職業体験終了から翌日

皆、それぞれの職業体験で有意義な時間を過ごしたようだった。
敵退治をやった者もいれば、密航者を捕らえた者、何かに目覚めた者などさまざまだ。
爆豪は1人8:2にさせられたが。

「ま、1番の変化というか大変だったのは…お前ら4人だな!」

上鳴がそう言い、凛、轟、緑谷、飯田がいる方を振り向いた。
やはり、あれほど騒がれてる事件。皆もそれにクラスメイトが関わって心配だったのか、4人の周りに集まって来た。

「エンデヴァーが救けてくれたんだってな!さすがNo.2だぜ!」

「…そうだな。救けられた」
「ああ」

切島の言葉に複雑な思いを抱きながらも轟は頷いた。
凛も彼の心情を察しつつ、何も言わずに同意した。

尾白は、ヒーロー殺しが敵連合と繋がっていたことに驚き、もしUSJに来てたらとゾッとすると言った。

「でもさあ。確かに怖えけどさ。尾白動画見た?あれ見ると一本気っつーかさ、執念っつーか。かっこよくね?とか思っちゃわね?」

「上鳴くん…!」

緑谷は慌てて上鳴を止めるが、当然もう飯田には聞こえていた。

「え?あっ…飯…ワリ!」

「いや…いいさ。確かに執念の男ではあった…クールだと思う人がいるのも。ただ奴は執念の果てに粛清という手段を選んだ。どんな考えを持とうとも、そこだけは間違いなんだ。俺のような者を、もうこれ以上出さぬ為にも!改めてヒーローへの道を歩む!」

いつも通り、いや成長した飯田に緑谷はかっこいいよ!と声をかけ、凛は飯田に微笑みながら上鳴にお仕置きと言う名の軽い手刀を当てた。
上鳴も反省してるのか、「すいませんでした」とすぐに謝った。

「そういえばうち、ずっと気になってたんだけど、凛ちゃんヘアアクセサリーって珍しいね!」
「あ、ウチも思ってた」
「私も私も!」

やはり女子の方が気づくのだろう。
麗日の言葉に続いて、女子たちが反応した。

そう凛は、今日勇気を振り絞って職業体験の時に轟からもらったヘアアクセサリーをつけて来たのだ。
彼の似合うと言ってくれた言葉を信じて、勇気を出して見たが、やはり似合わないのだろうかと皆の反応に不安になった。

「変…だろうか…」

しかし、思わず俯く凛に、彼女の不安を吹き飛ばすような明るい声がたくさん届いて来たのだ。

「かわいいわよ、凛ちゃん」
「凛って確かにイケメン王子だけど、普通に美人だし!」
「凛さんは、所作など女性らしく美しいですからね。やはりそういった品のあるかわいらしいヘアアクセサリーは映えますわね」

彼女たちの言葉に驚き、凛は勢いよく顔を上げた。
彼女たちの言葉の意味を時間をかけようやく噛み砕けると、凛は嬉しくなり頬を緩めた。

「つけてきてくれたんだな。な、言った通りだったろ。お前によく似合うって」

轟が横に来て、凛に微笑んだ。
凛は頷いて、自分に勇気をくれた轟に気持ちでいっぱいになった。

「轟。ありがとう」

問題は2人以外だった。
なぜなら衝撃の言葉を聞いてしまったからである。
2人に聞こえないように周りがざわめいた。

「え!あれ轟があげたのか!?」
「てか何あの甘い雰囲気!?いつの間に!」
「きゅんきゅんするわ〜」
「イケメンがぁぁぁぁ!!リア充爆発しろ」

そして、何かに気づいた耳郎がぼそっと呟いた。

「あのヘアアクセサリー、赤と白ってどう意味か凛気づいてなさそうだね」

それに対して上鳴もすぐ同意した。

「それな。轟も無自覚そうだし」

「どう考えても、マーキングしてるようなもんだよね〜」

芦戸はクラスの皆が思っていたことを見事に代弁してみせた。

そんな皆の考えなど露知らず、凛はこのヘアアクセサリーがすっかりお気に入りになって毎日つけるようになるのだった。

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