「む!?んなっ…何故おまえがここに!!」

「グラントリノ!!」

緑谷の声に、え!と凛は驚いて声のした方向に目を向けた。

「座ってろっつったろ!」

しかし向く必要もなく、グラントリノは緑谷の顔面に思いっきり蹴りを入れるぐらい近くにすぐ来た。

「まぁ…よぅわからんがとりあえず無事なら良かった」

「グラントリノ…ごめんなさい」

懐かしい顔に凛は、今すぐ話しかけたくなったがそれではオールマイトとの関係性がバレてしまうと思い口を閉ざした。

するとすぐに、エンデヴァーから応援要請されたプロヒーローが次々と到着した。
エンデヴァーはまだ脳無の対応に追われてるらしく、相性の悪い個性のプロがこっちに派遣されたのだ。
轟が拘束してるのがヒーロー殺しだとわかるとすぐに警察に連絡を取ってくれた。

「3人とも…僕のせいで傷を負わせた。本当に済まなかった…何も…見えなく…なってしまっていた…!」

頭を下げる飯田に緑谷は首を小さく振った。

「…僕もごめんね。君があそこまで思いつめてたのに。全然見えてなかったんだ。友達なのに…」

飯田の頭には職業体験の前に言われた緑谷が気にかけてくれたことが頭によぎってますます胸が苦しくなった。

「しっかりしてくれよ。委員長だろ」

「そうだな。飯田なら物事を冷静に判断し、まとめていけるヒーローになれると思ったから票を入れたんだ。まぁでも、もう大丈夫そうだな」

凛の言葉に飯田は、目を見開いた。
ずっと誰が入れてくれたのか知らなかったからだ。

「君が票を…うん…」

涙をぬぐいながらもしっかりと頷いた飯田ならもう大丈夫だろう。
凛は、安心して微笑んだ。

「伏せろ!!」

突然グラントリノが叫び何事かと思うと、脳無が突っ込んでくるところだった。血が流れていることから、手負いな様子がうかがえる。
脳無は近づいて来たと思ったら緑谷を脚の鉤爪で掴み、あっという間に飛翔してしまった。

「緑谷!」
「わあああ!!」

このままでは追いつけなくなると思った凛は急いで轟に声をかけた。

「轟!飛ぶから降ろし…」

しかし、凛が言い終わるより先に何かが自分を横切った。
それと同時に脳無の動きが止まり、落下して来た。
あの個性は…と思い凛は目を見開いた。

「偽物が蔓延るこの社会も。徒らに力を振りまく犯罪者も。粛清対象だ…ハァ…ハァ…全ては正き社会のために」

ヒーロー殺しが脳無をしとめ、緑谷を救出したのだった。

一瞬のことで理解ができなかった。
なぜヒーロー殺しが緑谷を助けたのかと。
プロさえも誰も動かなかった。

「なぜ一塊でつっ立っている!?そっちに1人逃げたはずだが!?」

その困惑した空気を壊すように現れたのはエンデヴァーだった。

「あの男はまさかの…ヒーロー殺しーーー!!」
「待て!轟!」

待ちに待った標的が目の前に現れ、エンデヴァーは高揚して臨戦態勢をとったが、それを何かに気がついたグラントリノが制止の声をかけた。

「贋者…正さねばーーー…誰かが…血に染まらなねば…!ヒーローを取り戻さねば!来い。来てみろ。贋者ども。俺を殺していいのは、本物のヒーロー オールマイトだけだ!!」

その場の誰もが気圧された。
ヒーロー殺しの凄まじい気迫に。

しかし、だからこそ気づくのが遅れた。
彼がもう動いていないことに。

「気を失ってる…」

「ハッ…」

轟を含め、ほとんどの者が解放されたように息をついた。
凛も轟の背で彼が膝をついたことにも気づかなかった。
ヒーロー殺しの気迫に、あの男の存在を思い浮かべていのだ。
初めてではない。あの男よりは弱いが、よく似た気迫だった。

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