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赤い着物の女が来ると、呻き苦しむ近藤を全員で囲んでいた。
「これァあれだ。昔泣かした女の幻覚でも見てんだろ」
「近藤さんは女に泣かされても、泣かしたことはねー」
「じゃあおめーが泣かした女が嫌がらせしに来てんだろ」
「そんなタチの悪い女を相手にした覚えはねー」
近藤の介抱をする凛の横で、銀時と土方 は原因に繋がることのなさそうな話をしていた。
「この屋敷に得体の知れねーモンがいるのは確かだ。」
土方の言葉に新八はやはり噂通りなのかと思った。
「やっぱり幽霊ですか?」
「あぁ?俺は幽霊なんて非科学的なモンは信じねー。ムー大陸はあると信じてるがな」
鼻をほじりった銀時は、そのままそ神楽の頭に擦り付けるように拭った。
凛はそんな兄の姿に目が半眼になった。
「はぁ。アホらし。付き合いきれねーや。てめーら帰るぞ。」
「銀さん。何ですか?これ」
銀時はため息をつき、立ち上がって帰ろうとしたが、彼の手は左右ともがっつり新八と神楽の手を握っていたのだ。
「なんだこらァ。てめーらが怖いと思って気ィ使ってやってんだろーが」
「銀ちゃんの手汗ばんでて気持ち悪いアル」
あ、そう言えば銀ちゃんって…と凛が思っていると、何かを察した沖田は。
「あ、赤い着物の女」
ガタガタッ!
銀時は襖を突き破って頭から隠れた。
「何やってんすか?銀さん」
「いやーあの、ムー大陸の入り口が」
そんな銀時の姿に新八と神楽は目の温度が下がっていくのを感じた。
「土方さん。こいつァ…あれ?」
沖田が銀時の弱点見つけたりと、土方の方を向いたが、さっきまでいた場所に彼の姿はなかった。
辺りを見渡すと、土方が凛の腕に思いっきりしがみついているところだった。
「土方さん。何をやってるんですかィ?」
「いやーあの、マヨネーズ王国の入り口が」
「はいはい。杖ふって、姿現しの呪文とか使えませんよ」
そう言い、凛は土方の頭を撫でた。
そんな大人たちの情けない姿に沖田、新八、神楽は呆れて彼らに背を向け去ろうとした。
「待て待て!違う!こいつはそうかもしれんが、俺ァ違うぞ!」
「びびってんのは、おめーだろ。俺はおめーただ胎内回帰願望があるだけだ。」
「わかった。わかった。ムー大陸でもマヨネーズ王国でもどこにでも行けヨ。クソが。」
「銀ちゃん、土方さん…無理しなくていいんですよ。」
誤魔化そうとする大人たちの醜い争いにますます目の温度が下がる神楽たち。土方なんてまだ凛の腕を離しておらず、今度は銀時までもが反対の腕を掴んでいた。
「「なんだ!その蔑んだ目は!」」
「「「あ…」」」
沖田たちは銀時と土方の背後を見て唖然とした。
「なんだァ?おい」
「驚かそうって言ったって無駄だぜ?同じ手をくうかってんだ」
その様子に土方と銀時はイタズラだと思い、振り返ることはなかった。
次の瞬間、沖田たちは部屋から走り去っていった。
「ったく、手の込んだ嫌がらせを」
「これだからガキはァ」
「「ひっかかるかってんだよ」」
未だにイタズラだと思い込んでる銀時、土方とともに、沖田たちの様子に不思議に思った凛は振り返った。
そこには、すごい形相の赤い着物の女がいた。
「「こ、こんばんは…」」
「あら。」
次の瞬間、土方と銀時はものすごい勢いで走り去っていった。そして赤い着物の女もそれを追いかけるようにしていってしまった。
一方凛は、先ほどまで掴まれていた腕をあっさりと離され、部屋に置いてかれていた。
さっきのあれって…羽?あの赤い着物の女…どこかで見たことある気がする…まさか!
凛はあることに気がつき、隊士たちが眠っている道場を訪れた。隊士一人一人を確認し、全員にある特徴を見つけた。
「…やっぱり思った通り。刺された後がある。」
「凛さん!」
走りながら入ってきた新八の目的は彼女と同じだった。
「新八くん!新八くんも気づいて?」
「はい。蚊取り線香で逃げるように変えたのでもしかしたらって」
ドゴォォォン!!
2人が自分たちの仮説に確信を持った瞬間、何かがぶつかるような大きい音が鳴り響いた。
―――
翌日、幽霊騒動は無事に集結した。
赤い着物の女の正体は蚊の天人で、子供の出産のためにエネルギーが必要で真選組が学校の餌場だったわけだ。
「まさか鬼副長と恐れられる男がお化けを恐れてるとは、お天道様でも思うめぇ」
「あれァおめービビってたんじゃねー。びっくりしてただけだ。大きな間違いだぞーこれはァ。おまえは明らかにビビってたけどな」
「あれはおまえ企画にのってやっただけだ。むしろ俺はこーゆーの好きだぜ。これから毎回やろうか。」
縁側で、自分は幽霊は苦手じゃないと、まだ素直に認めない銀時と土方の間で凛は呆れていた。
「銀ちゃーん。そろそろ帰」
なんの前触れもなく、3人の真後ろの障子が開いた。
「何やってるアルか?2人とも」
2人は左右から凛の腕にしっかりとしがみついていていた。
「いや、コンタクトを落としちゃって」
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