ドラム王国(004)

次の日、ルフィとゾロとフミの三人はナミの看病をしていた。その他はワポルに食べられた船の修理と島探しだった。
昼頃。島が見つかったと声が聞こえる。その声にルフィは敏感に反応した。

「おいナミ!よかったな!島だってよ、病気治るぞ!」

その目は輝いていて、島が気になって仕方ないらしい。カタカタカタカタと落ち着きのないルフィを見かねて、ゾロは行って来いよとため息混じりに呟いた。ルフィは急いで外の様子を見に走っていく。
その背中を見つめるフミの顔をゾロは覗き込んだ。顔色が少し悪かったからだ。

「フミは行かねェのか」

「………うん」

「フミ?」

「朝から頭がすごく痛くて………」

「まさか、フミに…」

「ううん、身体は熱くないの…」

ゾロはフミの額に触れてみる。本当に熱はなく、逆に冷たいくらいだった。ナミの何かしらがフミにも移ったのでは、と心配になったが違うようだ。
フミの頭はガンガンと痛み出し、こめかみを押さえる。

「寒いからかな……」

「きっとそうだ、念のためフミも医者に診てもらえ。」

「うん、そうする。」

この時はすぐに治ると思っていた頭痛が、重い病気の一角だったとはゾロもフミも考えてすらいなかった。


島に近づくにつれて、どんどん気温も低くなっていく。チラチラと窓の外を見つめるゾロにフミは少し笑った。

「ゾロさんも行ってきて?本当は見たくてうずうずしてるでしょう?」

「………よくわかったな、ここは頼んだ。お前も安静にしてろよ。」

「うん。」

まだ頭痛が治まらないフミはナミが眠っているベッドのそばの椅子に腰掛け、痛さに耐えた。まだ誰にも話してはいなかったが、ここ最近頭痛が多い。風邪の助長かもしれないと心配になった。熱はないので、ナミのものとは違う確信だけはどこかにあった。
ダッダッダッと激しい足音が近付いてきて勢いよく扉が開く。扉の方に視線を向けると息が荒いルフィがゆっくりと近付いてくる。そしてフミの頬を掴むと額同士を合わせた。

「熱は無ェのか。ゾロがフミも頭が痛いって言うから……」

突然の出来事にフミは目をパチクリさせる。

「大丈夫。ありがとう。島はどうだった?」

「上陸することになった!」

そう言ってルフィはナミを無理やり担ぎ上げようとする。

「ま、待って!ルフィ!」

フミはナミの汗を拭いてコートを着せる。薄着のまま外に出れば凍死してしまうかもしれない。
そしてルフィの背中では危険なため、後からタイミングよくやって来たサンジの背中に乗せる。熱に侵されたナミと一味は極寒な地へと足を踏み入れた。



***


フミが外に出た時、ルフィたちは既に島民の者と話した後だったようだ。

「この国に名前はまだない。」

医者の元へ案内してくれるという男はこの島について話しながら歩いた。すぐに着いたのは"ビックホーン"という村。

「ひとまずウチに来たまえ。」

そういう彼はドラム島民間護衛団団長のドルトンという男だ。

「我々の手荒な歓迎を許してくれ。」

手荒な歓迎、をフミとナミは体験していない。
二人が部屋にいる間、上陸しようとする麦わらの一味を警戒して銃口を向けたのだとか。
海賊船が近付いてきて発泡するな、というのも可笑しな話だが、ルフィとビビのナミへの想いを見たドルトンは信頼することを決めたようだった。

「一つ聞いていいかね…」

「え?」

「どうも私は君をどこかで見た様な気がする…」

ドルトンの質問にビビはドキリと肩が跳ねる。アラバスタの女王ということを言えないビビは少し目を泳がせて話題を探す。

「き、気のせいです…きっと。それより、"魔女"について教えて下さい」

上陸する前に、この島には医者は"魔女"一人しかいないと告げられていたのを思い出す。
と同時に、ピピッという音がした。ナミの脇に挟んでいた体温計なった音。ビビが確認するとそれは人のものではなかった。

「体温が…42度!?」

「3日前から熱は上がる一方で…」

「これ以上上がると死んでしまうぞ…」

「…ええ。だけど病気の原因も対処方法も私達にはわからなくて。」

「何でもいいから医者が要るんだ。その"魔女"ってのはどこにいんだよ!」

ドルトンは窓の外の雪で覆われた高い高い山に視線を向け、どこか申し訳なさそうに顔を歪めたのだ。

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