▼ 033

ウォーターセブン裏町商店街。そこでロビンと私とチョッパーが横に並んで歩いていた。

「水が澄んでて街並もきれいね。」
「歩ける場所もあるんだな。」
「ロビン、さっきは何も言わないでくれてありがとう。」
「ふふっ、何かあるんでしょう?」
「………うん。」

聞かないでくれているのは、たぶんロビンにも隠し事があるから。ロビンも聞かれたくない事の一つや二つあるはずだから、私も聞かない。

「わっ!アレ何だロビン!アミ!顔だらけ!」
「…仮面屋さんね。」

目の前にあるのは沢山の仮面が売られた色鮮やかなお店。ナニアレ、すごく欲しい。ロビンとチョッパーを見るとどっちも私を見て笑ってた。

「欲しいんでしょう?」
「寄っていいぞ!アミ!」
「ありがとう、後で本屋さんも行くからね!チョッパー!」
「おう!ありがとう!」

仮面屋さんに寄って、沢山の仮面を見つめる。お洒落なのがあり過ぎて、目移りしてしまう。

「さっきからこれを顔につけた人達が町を歩いてるわね。」
「あーっ!これをつけてたのか!変な顔だと思った!」

私が購入した仮面を見つめて二人が話している。白い顔に赤や青でペイントされたピエロのような仮面を付けて、私は気分良く歩いていた。チョッパーには苦笑いされたけど。

「海列車で渡る島“サン・ファルド”で今、連日仮想カーニバルをやってるらしいわ。」
「え!?何でそんな事知ってんだ?」
「道行く人が話してるから。」
「そんなのよく聞こえるなー!」
「クセなの、子供の頃から人の顔色を見て、聞き耳を立てて生きてきたから。」
「すげーなーロビンは!」
「ロビン………」

子供の頃からそんなことしてる人なんてきっとロビンくらいだ。どんな過酷な子供時代だったんだろう、想像したくてもそれを超える人生をロビンは歩んできたはず。何か力になれればいいのに、私は無力だ。

「船医さん、あそこ!本屋さんがあるわよ!」
「ホントか〜!?寄っていいか!?」
「わっ、待ってよチョッパー!」
「………勿論、入りましょ。」

本屋さんが見えた瞬間に走り出したチョッパーの後を追う。ロビンは少し呆れていたけど。

「ロビーン!先に入るぞ?」
「はやくきてねー!」

人型になったチョッパーと一緒に本屋さんに入る。人型ならいいと思ったんだろうけど、毛むくじゃらだよ。

「まー、いい仮面だねー。何の仮面だい?」
「う…うん…人間トナカイ。」
「私はピエロ!」
「んーっ!あっはっは楽しきゃいいね!」

店員のおばあさんはチョッパーのことも仮面だと思ったみたい。カーニバルの時期じゃなかったらきっと怪しまれていた。チョッパーと同時に小さく息を吐き、そういえばとロビンのことを思い出す。

「?、あれ……ロビン?」
「おーい!ロビン〜!?」

本屋さんから出て、辺りを見回してもいたはずのロビンがいない。しまった、何のために私はロビンの側にいたんだ。

チョッパーと顔を見合わせて、少し探してみる。でもいなくて、夢のことを思い出す。あの言葉を聞いていないってことは、また私はロビンと会えるのは確かだ。でもその言葉を最後に会えなくなるかもしれないのも確かだ。

「………まいったな。」
「ごめんよーサンジ、おれ。本に夢中で………」

探している途中で出会ったサンジのヤガラブルというものに乗る。水中を泳ぐ馬のような魚の上に人が座る椅子を取り付けたものをブルというらしい。二人乗りだったから、チョッパーを私の膝に乗せて、水上を進む。

「私が………目を離したから。」
「チョッパーが謝る事っちゃねェよ……アミちゃんも自分を責めないで。おれァてっきりロビンちゃんと一緒にいたのは『人型』になったチョッパーかと……じゃあ、あの仮面の奴ァ一体誰だったんだ。」

サンジは仮面をつけた見知らぬ人とロビンが一緒に歩いている所を見たらしい。ロビンは誰かに誘拐されたということなのか。

「何も起きなきゃいいが……胸騒ぎがする。」
「え!診察しようか?」
「病気じゃねェよ!!」

膝の上のチョッパーはシュンッと項垂れてしまった。そんなことは気にせず、サンジは悔しそうな表情をする。

「青キジの言葉がよ、頭を過るんだ。」
「……?、何か言ってたか?」
「ロビンちゃんの過去をつつく様な事言ってたろ。そしておれ達にいつか後悔すると……とにかくメリー号に戻ろう。何でもなきゃ彼女も直に帰って来る。」

チョッパーをぎゅうっと抱きしめる。きっと帰ってくる、そう思いたいけどあの夢を見たからには、そう思えない。ロビンは何かを抱えて苦しんでる、たまに悲しい表情をするロビンを知っていたのに私は何もできなかった。

「アミ?」
「ん?」
「震えてるぞ?」
「アミちゃん!大丈夫か?」
「うん、大丈夫。ありがとう。」

心配してくれたチョッパーとサンジに笑いかければ、安心したのか笑い返してくれた。仲間を頼ってよ、ロビン。彼女は今、どんな表情をしているんだろうか。







「本当かよ!」
「そう言ってた、その船大工はな。」
「この船が…!」
「もう直せないの!?」
「金があってもか!?じゃあ、ど…どうなるんだ?」

ウソップに似た、造船所の人がメリー号を見に来たらしい。もうメリー号は直せないとゾロに告げてその人は去っていったとか。あまりにも衝撃的すぎて、開いた口が塞がらない。ついさっきも私たちを乗せていたのに、もうメリー号は走れないだなんて。

「さァな。最終的にはルフィ達がどう判断するかだ。造船所にいる3人で何らかの答えを出して来るだろう。」
「そんな事言われても…話が極端すぎるぜ。だってお前…みろ船はいつもと変わらねェし。東の海からこんなトコまで一緒に海を渡ってきたじゃねェか。」
「渡ってきたからこそだろ。人間なら波を越える度、強くもなるが船は違う……痛みをただ蓄積するだけだ。」

納得いかないのはサンジも同じみたいだ。それでもゾロはどこか落ち着いていて、ちゃんと理解してそして納得しているようだった。

「府に落ちねェ。ウソップの奴……コレ聞いたら何て言うか……」
「おれ、メリー号が好きだぞ!」
「私も好きだよ。みんな、好きなんだよ。」
「だが現状打つ手はねェそうだ。」
「メリー号もロビンちゃんも心配……落ち着かねェ午後だ。」

メリー号が波で揺れる。落ち着かないからか、サンジはタバコを何本も吸っている。私たちを気遣ってか離れているけど。ゾロは私を見て、驚いた顔をしていた。

「何だ、ソレ。」
「え?仮面だよ。」
「何でだよ!誰かと思うわ!」
「ゾロはどこで私と判断してるのよ。」

仮面を外して睨み付けるとゾロは目を閉じていた。寝る気だとわかったから仮面を投げてやると、見事にキャッチされて頭の上に乗せられた。

「んー、ムカつく。」
「聞こえてるぞ。」
「わざとだもん。」

すると強めに頭を叩かれて、抑えていると遠くの方からナミの声がした。船の上から地面を見下ろすとそこにはやっぱりナミがいた。あれ、ルフィとウソップはどうしたんだろう。

「あれ!?ナミが帰って来たぞ!」
「?、ん?一人みたいだな……ルフィとウソップはどうしたんだ?ナミさーん!!何かあったのかー!?」

ナミの顔色は悪く、息が荒くて急いでいたことがわかる。事情を聞いたサンジとゾロとチョッパーはメリー号を飛び出した。

「私も!」
「アミ!」

私も後を追おうとすれば、ナミに腕を掴まれて首を横に振られた。私達が行っても意味はないということか。

造船所に行ったナミ達はウォーターセブンの市長でココロさんの友達(?)のアイスバーグさんと出会う。船を直してもらうためにウソップそっくりのカクさんという人はがメリー号を見たところ、直せないことが判明。その事を知ったナミとルフィは驚いた。その時、ウソップがいないことに気が付いて、解体屋のフランキー一家に2億ベリーと共に誘拐されたことが判明し、怪我をしたウソップの敵とお金を返してもらうためにあの三人は乗り込んでいった。

「ロビンが帰って来るまでの辛抱よ。私達が一緒に乗り込んでも邪魔になるだけだし…」

コワイし。と小さく呟いたナミを横目でみる。一人でいるのが怖いから私の腕を掴んだ事を知って今更ながら呆れる。そんなナミも可愛いんだから憎めない。

「とにかく私はこの船と1億ベリーを守りきるわ!頼んだわよ、みんな!」

黄金は3億ベリーになったそうだ。その額にも驚きだけど、このままで一味は大丈夫なんだろうか。船も駄目かもしれない、ロビンもいない。不安がいっぱいで、ナミと顔を見合わせて抱きついた。どうしたらいいのか、悩んでいるのはナミも一緒みたいだ。

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