空島(53)

「どうなってんだこりゃ…!?」

「雲が帯状になってまるで川みてェだ!」

言葉通り、雲が帯状になって天へ続いている。人口のものではないかとロビンが推測するが誰にも答えは分からない。

「何か書いてあるぞ!!」

「出口だ!」

帯状の雲先、光が差し込んでいる大穴が見えた。メリー号はそこに向かってグングンと進んでいく。書かれている字は「GODLAND SKYPIEA」

「出口じゃねェよ!入口だ!!!」

スカイピアと書かれた場所への入口。一味の表情はそれぞれだったが、船長ルフィは目を輝かせ入口を見据えた。

ーーーーー白々海
神の国「スカイピア」

大穴から飛び出したメリー号は、また雲の海へと着地する。そこで見えたのは、雲に浮かぶ大きな島。まさにそこは。

「空島だーーーーー!!!!」

一味の夢が詰まった空島へ、やっとの思いでたどり着くことができた。メリー号はゆっくりと海岸へと進んでいく。ルフィは一目散に空島へと上陸した。雲の浜辺というべきか、砂ではなく雲。どんな感触なのだろうか、靴を脱いでその感触を味わってみたい。

「うほー!!この島地面がフカフカ雲だ!」

「ギャーーーー!空島ーーー!!!」

ルフィ、ウソップ、チョッパーが先に上陸してその感触を楽しんでいた。

「ナミちゃん私着替えてくる!」

「え、どうしたの?」

「裾が短いものにしようと思って!」

「んーそうね!せっかくの空島だし」

フミが今着ていたのはお気に入りの白いワンピースで、足首まで裾があるものだった。フミは白色をよく好む。幼い頃両親が喜んだからだった。
フミが女部屋へと向かった背中から、空島へと視線を移したゾロはルフィに向かって口を開く。

「おい錨はどうすんだ!?海底がねェんだろここは!!」

「んなモンいいだろどうでも!早く来てみろ!フカフカだぞこの浜辺は!フミーーー!早く来いよーー!」

「どうでもってお前………フミは着替えに行った。」

ゾロは呆れたため息をつくと、ルフィがゴムの腕を伸ばしてメリー号に戻ってきた。そのままその足で女部屋へと走っていく。フミを迎えにいくのだろう。
ゾロはルフィなど気にせず、目の前にある錨に手を伸ばし、雲の海にそれを下ろした。

「しかしたまげたな、この風景にゃ…まるで夢だ」

「全くだ…それにアイツらのハシャギ様ときたら…ハハしょうがねェな」

ゾロの言葉にサンジはそう答えたが、律儀に靴を脱ぎ始め、袖を捲った。まさか。

「ひゃっほーーーう!!」

「おめェもだよ」

そのまま雲の海に飛び込んだサンジに向かってゾロが静かに呟いた。
甲板で突然鳥の鳴き声が聞こえ、ゾロは視線を移した。そこには鳥に襲われるナミの姿が。

「痛い痛い!ごめんごめん!!……逃すの忘れてた」

ナミはゾロの元に向かいながら、その鳥…サウスバードの縄を解いてやる。ここまで連れてきてしまったことを詫びながら。

「人も住んでるみてェだ。別に生きていけるだろ」

「錨は?」

「刺した…例の…フカフカの雲がこの島の基盤らしい」

青海の海底とは違い、雲の海のフカフカさではメリー号を波から支えられるかは分からないが、念のためだ。

「…ねェ。スカイピアって…」

ロビンの声が甲板から聞こえ、ゾロとナミは顔を向ける。
「スカイピア」という名前には聞き覚えがあった。海に沈んだ船をサルベージしていた時、ルフィが見つけたあの地図。そこに書かれていた名が「スカイピア」だった。
その船はロビンの推測通り200年前に空島に来ていたようだ。

「あの時は正直こんな空の世界、想像もつかなかったけど…」

ナミはメリー号から海に向かって飛び降りる。ザブッと雲の海に着地した。夢だと思わせない、確かな感触。

「ほら!!ハハ!体感しちゃったもの!疑いようがないわ!」

ナミは満面の笑みで微笑み、ずっと気になっていた空島へと向かって走り出した。そのナミの笑顔と、さっきのサンジのテンションの上がりようをロビンは思い出す。なんだかんだ、皆冒険が好きなんだなと実感した。

「……あなたは?」

「…?、ああ、行くよ」

「航海や上陸が冒険だなんて、考えたことなかった」

ロビンはそう呟くと、他に習って靴を脱ぎメリー号から飛び降りた。ゾロはロビンの言葉に疑問が浮かんだが、触れることはせず、後を追った。



***





「フミー?なんで着替えてんだ?」

ルフィの声がして、フミは慌てて口を開く。

「ルフィ待って!今脱いだところ!」

白いワンピースを脱ぎ、まだ何も着ていないのでインナーだけの状態だ。
フミの声を聞いて、ルフィは黙ってしまった。いつもならば、構わず入っているだろう。だが、ルフィはナミの話を思い出してしまった。ーーーキスの続きのこと。

「ルフィ?」

しん、としてしまったのでフミは声をかけた。幼い頃は着替えなんてルフィに見られても全く気にしなかった。それほど幼い頃からともに育ってきたのに、今はお互い男女として意識している。
ルフィは女部屋の扉に背を預け、その場に座った。顔が異常に熱い。意識すれば頭から離れない、フミに触れたその時の感触を。
フミは急いで白いTシャツに、薄い青色の短いスカートを履いた。靴は脱ぎやすいように白色のサンダル。以前、ナミに買ってもらったシルバーのブレスレットもつけてみた。

「あれ、ルフィ?」

着替えを終え、扉を開けようとするがルフィが座っていて開かない。何度か名を呼んでみるが、反応がなかった。

「今、ちょっと無理かもしれねェ」

「どうしたの?」

「止めれる自信がねェ」

「止める…?あ。」

フミも気づいたのか、顔を赤らめた。空島のことで頭がいっぱいで、チョッパーから聞いた話のことを忘れていた。
空島の冒険よりも、フミと部屋で二人っきりになりベッドがたまたま近くにあり、船から皆いなくなっているこの状況で、キスの続きをしないという自信などルフィにはなかった。

「ルフィ、とりあえず出ていい?」

少しの間のあと、ルフィは立ち上がり、扉を開いた。足を出さない服が多いのに、今日に限って短いスカートからすらりと細い足が伸びていた。ルフィは大きく顔を逸らす。
フミはゆっくりと扉を閉めながら、女部屋から出てルフィを見上げた。

「ど、どうかな?」

「可愛いに決まってる」

「ルフィ、こっち見てくれないの?」

「見た!もう見た!」

「ちゃんと見てほしいな」

「フミ!ほんと、やめろ」

純粋に見て欲しいから言ったのだが、今のルフィには毒らしい。フミはルフィの手を握って、歩き出そうとするがルフィが立ち止まったままで、動くことができなかった。
ルフィは真っ赤な顔で、フミを見つめると、フミを扉に追いやった。フミの背には扉があり、ルフィが扉に手をついて覆い被さる。やっぱり見たくなってしまった、愛おしい彼女の姿を。

「フミ、かわいい。誰にも見せたくなくなるくらい」

「ルフィ…?」

見上げれば、至近距離にルフィの顔がある。もちろん、フミの顔も熱くなった。好きな人に可愛いと言われれば嬉しいに決まっている。
ルフィが時折見せる「独占欲」それがフミにとって恥ずかしくもあったが、嬉しいが勝っていた。
離したはずの手がまた合わさり、ルフィの顔がゆっくりとフミに近づきーーーー

「…悪いフミ」

唇と唇が重なり、ルフィの体温が感じられた。唇が熱い。
ルフィの手がフミの頬に触れる。こんなにも優しいキスをされれば、フミは受け入れるしかなかった。フミも止められなくなるので、キスは今したくなかったのに。
こんなに近くても、今は。

「今はこれが、限界だ」

何の、とは聞かない。お互いの限界だろう。
皆、空島で待っている。船長とその恋人が来なければ冒険は始まらないのだから。

「ルフィ、先に行ってて。帽子忘れた!」

「わかった。早く来いよ!」

ルフィが歩き出したのを見て、フミは女部屋に入った途端、その場にしゃがみこんだ。鼓動がうるさ過ぎて、ドキドキし過ぎて、どうにかなってしまいそうだ。熱い顔に触れ、ルフィがフミの頬に触れた感触を思い出してしまう。いざ、キスの続きをするとき、自分はどうなってしまうのだろうか。
フミは無理矢理考えない様にして、立ち上がり麦わら帽子を手に取った。ルフィのとは違いハットの形をしていて、白いリボンがついている。それをかぶり、すぐにルフィの後を追った。




***





フミが走って追いかけると、ちょうどルフィがメリー号から降りたところだった。ルフィはフミに気がつくと、腕を伸ばし雲の浜辺へと下ろす。

「フミー!遅かったわね。可愛い!短いスカートなんて久しぶりじゃない?」

ナミが雲でできたイスに座りながら、フミの姿をみて微笑む。もう顔が赤いのは収まっていた。

「ありがとう!そのイスすごいね、雲でできてるの?」

「そうなの!雲で造形する技術でもあるのかしら?」

「うおっ!でもフカフカとは別だな!まふっとしてるぞ!」

ナミの隣のイスに腰掛けるチョッパーはニンマリと笑い心地良さそだ。

「おい!あそこに誰かいるぞ!」

「また…!ゲリラか!?」

雲の上に立つ人間が一人。何かの楽器を奏でていて、ポロロロロという綺麗な音が浜辺に響いていた。

「待て、違う!!天使だ!!!!」

サンジがそう叫んだ。サンジが女性のことを天使というのは、例えだろうか。と疑問に思ったがよく見てみると本当に「天使」だった。

「へそ!!」

一味にそう言って笑いかけたのは「天使」
背中から白い翼が生えていて、金色の綺麗な髪に、触覚の様なものが2本髪の毛から出ていた。ハープを手にもつ姿はまるで天使そのもの。

「青海からいらしたんですか?スー、こっちへおいで」

天使の少女がスーと呼んだのは、ルフィの近くにいたキツネの様な白い毛をした生き物。スーはスタタタと天使の方へ向かっていく。

「下から飛んで来たんだ。お前ここに住んでんのか?」

「はい、住人です」

一味は天使へと近づいた。空島に来て初めての住人は優しそうな女性だった。

「ここは“スカイピア“のエンジェルビーチ。ふふっ…それコナッシュ飲みたいんですか?」

天使はルフィが手にもつ、カボチャの様なココナッツの様な実を見て微笑む。ずっと飲みたかったのだが、硬すぎて飲み方がわからなかったのだ。

「上の皮は鉄のように硬いから、噛んでもだめですよ。これは裏から……はいどうぞ」

天使はルフィから実を受け取ると、ナイフで実の裏を簡単に切って見せた。ルフィはすぐにそれを受け取り、飲んでみる。

「んんんんんめへへへェ!!!!!ヤバうま!!!」

「何ィ!?そんなにか!?おれもおれも」

ルフィは舌が飛び出るほど美味しいその実をウソップに渡した。すぐにウソップも舌が飛び出ることになる。

「私はコニス。何かお困りでしたら力にならせて下さい」

「ああ、それが君の視線で心に火傷を…」

「邪魔」

天使の名はコニスというらしい。サンジはすぐ口説こうとするが、ナミがその頬を掴んで引き剥がす。ナミはコニスに近づいて、笑いかけた。

「知りたい事がたくさんあるのよ。とにかく私たちにとってここは不思議な事だらけで」

「はい、何でも聞いて下さい」

ナミが沢山ある聞きたいことの中から厳選して、口を開こうとした時、ゾロの声がした。

「おい。海から何か来るぞ!」

「ナメクジだ!!」

「あ、父です。」

海から、小舟の様なものに乗ってこちらに走ってくる男性がコニスの父らしい。小舟にしては速度が速く、ナミは疑問に思う。

「コニスさん!へそ!」

「ええ、へそ!父上!」

「イヤ、何言ってんだおめェら」

「へそ」というのが空島での挨拶なのだろう。ルフィは驚いた声をあげるが、空島ではそれが普通だ。

「あれは何!?あの乗り物!」

コニスの父が近づいてきてやっと分かったが、あれは小舟ではない。小舟の様な形だが、帆もなく、船を漕いでいるわけでもない。操縦できるハンドルがついており、速度も段違い。

「あ、ウェイバーの事ですか?」

「はい、すいません止まりますよ」

ウェイバーと呼ばれるそれに乗った父が浜辺に近づいてきてーーーーーそのまま乗り上げ木に激突してしまった。

「みなさん、おケガはないですか?」

「おめェがどうだよ!!」

コニスの父が倒れながら聞くので、サンジが思わず声を荒げる。
ナミはウェイバーをどこかで見た記憶があった。確かルフィが。

「ねェルフィ、あんたああゆうの海底から持って来なかった!?」

「ああ、持ってきたな」

「あれがウェイバーだったんだ!ノーランドの日誌で読んだ、風がなくても走る船!」

スカイピアの地図と同様、海底に沈んだ船にあった200年前の乗り物。日誌に書かれていた「風がなくても走る船」それを目の当たりにし、ナミは興奮気味であった。

「お友達ですか?コニスさん」

「ええ、今知り合ったんです。父上。青海からいらしたそうで」

「そうですか。それは色々戸惑う事ばかりでしょう。ここは“白々海“ですいません」

「え!?いやそんな」

「申し遅れましたが、私の名は“パガヤ“ですいません」

口癖が「すいません」のコニスの父パガヤも同じく背中に白い翼を生やし、天使の様だった。優しい目と口周りの黒髭が特徴的だった。

「そうだちょうどいい。今漁に出ていたのですが、白々海きっての美味中の美味!“スカイロブスター“など捕れましてね。家にいらっしゃいませんか?“空の幸“をごちそうしましょう」

海の幸ならぬ空の幸。美味しそうな響きにルフィとコックのサンジは大興奮であった。空島の料理の技術を参考にするチャンスだ。

「その前に聞いていい?これどんな仕組みなの?風を受ける帆もないし漕いでいたわけでもない。何で海を走ってたの?」

ナミはずっとこのウェイバーが気になっていた。こんな船、青海では見ることすらできないだろう。

「まあ!“ダイアル“をご存知ないのですか?」

「ダイアル??」

空島特有の動力だろうか。
ウェイバーを知るために、まずはルフィがウェイバーに乗ってみることになった。ハンドルを握り、その下には2つ踏めるものがあった。アクセルとブレーキ、と呼ばれアクセルを踏むと進み、ブレーキを踏むと止まるという。

「踏めばいいんだな、これを」

ルフィが思いっきり踏んだ瞬間、ウェイバーの船体前方が浮き、走り始めた。

「うぅわわあ!!おお!?走ったぞ」

だが、ウェイバーはそう単純なものではなかった。揺れはすごいしバランスも難しく、浜辺から離れてすぐのところで転覆してしまう。海にルフィが落ちた、それが起これば誰かが飛び込んで助けるのが普通だった。なぜならルフィは悪魔の実の能力者だからだ。けれど、今は違った。誰も飛び込もうとはしない。

「ル、ルフィ」

フミとチョッパーが焦って、いつもルフィを助けに行く3人を見つめる。

「そういや、能力者にこの海はどうなんだろうな」

「そうか、普通の海とは違うからなァ。もしかして浮くかもしれねェ」

サンジ、ゾロ、ウソップが波打ち際でルフィを見据える。
ーーーールフィは暴れ、そして、沈んだ。

「沈んだ」

「だめか」

ゾロとサンジが慌てて雲の海へと飛び込んだ。と同時に、チョッパーも海へ飛び込んでいた。
ウソップの言っていた通り抵抗力が少なく、泳ぎやすい。ルフィは結構沈んでいて、間一髪雲から突き抜ける前に助け出すことができ、チョッパーはウソップが回収した。

「足が…片ほー雲を抜けた…」

「私が初心者にアレをお貸ししてすいません!!」

パガヤが謝るが、悪いのは完全にサンジとゾロだ。だが二人はいつも通り喧嘩を始めている。

「ウェイバーの船体は動力を充分に活かす為、とても軽く作られているのです。小さな波にさえ舵を取られてしまうので、波を予測できるくらい海を知っていなければならなくて、すいません」

「子供の頃から練習して私も乗れたの最近なんです」

「訓練すれば10年程で」

空島では子供の頃にウェイバーを乗る練習を必ずするそうだ。空島での生活には欠かせ無いもの。10年もかかるのなら、持って帰ったとしても誰も乗ることなどーーーー

「おーい!!」

「乗っとる!!!!!!」

ナミが、ウェイバーを簡単に乗りこなしているのを見てウソップの目が飛び出る。10年かかると聞いた直後に乗れている人がいるのだ。
ナミは人より優れた航海術を持っており、突き上げる海流(ノップアップストリーム)も攻略したのだ。波を読むことは得意なので、あとはバランス感覚だけできれば乗れてしまう。

「何と!すごいですね!信じられません」

「んナミさーん!君がサイコー!」

パガヤも驚きの声をあげ、サンジはメロメロになっていた。

「確かにコツがいるわね。これは。デリケートであんたには無理よルフィ!」

「おいナミ!!おっさん家にすぐ行くから降りろ!アホー!!早く降りろアーホー!!」

「当たんな」

「先行ってて!おじさんもう少し遊んでていい!?」

「ええ、どうぞ。気をつけて下さい!」

パガヤの許可を得て、ナミはもう少しウェイバーを楽しむことにする。ルフィは悔しいのか、羨ましそうな顔を浮かべている。
ナミ以外でコニスの家に向かうことになった。雲でできた階段を登っていく。

「おい、向こうに何か工事現場みてェなのがあるぞ!」

ウソップが見つけたのは、足場を組み白い雲を切る人々。一見、工事現場の様にしか見えない。

「雲切場の事でしょうか?」

「雲切場?石切場じゃなくてか?」

「これから加工する為の雲を切り出す現場です。」

雲が切れるという概念がないウソップ達は驚いた表情を浮かべた。青海の常識は何もかも通用し無いことを実感する。

「あなた方は白海から白々海へ“ミルキーロード“を通ってきたのでは!?」

「もしかして、エビに引きずられて来たあのきし麺みてェな海路の事か」

パガヤの問いに、サンジは帯のような雲の道をきし麺と例える。これは職業柄食べ物を連想させてしまう無意識な行動だったが分かりやすい。

「あれは人工的な雲の運河です。元からある自然の雲は2種類あり、あなた方が船で進んできたのは“海雲“そしてそこにフカフカと浮く歩ける雲それが“島雲“です」

パガヤの説明を素直に聞いているのはロビンとサンジくらいだった。ゾロは聞いているフリはしているが、恐らく頭に入っていない。
ルフィはフミの手を取って、階段ではなくフカフカの島雲の上を進んでいるし、チョッパーは転がりながら進んでいる。

ロビンは雲の常識を知っているからこそ、常識外な雲の仕組みに興味が湧いた。パガヤに質問を繰り返す。
普通の雲とは違い、雲を作り出す凝結核が異なる。青海では海楼石が存在するように、それに含まれる成分、空島では“パイロブロイン“と呼ばれているものが、角質の粒子で火山によって空に運ばれ、水分を得た時、その密度の差で“海雲“と“島雲“が形成される。
このパガヤの話を理解できたのは、ロビンだけであった。ルフィとウソップは得意げに分かったと言い張っているが虚勢だ。

「先ほど言いました“ミルキーロード“やビーチにあった雲でできたイスなど、あれらは雲切場で切り出した“島雲“をさらに圧縮するなどして密度を変えることで人が作り出した雲なのです。」

パガヤが説明を終えたタイミングで、足を止めた。家に着いたらしい。
2階建ての一軒家を指差し、パガヤは一味を案内する。

「いいとこにあるなー!見晴らしが最高だ!」

「ナミのウェイパーも見えるぞ!」

海岸から階段を登った先、そこにパガヤとコニスの家がある。街を見下ろすと、海に浮かぶナミが小さく見えた。
ナミを除く一味はパガヤを先頭に、家へと足を踏み入れる。

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