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「政府はまだまだお前達を軽視しているが、細かく素性を辿れば骨のある一味だ。少数とはいえ、これだけ曲者が顔を揃えてくると、後々面倒な事になるだろう。」

懸賞金がかけられているのはルフィ、ゾロ、ロビンの三人だけどいずれ私達にも懸賞金がかかるだろう。

「初頭の手配に至る経緯、これまでにお前達のやってきた所業の数々、その成長の速度。長く無法者共を相手にしてきたが、末恐ろしく思う。」
「そ、そんな事急に!見物しに来ただけだって、おめェさっき!!」

怯えたように言うウソップを無視して、青キジはロビンだけを見つめた。

「特に危険視される原因は、お前だよ。ニコ・ロビン。」
「お前やっぱりロビンを狙ってんじゃねェか!ぶっ飛ばすぞ!」
「懸賞金の額は何もそいつの強さだけを表すものじゃない、政府に及ぼす危険度を示す数値でもある。」

だからこそロビンは8歳という若さで賞金首になった。私がまだ生まれる前から、ロビンは色んな人から逃げ続けてきたんだ。だからこそ、強い。

「子供ながらにうまく生きてきたもんだ。裏切っては逃げ延びて、取り入っては利用して。そのシリの軽さで裏社会を生き延びてきたお前が、次に選んだ隠れ家がこの一味というわけか。」

青キジの言葉にサンジが怒るのも無理はない。でもどうしてこんなにも青キジはロビンを悪く言うのだろうか。何か、恨みでも。

「別に恨みはねェよ。因縁があるとすりゃあ、一度取り逃がしちまった事くらいか。昔の話だ。」

昔にロビンに何が起こったのかはしらない。私よりも長く生きて、私よりも沢山苦労してきたんだと思う。それでも今のロビンが好きだから。仲間だから。ロビンを守りたい。

「お前達にもその内わかる。厄介な女を抱え込んだと後悔する日も、そう遠くはねェさ。それが証拠に今日までニコ・ロビンと関わった組織は全て壊滅してる。その女一人を除いてだ。何故かねえ、ニコ・ロビン。」
「やめろお前!昔は関係ねェ!!」

ルフィが叫ぶ。さっきまでロビンは楽しそうに笑っていた。その笑みが嘘じゃないと、私は思う。彼女は心の底から笑ってたから、信じたい。

ロビンは青キジに攻撃を仕掛けるが、氷になってしまうから意味がない。氷に効くものなんて。ああ、私には火があるじゃないか。

「Fate Gathers」

そう言って、手の中に運を集めて行く。ロビンを狙うやつなんて、溶けてしまえばいい。
ルフィ、ゾロ、サンジが攻撃を仕掛けるものの、青キジに触れた部位が凍ってしまっている。はやく手当てしなければ凍傷になってしまう。

「いい仲間に出会ったな。しかし、お前はお前だニコ・ロビン。」
「違う……私はもう……」
「ロビン!逃げろ!!危ねェぞ!逃げろォ!!」
「私は……」
「ロビンちゃん!!」

青キジがロビンを包み、どんどん凍って行く。身体全体が白に変わったとき、やっと運を溜まり終えた。

「お前ェー!!!」
「わめくな、ちゃんと解凍すりゃ、まだ生きてる。ただし、体は割れ易くなってるんで気をつけろ。割れりゃ死ぬ。」

青キジが凍ったロビンを割ろうとするから、私は思いっきり青キジと叫んだ。全員の声がこちらにむく。

「ロビンは渡さない!!」

溜めた運を思いっきり青キジに投げた。それは紫色で、赤色じゃなかった。もしかして、火じゃないのかも。龍の形をした紫色の運は見事青キジに命中した。けれど、やっぱり火じゃない。

「毒か?ドクドクの実?けど、それはインペルダウンのマゼランが………くっ!」

毒を浴びた青キジは膝をつく、その間にウソップが凍ったロビンを抱え込み、チョッパーを連れて解凍するべく、メリー号へと走った。

「おねーちゃん、何の能力か教えてくれるよな?」

運を使い果たした私はもう悪くこともできない。そんな私にゆっくりと近づいてくる青キジが恐い。冷気なのか殺気なのか、よくわからないものが私を包み込む。

「待った!!お前ら!!お前ら手ェ出すな。一騎打ちでやりてェ!この勝負、おれとお前でケリをつけよう。」
「構わねェが、連行する船がねェんで、殺して行くぞ?」

ルフィと青キジが対決するから、私たちはメリー号へと戻らなければならない。凍らされていないナミに支えられ、メリー号へと走った。ゾロとサンジは早く凍らされた部分を溶かして、ルフィのところへと引き返しにいく。私、ナミ、ウソップ、チョッパーは凍ったロビンをお風呂場で暖める。ルフィ、無事でいて。ロビン、ごめんね、守れなくて。







ルフィは全身凍らされたものの、無事だった。凍らされた二人を暖め、解凍した。そしてゴーイング・メリー号はルフィとロビンの体の安静の為、ロングリングロングランドに4日間宿泊する。そんな4日目、ロングリングロングランドをルフィと散歩していた。

「ルフィ本当に大丈夫?チョッパーは安静にって言ってたけど。」
「んー、別に寒くもねェし、大丈夫だ!」
「よかったぁ。」

手を繋いで、色んな所が長い動物たちの横を歩く。

「アミが寝てる時もずっと温めてくれたおかげだな。」
「な、なんでそれ、知ってるの!?」
「ナミが言ってた。」
「ナミィ!」

どうして言ったかなぁ、すごく恥ずかしい。赤いであろう顔がバレないように下を向く。

「そういえば、あの技なんだ?」
「新しく考えたんだけどね。二回戦の時は火が出たのに、青キジの時は毒だったの。」

本当にわけがわからない。次はいったい何が出るのか、それにどうして運にこんな能力があるのか。私もわからない。

「あの龍!かっこよかった!」
「もっと可愛いのがよかったけど。」
「形、変えられねェのか?」
「うん、また今度練習してみる。」

泊まっていた3日間、やろうとは思ってたけどルフィとロビンが心配で動けなかった。ううん、ただの言い訳かもしれない。

「アミ。」
「ん?」

名前を呼ばれてルフィの方を見た瞬間に、キスされた。ずっと離してくれなくて、息ができない。無理矢理にでも口を開こうとすれば、舌が入ってきた。私の口の中を犯して行くその舌に自分の舌を絡ませる。

「……んっ…はぁっ……」
「んんっ」

どうしてこんなにも今日は大胆なんだろう。わからないけど、きっと不安だったんだろう。あんな強い相手じゃ、仲間を失っていたかもしれない。下手すれば自分自身も。

「ルフィっ、ロビンは仲間だよね?」
「当たり前だ。」

必要のない確認だったかもしれない。離れた唇が震えているのは怯えているから。いつかロビンが離れていくんじゃないかって。その震えが伝わっていたのか、ルフィは私を強く抱きしめてくれた。大丈夫だ、と安心させるように。

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