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隊士たちの介抱がひと段落した凛は、近藤たちの元へ向かおうと廊下を歩いていた。
すると、万事屋一行がなぜか中庭の木に逆さまでぶら下がっていた。
「え、なんですか?あれ。」
「拝み屋を呼んだんだがな、アイツらが変装してたってわけなんだよ。」
凛の疑問に土方は答えた。凛はため息を吐いて、銀時たちの方に近寄った。
「あ!凛ちゃーん!!!助けてぇぇぇぇぇ!!」
「総悟くん。新八くんと神楽ちゃんは可哀想だから降ろしてあげて」
銀時は凛に助けを求めたが、彼女は何も見えていないという風に隣の沖田に顔を向けた。
「凛ちゃんんんんん?!神様!仏様!凛様ぁぁぉぁぁあ!!」
その後、万事屋一行は木から降ろしてもらったが、逆さまにぶら下がっていたせいか頭に血が上り、一歩も動けない状態だった。
「神楽ちゃん 大丈夫?」
凛は神楽ちゃんが夜兎族なので、このまま日差しに当たっていたら、銀時たちより回復が遅いと思い、少しでも日陰になるように太陽に背を向け壁になるように神楽に膝枕をした。
神楽は凛の優しい手つきに自身の母を思い出しながら、頬を緩めた。
そんな2人の姿に妹LOVEの銀時と姉のように慕っている沖田は黙っているはずもなく。
「おい!神楽どきやがれ!凛の膝枕は俺のもんだ!」
「いや、俺のもんですぜィ。旦那」
「天パにドS、お前らはゴリラの膝の上がお似合いアル。」
羨ましがる2人に神楽は優越感を覚えた。
「本来ならてめーらみんな叩き斬ってやるとこだが、生憎てめーらみてーのを関わってるほど暇じゃねーんだ。消えろや」
「あー幽霊怖くて、もう何も手につかねーってか」
「かわいそうアルな。トイレ一緒について行ってあげようか?」
土方の言葉に銀時と神楽は口元に手をあてながら、バカにした。
「武士を愚弄するかぁぁぁぁあ!トイレの前までお願いします!チャイナさん!」
「大の大人がそれでほんとにいいんですか?!確実にど汚い色の黒歴史になりますよ!」
勢いよくお願いする近藤に凛は、気が遠くなる思いがした。
「てめーら。頼むからこのことは他言しねーでくれ。頭さげっから。」
「…なんか相当大変みたいですね。大丈夫なんですか?」
近藤の姿に溜息を吐きながら、万事屋に頼む土方の普段なら絶対ありえない姿に新八は尋常じゃない状況と悟った。
「情けねーよ。まさか幽霊騒ぎ如きで隊がここまで乱れちまうたァ。相手に実態があるなら刀でなんとでもするが。無しときちゃあ、こっちもどうでればいいのか皆目見当もつかねェ」
「え?何?おたく幽霊なんて信じてるの。痛い痛い痛い痛い痛いよ〜お母さーん!ここに頭怪我した人がいるよ〜!」
「お前いつか殺してやるからな」
土方の言葉に対しバカにする銀時に、土方は青筋を浮かべた。
「まさか土方さんも見たんですかィ?赤い着物の女」
「わからねぇ…だが妙なモンの気配は感じた。ありゃ多分人間じゃねぇ。」
沖田の問いに土方は昨日感じた気配を思い出した。
「「痛い痛い痛い痛い痛いよ〜お父さーん!絆創膏持ってきてェェ!できるだけ大きな人1人包み込めるくらいの!」」
「おめーら打ち合わせでもしたのか!!」
銀時と沖田は息ぴったりに土方をバカにした。2人とも同じドSとして通ずるところがあるのだろう。
「赤い着物の女か…確かそんな会談ありましたね」
新八は赤い着物の女に覚えがあった。彼の寺子屋時代に流行った会談で、放課後誰もいない校舎で遊んでいると赤い着物を着た女がいて、何をしているのか聞くと…。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!」
そこまで話すと、近藤の悲鳴が響き渡った。
何かが起きたと瞬時に悟り、全員で厠まで走っていった。凛は女性だからということで厠の中には入らず外から様子を伺った。
「神楽!どーした?!」
「チャックに皮が挟まったアル」
銀時が神楽に何があったか尋ねると、神楽は可愛らしい見た目から想像もつかない言葉を発した。
「どけ!!」
土方がそう言い、ドアを蹴破った。
そこには、近藤が便器に頭から突っ込んでいる姿があった。
「なんでそーなるの?」
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