ジャヤ(042) 声の届かない所まで来ると、ウソップはボロボロになった船体を見回す。確実に、舟板が剥がれている箇所が増えている。 「あのオランウータンめっ!船をさらに破壊してくれやがってよォ!」 「気がつきゃいつの間にかボロボロだなこの船も…かえ時か?」 「勝手な事言ってんじゃねェぞ!てめェまで」 メリー号を変える、なんてこと頭にすら無かったウソップはゾロに一喝する。 「文句言っても仕方ねェよウソップ!ゴーイングメリー号もおれ達の大切な仲間なんだ。頑張っておれ達でよ!直してやろうぜ」 「ルフィ…!おめェって奴ァ……」 ルフィはやはり仲間想いだと感心した束瞬間、ルフィが手に持っていたカナヅチでメリー号の一部を破壊していた。 「あ」 「てめー!!!」 ショウジョウと同じくらいの大きなウソップの怒鳴り声が海に響いた。 それから、皆真面目に船体を修理する。勿論、女性陣は見ているだけだ。フミはチョッパーの傍に座っていた。それが気に入らないルフィはフミの名前を呼ぶ。 「ルフィ、頑張れ!」 怒っているフミは目も合わせず応援の言葉を投げた。もっと気に入らないルフィはゴムの腕を伸ばし、フミの手首を掴む。フミが声をあげる間もなく、ルフィの横に引き寄せられた。 「フミ…?」 ルフィの優しい声にフミは胸が痛む。 ただの自分の我儘で拗ねているだけだ。心が狭く、弱い自分自身に一番腹が立った。 「やっぱり、何か怒ってんのか?」 「………私は邪魔かもしれない」 「え?フミ?聞こえねェ」 「着いたわ。地図の場所」 あまりに小さすぎるフミの声を遮るように、ロビンの知らせの声が聞こえた。フミは割れに帰り、スッと立ち上がってルフィの傍から離れる。ルフィはその手を掴めず、目の前の島の迫力に度肝を抜かれた。 「す……」 「すげェ!!」 「あれがそいつの家なのか?」 「スッゲー金持ちなんじゃねェのか?」 巨大な城が目の前に立っていた。島に入ってすぐの位置にこんな城を作るのは馬鹿だとウソップは思ったが、よく目を凝らすと城では無かった。 「バーカ。よく見ろよ」 「夢見る男ねェ…少なくとも見栄っ張りではある様だな」 「?、なにが?」 言っている意味が分からないルフィ、ウソップ、チョッパーは城をよく見ようと上陸して見に行ってみる。 「げ!!ただの板!?」 「なにー!?」 「当の家は半分だけ…あとはベニア造りだ」 「ずいぶんとケチな男らしいな…」 「一体どんな夢を語って町を追われたの?」 嘘つきと名が広まる理由がこの城を見るだけで少し、分かったような気がした。ベニア板に絵を描いただけのその城は強風が吹けば倒れそうな薄さだ。横から見れば一目瞭然である。 「くわしくはわからないけど…このジャヤという島は莫大な黄金が眠っていると言ってるらしいわ。」 「黄金!?」 「どっかの海賊の埋蔵金かなにか!?」 黄金、というロビンの言葉に反応したのはお金と冒険が大好きな4人だった。 「さァ…どうかしら」 ロビンはそのノーランドの噂を話しているだけだ。本当に黄金が存在してるかなんて知る由もない。 お金に目がないナミはチョッパーに地面を掘らせた。その間にルフィが薄っぺらい城に近づく。フミもその後に続いた。昔からルフィの後ろを着いて行くのがフミの無意識の行動であった。そして、ルフィもフミが後ろから着いて来るのが普通だった。たとえ、今が喧嘩中でも。 「こんにちはー!おじゃまします!」 「お、お邪魔します」 「おめェらはイキナリかよ!」 城の扉を開けると、中は小さな部屋があった。シンプルな家具で統一された空間は男の一人暮らしだと分かる。 「ん?誰もいねェな……こんにちはー!」 「ばか、待てって!ヤベェ奴だったらどうすんだ!フミも早く出ろ!危ねェ!」 「おいみんなー留守だ!」 見た目は城だが、中身は小さな部屋で留守かどうかは一目でわかる。 「!、絵本…ずいぶん年期の入った本ね"うそつきノーランド"だって、あはは」 ナミが切り株の上に置いてあった絵本を見つけて、手に取った。そのタイトルはフミも聞き覚えがない。 「ほー。イカスタイトルだな題材がいいぜ」 「"うそつきノーランド"?へー、懐かしいな。ガキの頃よく読んだよ」 「知ってんの?サンジ君。でもこれ北の海(ノースブルー)の発行って書いてあるわよ」 「ああ。おれ生まれは北の海だからな。みんなにゃ言った事なかったか?」 「初耳だな。お前も東(イースト)だと思ってたよ」 「育ちはな。まァどうでもいいさ。こいつは北(ノース)では有名な話なんだ。童話とは言ってもこのノーランドって奴は昔実在したって話を聞いた事がある」 サンジは何故北の海で育ったのに、東の海のあのレストランで働いていたのだろう、とフミは少し疑問に思ったが口に出さないで置いた。 ナミがその絵本の1ページをめくる音がすると、皆その絵本に目を向ける。 prev next 戻る |