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そこからは一瞬だった。二人が協力して、丸焦げの三人を倒し、ボールマンのビッグバンをゴールリングへとぶち込んだのだった。

『ゴール!ゴール!ゴーール!!』
「ゾロ!サンジ!!」
「うわっ!」
「アミちゃん!?そんな、大胆な……」

見事ゴールを決めた二人に抱きつこうと思ったのによろめいた足でバランスを崩し、二人を巻き込んで地面に押し倒してしまった。

「なにやってんだ!!!」

びょーんっと飛んできたルフィも倒れ込み、四人とも地面に寝転んだ。よかった、これでチョッパーが帰って来る。

「おめーらチキショー!ハラハラさせやがってーっ!」
「イヤ、いてェいてェ。」
「うははは!あったり前だ!こいつらが敗けるか!」
「んナミさーん!ロビンちゃーん!見てた!?ホレた!?」
「ステキだったわよ。」

みんなそれぞれ言う中、私とナミは顔を見合わせて笑った。本当によかったと、安堵する。

『さー、それじゃあ二回戦の勝者麦わらチームにはフォクシー海賊団からクルー1名もしくは海賊旗を奪う権利が与えられるよー!麦わらの一味船長はだーれが欲しいのかな!?』
「もう決まってんじゃねェか。」

チョッパーがはやく名前を呼んでくれと言わんばかりに目を輝かせている。戻ってきたら1番にチョッパーを抱きしめよう、そしておかえりと言うんだ。

「じゃあチョッ」
「ちょっと待ってルフィ!」

チョッパーを呼ぼうとしたルフィをナミが止めて、みんながズコッと転んだ。まさか途中で止められるとは思ってなかったからか、チョッパーは少し不安そうな顔をしている。

「三回戦は1対1の決闘よね?出場者はルフィとオヤビンだけ。じゃあ今オヤビンを取っちゃえば三回戦は不戦勝になって……」
「あ!もうこれ以上戦うこともなくチョッパーを取り戻せるってこと!?」
「そ、アミの言う通り!」

そうナミが言った瞬間にブーイングの嵐が起きた。ピーナッツ戦法だー!と。何なのよピーナッツ戦法って。ピーナッツピーナッツ言われて、いい気分になるはずもなく、ナミは激怒した。
ピーナッツ戦法をすれば確実にチョッパーは帰ってくるし、仲間を失うリスクを無くなる。だけどオヤビンが仲間になるんだ、そんなのいらない。

「チョッパー!帰って来い!!」
「うおおおお!」

ルフィが大声で呼び、チョッパーが泣きながら走ってくる。ルフィに抱きつこうとしたけど、その間に私が入った。

「おいいいい!?アミ!?」
「うおえあえあがばばば!ありがどう!アミー!!」

チョッパーはルフィじゃなくてもよかったのか、泣きながら必死に私の服を握りしめている。可愛いなァ、チョッパー大好き。

「おかえり!」
「だだいばーー!!」

私もぎゅーっと強くチョッパーを抱きしめ返した。まだ泣き続けるチョッパーのふわふわの毛をゆっくりと撫でる。

「泣くな!ゾロ達が敗けるわけねェだろ。」

そう言うルフィも嬉しそう。だけどすぐにいい加減離れろと、チョッパーから引き剥がされた。いい雰囲気が台無しだよ。ルフィらしいけど。
安心できるのもここまで、まだ三回戦が残ってる。もし敗けてしまえばまた仲間が取られることになる。三回戦が始まる前に怪我の手当てをしてもらった。

「ありがとうな、三人共!かっこよかったぞー!あんーなデッケー奴ら投げたり蹴ったり!」

チョッパーに褒められて、三人共照れる。だけどサンジとゾロは自分のお陰だと主張する。二人が倒れてる間に助けてあげたのは誰よ、と言ったのに聞こえてない。

「選手の方は控え室で準備をどうぞ。」
「おう、おれだ。準備?」
「……あと、セコンドは誰が?」
「ん?ああじゃ、おれがやるよ!」

何の準備かは知らないけど立ち去ろうとするウソップとルフィを追いかけ、腕を掴んだ。

「ん?アミ?」
「これくらいはさせてね。」
「ちょ!?アミ!?その能力は自分に不運が帰ってくるんじゃねェのか!?ルフィ!いいのか!?」

ウソップは止めに入るけど、もう遅い。ルフィの頬にAngel Kiss(エンジェルキス)をして、私は満足した。相手を幸運にする代わりに私が不運になる技だけど、大好きなルフィの為だ、別に構わない。

「受けとっとく。アミの愛が詰まってるからな!」
「イチャついてくれるぜ、ったく。」
「じゃ!頑張ってね!ルフィ!」

頼もしい背中を見送ってナミ達の元へ戻ろうとすれば、石に躓き、転んで膝から血が出て、空からは鳥のフンが落ちてくるし、事故だけど上からジュースをかけられた。

「きゃっ!?アミ!?どうしたのよ!」
「技を使っちゃって。」
「ルフィに使うなって言われてたでしょ!?」
「使うなって言われても、守れないよ。」
「それよりはやく着替えてきなさい。試合見れないわよ?」
「うんっ!」

ルフィの試合に間に合わせる為に急いでメリー号へと戻り、軽くシャワーを浴びて、濡れた髪のままクローゼットを開ける。服に悩んでる暇なんてないから、近くにあった黒い短パンと白いTシャツに、ルフィのベストに似ているレディースの赤いベストを羽織った。

『銀ギツネのフォクシーVS麦わらのルフィ!両海賊団、主力対決にその全ての命運がかかるっ!そして今、決戦のゴングーッ!!』

実況の声と大きな歓声が聞こえて、慌てて女部屋を出た。サンダルも履き替えたかったけど仕方が無い。急いで観客席の中からナミ達を探す。

「アミー!こっちよー!」
「アミちゃん!オレンジジュースでよかった?」
「うん!ありがとう!」

観戦用のポップコーンとジュースを片手に始まった戦いを見る。ルフィが勝つと信じているからこんなにも余裕でいられるのかな。

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