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あるおじいさんの足の長い馬のシェリーが撃たれたことをきっかけに決闘を受けたらしい。倒したことを報告して、一安心。やっぱり人助けの為だったんだ。お詫びにもてなしてくれるらしく、おじいさんは自分の家へと入ろうとする。だけど扉の前には、木と同じくらいの背の高い男がいた。 「んん?……何だお前ら。」 「おめェが何だ!」 「木かと思った。」 その時、ドサッという音を立ててロビンが地に尻をつけた。息を乱し、顔色が悪い。 「ロビン!?」 「どうした!ロビンちゃん!」 「ハァ…ハァ……」 「……あららら、コリャいい女になったな……ニコ・ロビン。」 ニヤリと笑う頭にアイマスクを付けた黒髪の彼。ロビンがこんなに取り乱すなんて、今までなかった。みんなは警戒態勢をとる。 「ロビン!どうしたんだ!知ってんのか!?こいつの事!」 「ハァ……ハァ…」 「………昔…ちょっとなァ。」 運を集めだした方がいいかも。そう思えるほど、こいつはヤバイ人物であることはわかる。 「あららら、まーまー。そう殺気立つなよ、兄ちゃん達。別に指令を受けてきたんじゃねぇんだ。天気がいいんで、ちょっと散歩がてら」 「指令だと!?何の組織だ!」 「海兵よ、海軍本部大将、青キジ」 ロビンの言葉に全員が驚いた。まさか海兵のしかも大将だなんて。確か海軍の中でも大将の肩書きを持つ将校は三人。その上には海軍トップ、センゴク元帥が君臨するだけ。世界征服の最高戦力と呼ばれる三人の内の一人がここにいる。 「何でこんな奴がここにいるんだよ!もっと何億とかいう大海賊を相手にすりゃいいだろ!ど、どっかいけー!」 ウソップは刀を構えるゾロの後ろに隠れながら叫んだ。叫ばれた青キジを見ると、目が合い顔が近づいてくる。 「あららら、こっちにも悩殺ねーちゃんスーパーボインが二人。今夜ヒマ?」 「アミに手出すなテメェ!!」 「何やってんだ!ノッポコラァ!!」 「話を聞けオラァ!!」 青キジに誘われたが、ルフィサンジウソップがツッコんだ。同じく誘われたナミは慣れているのか、何ともない顔だ。 「ちょっと待ちなさい、お前らまったく。そっちこそ話を聞いてたのか?おれァ散歩に来ただけだっつってんじゃないの。カッカするな。」 海兵が海賊を前にして、捕まえないなんておかしい話だけどそれで助かったと思う。大将相手なんて、どうなるかわからない。 「だいたいお前ら、アレだよホラ……忘れた、もういいや。」 「話の内容グダグダか!お前っ!」 全力でツッコミをする2人をみて、笑がもれた。あまりにも面白くて笑いが止まらない。そんな私にも笑いすぎだとツッコまれて、それにも笑ってしまう。 青キジのモットーはダラけきった正義らしく、これで本当によかったと思う。ロビンの消息を確認しに来たらしいが、今回は本部に報告するだけで済ましてくれるらしい。 「………あんた。」 「ん?」 青キジは、離れ離れになってしまったおじいさんと移住している島民達とを引き合わせてくれるらしいのだ。でも島は離れている為、引き潮を待たない限りこの海を渡れるわけがない。 「確かに、その男なら……それができるわ。」 ロビンの言葉にみなハテナを浮かべる。いったい、どういう事だろうか。とりあえず荷物をまとめたおじいさんとシェリーと私達は海岸へと向かった。 「で?どうすんだ?このままおめェが馬も家も引っ張って泳ぐのか?」 「んなわけあるか……少し、離れてろ。」 そう言って、青キジは青い海に手を付ける。大きな海王類が現れて、食べようとしても青キジは動かない。みんなが心配して声をかけた瞬間、辺りが白くなり冷気が私を包んだ。 「悪魔の実!!!」 「海が、凍った!!」 「ロギア系、ヒエヒエの実の氷結人間!これが海軍本部、大将の能力よ!」 なぜ、青キジならできるとロビンが言ったのか、その理由がやっとわかった。海を凍らせれば渡ることができる。 おじいさんは嬉しそうに笑い、私たちと青キジに礼を言って氷の上を歩いていった。 「はーっ……よかったよかった!」 「うほ!寒ィ寒ィ!」 「うわふ!」 「すっかり冬だ、コリャ。」 「半袖なら寒いね。」 氷の海に感嘆していたところ、青キジを見ると草原にあぐらをかいていた。頭をかき、何かを迷っているようだ。 「何というか、じいさんそっくりだな…モンキー・D・ルフィ。奔放というかつかみ所がねェというか……。」 青キジの言葉にルフィの顔色は悪くなる。きっとガープおじいちゃんのことを思い出したんだろう。私には優しかったけどルフィには厳しかったもん。 「懐かしいなァ。」 「じいさん!?ルフィの?アミも知ってんのか?」 「うん、ね?ルフィ!」 「べ、別に……いや!そ、その!」 焦るルフィを見る限り、そうとう怖いみたいだなおじいちゃんのこと。 「お前のじいさんにゃあ、おれも昔世話になってね、おれがここへ来たのはニコ・ロビンとお前を一目見る為だ。………やっぱ、お前ら。今、死んどくか。」 青キジの言葉に全員が目を大きく開けた。見逃してくれるんじゃなかったのか、と。ダラけきった正義はどこにいったのか。青キジという自由な男が怖くなった。
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