065
研究所内シーザーの研究室
「シーザーは…何を始める気だ…!」 「…さァ。彼のペット“スマイリー”を起こしたという事は…大きな実験でも始めるんじゃない?」
手が羽になっている女モネと、私の上司だったヴェルゴさんの会話を聞きながら辺りを見回す。確か息が吸えなくなって苦しくて、気を失ったはず。
「ヴェルゴあなた今朝ハンバーガーでも食べた?」 「?、なぜわかった。好物だ。」 「お口の横にハンバーグの食べカスが……」
私のお腹は相変わらずグーグーなっていて、ハンバーガーを思い出すとよだれが垂れそうになる。
ヴェルゴ中将は海軍Gー5基地長。よく一緒にご飯を食べに行った仲のいい上司だった。いや、少なくとも私は尊敬していた。
「その実験はぜひ見て行きたいものだな…外の奴らは全員死ぬのか?」 「たぶんね。この研究所内にいれば安全よ」 「………おいヴェルゴ!!外にいるのは全員Gー5の海兵!!お前の部下だぞ!!」 「!、ああそうだな…」
スモーカーさん入りのたしぎちゃんの言葉にヴェルゴは頷くが、きっと部下だとは思ってなかったんだろう。
「しかし一つの檻に入るにはあまりに豪華な顔ぶれだな…いい眺めだ…」
一つの檻の中にルフィ、ロビンさん、フランキーさん、ローさん、たしぎちゃん、スモーカーさん、私がいる。その檻を見下ろすヴェルゴさんの表情はサングラスでわからない。
「何だか懐かしいわね。あなた達が同じ檻にいると…」 「そうそうおれとケムリンアラバスタでお前らに捕まった事あったよなー」 「黙れ貴様ら!!!」
ルフィたちが話している中、体に巻き付けられた、(海楼石で作られた)鎖を解こうともがくけど、力が抜けるだけで動かない。
「スモーカーさん私…!!この気持ちどうすればいいのか!!ウゥ…」 「お前の予想が最悪の状態で的中したな」
つまり…シーザーが子供共を連れ去った誘拐事件はヴェルゴさんの手で海難事故にすれ替えられてたというわけ。よりによって基地のトップが不正の張本人とはGー5らしい。軍の面子は丸潰れ。
「怪しいと思ってたんですよねー。」 「嘘付け。お前は一番仲が良かったはずだ、クミ。」 「そ、それは言わないで下さい!スモーカーさん!」 「…お前らが気づかねェのも無理はない…!!ヴェルゴは海軍を裏切った訳じゃねェ。」
ローさんの言葉に耳を傾ける。
「元々奴は海賊なんだ。名を上げる前にジョーカーの指示で海軍に入隊し約15年の時間をかけて一から階級を上げていった。ジョーカーにとってこれ以上便利で信頼できる海兵はいない。」 「…………」 「ヴェルゴは初めからずっとジョーカーの一味なのさ!!!」
二重スパイということか、と一人納得しながら牢の目の前にいるヴェルゴさんを見上げる。私と一緒に過ごした日々はきっと、作戦の一つだったんだろう。
「ジョーカー…確か裏社会のブローカーの名だな…自分が情けねェ…こんな近くのドブネズミの悪臭に気づかねェとは…!!」 「そう悲観せず…優秀な白猟と敏感な天使の目をもかいくぐったドブネズミを誉めてほしいもんだスモーカーくん。」
悔しそうなスモーカーさんを横目に、私はただ呆然とヴェルゴさんを見つめることしかできなかった。後悔というより、失望だ。
「お前たちが本部から転属して来た日から最大限に警戒網を張ったよ。そのストレスから今日解放されると思うと嬉しいね。」
今日、解放されるということはつまり。
「知られちゃマズいおれの正体を明かしたという事はどういう事かわかるな?スモーカー中将クミ中将たしぎ大佐、キミらはここで死に…その口は封じられるという事だ…表にいる部下達もシーザーにくれてやる。」
私の考えていた言葉をそのまま言ってのけたヴェルゴさん。そう簡単にやられないとわかっていても、ヴェルゴさんの実力は本物だ。仮にも、ここまでの地位に登り詰めた男なんだから。
「なァに…いつもの様にちゃんと事故と処理しておくさ」
ヴェルゴさんになにも言い返すことができず、少しの沈黙ができた。その沈黙を破ったのは隣にいたルフィだ。
「なァ、クミ。さっき言ってたジョーカーって誰だ?」 「私にもわからないの。ローさん!知ってますか?」 「………おれも昔……そいつの部下だった…」
だからヴェルゴさんを知っていたのかと、改めて理解した。
「ジョーカーとは闇のブローカーとしての通り名だ。だが、その正体は世界に名の通った海賊 王下七武海の一人…ドンキホーテ・ドフラミンゴだ!!!!」
ローさんの言葉に誰もが驚き、あの鳥人間の顔を思い出した。
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