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ショッピングモールは一時閉鎖され、警察と区内のヒーローが捜索したが、死柄木を見つけることはできなかった。

凛は、病院に行った後警察署に連れられ事情聴取を受けた。
雄英襲撃、保須事件で警察は既に敵連合に対し、特別捜査本部を設置し、捜査に当たっているらしい。
その捜査には、塚内も加わっており、凛は主犯・死柄木弔の人相や会話内容などを伝えた。

「被害ゼロで済んだのは、凛ちゃんと緑谷くんのおかげだよ。人質を取られた中、よく頑張ったね」

「緑谷は大丈夫ですか?」

塚内に褒められても、凛は素直に喜べなかった。ずっと気になっていることがあったからだ。

「彼は傷なども一切ないよ。さっき事情聴取も終わって、今は迎えを待ってるところだ」

「緑谷には、何を話しに来たんですか?」

ひとまず無事ということがわかり、凛はほっと胸をなでおろした。
彼の無事がわかると、次に気になってくるのはなぜあんな清々しい顔を死柄木はしていたのかということ。
緑谷と会話をしてからということは知っていたため、凛は尋ねてみた。

「会話の内容は相変わらずだったよ。打倒オールマイトって感じで」

相変わらずか…凛にはどうしてもそう思えず、言いようのない不安が凛を包んだ。
初めて会った時のような、体が大きいだけの子供のような感じがどんどん抜けているような。彼も成長しているような、何かを見つけてしまったような気がしてならなかった。

「今回怪我をしたのもそうだが、凛ちゃんは今後1人でいない方がいい。会話の内容を聞く限り、明らかに狙われている。これはオールマイトにも学校にも話すからね」

「はい…」

塚内の言葉は正論すぎて、凛は素直に従った。これ以上誰かに心配をかけるのは本意ではなかったからだ。

「よし。じゃあ僕は緑谷くんを送ってくるから、ここで少し待っててね。もうすぐでオールマイトも来ると思うから」

そう言って、凛は休憩室に1人になった。

「わっ!」

凛が携帯を開くと、ものすごい着信履歴が入っていた。
自分の無事は耳郎経由でグループメッセージに送ってもらったから電話とかないはずなんだけどと思い、確認してみると全部轟からだった。

ブーブー

ちょうどタイミング良く彼からかかって来て、凛はすぐにでた。

「もしもし。轟か?」

「八木か!?無事なのか!?」

轟の焦った声に安心させるように凛はできるだけ詳しく伝えることにした。

「大丈夫だ。手の怪我も明日リカバリーガールに治癒してもらえば、跡も残らないらしい」

「よかった…」

轟の振り絞るような声に、凛はあれ?と疑問に思った。

「耳郎にもグループメッセージでそう伝えてもらったはずなんだが…」

「直接声を聞いて確かめたかったんだ」

轟の言葉に彼が本気で心配していたのはわかっているが、不謹慎ながらもじんわりと嬉しさが滲み出て来てしまい、凛は頬を緩めた。

「そうか。ありがとう」

いくつか言葉を交わした後、また明日学校でと言い凛たちは電話を切った。
その後やって来たものすごい心配顔をしたオールマイトに連れられてようやく帰宅を果たしたのだった。

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