ドラム王国(008)

フミは城中を歩き回り、たまたま雪が降る外へと出た。すると見たことがある顔が何人か見えて、記憶を辿って名前を思い出す。

「あなたは確か………」

ボリボリと刀を食べて、メリー号も食べられてルフィも食べられたつい最近の出来事。でもどうしても名前が出て来なくて頭がモヤモヤした。

「………誰でしたっけ…?」

フミははやく頭のモヤモヤを晴れさせたくて、直接本人に名前を訪ねる。ガクッと項垂れたワポルは自己紹介をするがピンと来ないのかフミは浮かない顔だ。

「まぁいい。良いところで会った!お前を人質に………」

フミを人質にして自分をぶっ飛ばした張本人ルフィをおびき出そうと考えたが無駄だった。
ーーーールフィはもうワポルの目の前に迫っていたから。

「ゴムゴムの〜〜ブレッド!!!」

顔面に直撃したルフィのパンチの勢いは凄まじいものだった。ワポルは吹っ飛ばされ、雪が舞う。フミが後ろを振り返ればチョッパー、ドクトリーヌ、サンジがいた。

「フミ!何もされてないか?」

「うん、何もされてないよ。」

「フミちゃん!寒くない?コート貸そうか?」

「大丈夫、ありがとう。」

「は〜〜〜い!」

メロリンなサンジはさて置き、吹っ飛ばされたワポルは山に落ちる寸前まで引きずられた。

「ししっ!も〜〜我慢しなくていいんだ」

「ぬう!貴様!いきなりドラム王国の国王であらせられるワポル様に向かってなんたる狼藉を!」

「そうだぞ、国王様だ!この島中の国民達を支配されておいで遊ばれていらっしゃる一国の王に向かって貴様は…!」

手下二人が慌てて言うが、もちろんルフィは気にしていない。ムカつくからという理由でワポルをぶん殴ってしまった。

「若僧!お前あいつらを知ってんのかい?」

「知ってるさ"邪魔口"だ。海賊"邪魔口"邪魔ばっかりすんだよ。船食うしな、もう許さねェぞおれは!」

「それよりおめェは寒くねェのか。」

ビュゥッと冷たい風が吹き荒れた。1人だけコートも着ずにいつもの赤いベストスタイルなルフィに問いかけるサンジ。やっとルフィは辺りを見渡し、ここが雪国ということを思い出す。

「おい!寒いぞここ!」

「だから言ってんだろうが!!」

「マイナス50度だよ。」

「ルフィ!コートとってくる!」

「おう!フミありがとう!」

「フミちゃん……こんな奴のために…」

フミがあそこにいても戦闘には参加することもできない。逆に役立たずなくらいだ。なら、こういうところで役に立つ方がいい。城の中に戻り、ルフィのコートを探す。確かルフィが寝かされていた部屋にあるはずだがフミはナミの様子も気になり、まずはそっちに寄ってみる。

「ナミちゃん、ルフィのコート知らない?」

ナミは起きていて窓から外を眺めていた。突然入ってきたフミに少し驚いたが、外の様子が気になっていたから聞くのに丁度いいタイミングだった。

「どうしたの?外」

「ルフィ達がケンカしてるんだよ。」

「平気なんでしょ?」

「寒さに負けてるだけでルフィは負けないと思う。」

「そう…ならよかった。コート、私の使っていいわよ」

「………いいの?」

コートが見つかって嬉しいはずなのに、フミは複雑そうな顔だ。初めこそ悩んだもののピンっときたナミはニヤリと笑う。

「私のコートをルフィに着てほしくない?」

「ち、違うよ………そうじゃなくて」

「なら私のコートをフミが着て、フミのコートをルフィに渡せばいいのよ。」

「だ、大丈夫!嫉妬じゃないから!」

明らかに嫉妬だとわかるが、顔を少し赤く染めてぬいぐるみを抱きしめながらモジモジとするフミが可愛く見えてナミは小さく笑う。

「フミも怪我には気をつけてね。」

「うん、ありがとうナミちゃん。」

フミはナミのコートを持つと急いでルフィの元へ向かった。今頃寒さに震えているだろう。城をタッタッと駆けていくが、途中でチョッパーの言葉を思い出した。

"あまり激しい運動をすると心臓に負担がかかって病気の進行がはやくなるんだ"

少し走る程度なら問題ないが、なにが激しい運動なのかわかっていないフミは早歩きで向かう。これならルフィがコートを取りに行った方が速かったかもしれない、とフミは泣きそうになった。
大きな扉から出ると、そこではワポルが吹っ飛ばされる瞬間だった。

「ルフィっ………持ってきた!」

「おうフミ!ありがとう!」

ルフィはナミのコートを受け取るとすぐに着用した。寒さで体がブルブルと震えている。

「ごめんね、遅くて。ルフィが取りに行った方が速かったかも…」

「フミが、取りに行ってくれてたから今ワポルを吹っ飛ばせたんだ。まだ倒しちゃいねェけど、フミのおかげだ。」

「ルフィ〜〜〜〜」

フミはルフィに抱きついた。コートからはナミの匂いがしたが、そんなことどうでもよくなっていた。こうやってルフィが自分に笑いかけてくれるだけでいい、と。フミは満面の笑みを浮かべた。

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