていても、やはり心配で落ち着かなかった。

『焦凍…』

相澤はそんな轟を見て、先日病院で凛が寝言で呟いた言葉を思い出していた。
彼は、はぁとため息をつき口を開いた。

「静岡病院だ」

「え?」

思わぬ相澤の言葉に轟は弾かれたように頭を上げた。

「そこに八木は入院してる。本来なら一部関係者しか知らないことだが、轟は八木と特に仲がいいからな。八木もずっと入院生活じゃ気が滅入るだろ。会いに行ってやれ。ただし、八木に関することならお前なら信頼してるから教えたんだ。今度は裏切るなよ」

警察に爆豪を直接送り届けたのだ。
バレていても不思議ではない。
相澤の言葉に、轟はきゅっと口を結んで強い目で答えた。

「はい!」

[ 62/79 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -