ドラム王国(009)

「見せてやるぞ……バクバクの実の真の力…!」

「あれをくらって立つかフツー」

「ジョーブだな〜あいつ」

抱きしめあっていたルフィとフミはゆっくりと離れる。ワポルが立ってしまえばイチャイチャしている暇なんて微塵もない。フミが悲しそうな顔をするからルフィはグッと胸を掴まれたような感覚に陥る。クシャクシャと頭を撫でて、後ろで待ってろと告げた。

「今朝からのおれ様の献立を言ってみろ…」

「え〜〜〜船内にて"大砲のバターソテー"1門と"生大砲"1門"砲弾と火薬のサラダ"に村で"焼きハウス"一軒分となっております。」

「何食ってんだお前」

「雑食この上ねェな…」

「美味しいのかな?」

フミの疑問にチョッパーは全力で美味しいわけねェだろ!とツッコんだ。全員がワポルの能力発動を見守る。『ワポルハウス』という名の、体が家に変形する能力はなんの役に立つのだろうか、と疑問に思う。

「驚くのはまだ早い。これが王技!"バクバク工場"」

「ギャアアアアア!」

なんとワポルは自分の手下二人をパクリと食べてしまった。悲痛な叫び声にフミは思わず目をそらした。

「仲間を食ってんぞ!」

「共食いだァー!」

目の前の光景にルフィとサンジも驚きを隠せない。二人を食べきったワポルの家のような体からは煙がプシューッと吹き出している。

「さァ、見るがいい。"奇跡の合体"いでよ!」

「何!?まさか二人の人間が合体!?」

ゴクリと誰かの息を飲む音が聞こえた。ものすごい強敵が現れるのではないか、と不安に駆られる。

「我こそは…ドラム王国最強の戦士…チェスマーリモ!!」

ワポルの腹の中から現れたのは、食べられたはずの手下二人クロマーリモとチェスが肩車しただけだった。

「すっっっっっげェー!!」

「すごくねェだろ!!」

「油断しないこったね…。あいつらがもし本当に弱かったら、"医者の追放"なんてバカなマネ…国民全体で止めてたはずさ。」

もし弱かったなら、チョッパーの恩師Dr.ヒルルクは騙されなかっただろう。ドクトリーヌの言葉に全員が真剣な顔つきになった。

「ドラム王国憲法第1条『王様の思い通りにならん奴は死ね』これがこの国の全てだ。なぜならこの国はおれの国で…この城はおれの城だからだ」

理不尽にもほどがある。そんな憲法は憲法とはいえない、フミは険しい顔でワポルを睨みつけた。

「よりよってあんなヘボ医者の旗なんぞかかげるんじゃねェよ!城が腐っちまうぜ!!」

Dr.ヒルルクが海賊のように自由に生きたいからと、作った桜のマークが描かれている海賊旗が城の頂点に掲げられていた。その、チョッパーの大切な旗がワポルの大砲によって撃たれた。チョッパーの顔が険しくなる。

「おいトナカイ、あの旗………」

「何してんだお前!ドクターのドクロマークに!!」

「ケッ…くだらん、殺っちまえ。」

手下が走ってくるチョッパーを捕まえようとするが避けられ、ワポルはガシッと掴まれた。

「ドクターは!お前だって救おうとしたんだぞ!」

この国全体を心の病から救おうとしたDr.ヒルルクの気持ちも知らず、旗を撃たれたことにチョッパーは心の底から腹をたてた。が、チョッパーはワポルを殴ろうとはしない。

"恨むなよ人間を…この国は今病気なんだ"

Dr.ヒルルクの言葉がチョッパーの頭をよぎったからだった。

「おれは…お前を殴らないから。この国から出て行けよ!!」

「……………あ?」

「何言い出すんだいチョッパー!そいつが説得に応じる奴だとでも思ってんのかい!?」

「だって………やっぱり……」

「フンッ…」

優しいチョッパーを鼻で嘲笑ったワポルは大砲を撃ち、その弾はチョッパーに直撃した。


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