何だ、あの人だかりは…

翌日登校してみると、校門の前にかなりの人が集まっていた。
カメラ、マイク…どうやらマスコミのようだ。
あの人だかりを通るのは相当至難の技だぞと凛がどうにかできないか考えていると

「どうしたんだ、八木」

声がかけられ、振り返ると轟が立っていた。

「轟か。おはよう。いや、マスコミが門の前にいてだな。どうにか穏便に通れないか考えていたんだ」

轟はマスコミを見る凛の横顔をじっと見つめた。

「…そんなの普通に通ればいいだろ。行くぞ」

「えっ」

急に左手が引っ張られ、凛は驚き思わず声をあげた。
凛の理解が追いつかないうちに、とうとうマスコミの中に入ってしまった。

「オールマイトの授業はどんな感じです?…あれ…もしてかして君エンデヴァーの息子さん?」

マスコミのその言葉を聞いた途端、轟の目が鋭くなった。
その目は、初めて見た時から頭から離れないあの目だった。

「申し訳ありませんが、授業に遅れてしまうので、失礼します」

凛は、ただ彼のそんな目は見たくないと強く思い、差し障りのない言葉を並べ、咄嗟に繋がれていた彼の手を引っ張って門の中に入っていった。

雄英高校には門のセキュリティがしっかりしてるからこれ以上は追ってこないだろうと分かっていても、マスコミが見えなくなるまで歩みは止めなかった。

教室に行くまで、お互いに何も言わなかった。聞かなかった。

ただ凛は、大丈夫と言うように彼の手を握り続け、轟は凛の手の温もりに心が落ち着き身を委ねていた。

教室前で自然と手は離れたが、消えていく温もりに、どことなくお互いに寂しさを感じていた。

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