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「ハイ、私が来た。ってな感じでやっていくわけどもね、ハイ。ヒーロー基礎学ね!久しぶりだ。少年少女!元気か!?」
ぬるっと久しぶりのヒーロー基礎学が始まった。
パターンが尽きたのかと皆が言いたい放題言う中で、オールマイトオタクの緑谷は、金時代のコスチュームに1人興奮していた。
今回の授業内容は『救助訓練レース』。
本来救助訓練は災害時の訓練になるUSJで行うことが多いが、今回はレース。
そのため、複雑に入り組んだ密集工業地帯の運動場γで訓練を行うことになったのだ。
ルールは、5、6人4組に分かれて一組ずつ行い、オールマイトが救難信号を出してから誰が1番に助けにたどり着けるかの競争である。
「もちろん。建物の被害は、最小限にな」
スススと指をさした先には爆豪がいて、名指しで注意してるようなものだった。
最初の組は、緑谷、尾白、飯田、芦戸、瀬呂だった。
他のメンバーはモニター越しで見てることになり、誰が1番になるか予想していた。
「俺、瀬呂が1位」
「あー…うーん。でも、尾白もあるぜ」
「オイラは芦戸!あいつ運動神経すげえぞ」
「デクが最下位」
「ケガのハンデはあっても、飯田くんな気がするなあ」
クラスでも機動力の良いメンバーが揃っただけに、皆意見が分かれていた。
「緑谷が1位かな」
轟の隣にいた凛がつぶやいた。
自分と真逆の意見を言ったことに地獄耳の爆豪が見逃すはずがなく、ギンッと思いっきり凛を睨みつけた。
そんなトップ予想が行われる中、レースがスタートした。
開始早々、個性のテープで建物の上に出た瀬呂に切島が予想通りと声をあげた。
「ホラ見ろ!こんなごちゃつたとこは上行くのが定石!」
「となると、対空性能の高い瀬呂が有利か」
「いや、瀬呂だけじゃないぞ」
障子が冷静に分析する中で、凛はニッと笑った。
彼女は知っていたからだ。職場体験で手に入れた緑谷の動きを。
「「おおお緑谷!?何だその動きィ!?」」
皆が、緑谷の予想もつかなかった動きに驚いた。職場体験前とはみちがえた動きだった。
隣で見たことあるはずの轟がああ、今気がついたという反応をしていたので、凛はふふっと小さく笑った。
結果は、緑谷が途中まだ慣れてないせいか落下してしまい、瀬呂が1位で終わった。
―――
「凛さんの個性は、やはり汎用性があり素晴らしいですわね」
「ね!飛べるとかいいな〜」
更衣室で先ほどの授業のことを八百万と葉隠から凛は言われた。
凛の組のレースは、天輪の鎧で飛んだ彼女に軍配が上がったのだ。
「だが、鎧1つ1つで性能が異なるからな。まだまだだ。もっと鎧を増やして持続時間を上げていかないと」
もちろん凛も1位だったからと言って、慢心するつもりもない。
プルスウルトラの精神でずっと先を見据えていた。
女子たちが、先ほどの授業で見えてきた自身の課題を話していると、どこからか凛たち以外の8人目の声が聞こえて来た。
「オイラのリトルミネタはもう立派な万歳行為なんだよォォ!八百万のヤオヨロッパイ!芦戸の腰つき!葉隠の浮かぶ下着!八木の白い柔肌!麗日のうららかボディに蛙吹の意外おっぱァアアア」
グサッ!!
「あああ!!」
峰田の目に耳郎のイヤホンジャックが刺さった。
緑谷はいつもの癖で、震えながらも分析した。
「耳郎さんのイヤホンジャック…正確さと不意打ちの凶悪コンボが強み!」
「ありがと。響歌ちゃん」
「なんて卑劣…!すぐに塞いでしまいましょう!」
うちだけ何も言われてなかったなと若干落ち込んでいる耳郎を凛は穴から1番近いため自身のワイシャツで隠した。
「オイ、峰田。後で女にしてやるからな。楽しみに待ってろ」
「すみませんでしたぁぁぁぁ!!」
いつになく低い声の凛にリトルミネタのピンチと思った峰田は凄まじい速度で謝罪した。
その頃、男子更衣室では凛の怒気に恐怖する者もいれば、全く違うことを考えている者もいた。
そのうちの1人、轟である。
彼の頭の中では、峰田が先ほど言っていた言葉がぐるぐると回って頭から離れなかった。
柔肌…確かに体育祭で抱きしめられた時も、職場体験で背負った時も八木は柔らかかった。もっと触れて…いや、何言ってんだ。俺は峰田か…でも…
の繰り返すこと数分
「わっ!轟くん!炎でてるよ!」
緑谷に言われて、轟はようやく自分の左側から無意識に炎が出てることに気がついた。
「お、悪りぃ」
「どうしたの?何か悩み事?」
緑谷が心配して、轟を見てくるがいくらなんでもこんな一歩間違えれば変態になってしまう事を相談できるはずもなく、轟は何でもないと言って更衣室を出た。
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