ジャヤ(041)

「さっそく変なのに出くわしちまったな」

船の前方、巨大樹が聳え立つ海賊船があった。

「オウオーウニーチャン!そっちでゴチャゴチャ言ってんじゃねーぞォ!フン!まったくどこの誰かと思ってハラハラしたぜ。」

ショウジョウ海賊団大園長(ボス)"海底探索王ショウジョウ"懸賞金3600万ベリー
巨体に緑色の長い髪はこれまで見てきた海賊の中でもユニークである。

「思い切った顔してんなー」

「何類だ?」

「人類だバカヤロー」

 人間というよりかは、サルやゴリラに近いとナミは心の中で悪態をついた。メリー号よりも倍近く大きな海賊船を一味は見上げる。

「おめーら海賊のようだな。知っとるか?七武海の一角あのクロコダイルが落ちたんだ。実力的に言ってそのイスはまさかしておれに回ってくんじゃねェかって、もーハラハラして待ってるおれだ」

「へー…お前七武海に入りてェのか」

「あ!?とにかくおれのすげェところはどういうとこかって言うと、生まれてこのかた25年。髪の毛を切った事がねェってとこだ。なァ、お前らびっくりしたか?」

「ばかみてェ」

ルフィの馬鹿正直な言葉にフミは笑いそうになるが、今が喧嘩中だと気が付きぐっと唇に力を込めた。そんなことに気付くはずもなく、ルフィはショウジョウを見つめる。

「うわっびっくりした。まったくお前の解答にはハラハラさせられるぜ。いーか、おれの怒りという名のトンネルを抜けるとそこは血の海でした。」

「どうでもいいけど。おれ達行きてェ場所があんだよどいてくれ!」

「あほたれェ!ここらの海はこのおれのナワバリだ!通りたきゃ通行料を置いてゆけ!」

「何だ"ナワバリ"ってマシラみてェな事言ってやがる」

「そんな事言ってたか?」

ウソップの言葉の中に“マシラ”という聞き覚えのある名前を聞いて、ショウジョウは眉を寄せる。

「何ィ!?マシラァ!?マシラがどうかしたか!?」

「ん?あいつならおれ達が蹴り飛ばしてやったんだけど、でも」

「け…蹴り飛ばした!?兄弟をよくもォ!ウォオオ!」

「おい。ちょっと待てって。蹴ったけどあいつまだ生きて」

「マシラの敵だァ!!音波!破壊の雄叫び(ハボック・ソナー)」

全く持って聞く耳を持たないショウジョウは、マイクのようなものを手に取る。

その瞬間、ウォオオオオオ!!!と大きな声というより、叫び声に近い、聞いていて不快な声をあげる。フミは思わず耳を塞ぐ。
バキバキッと音を立てるのは、大切なメリー号だった。その声は舟板をも壊してしまうらしい。

「船が……」

「ぎゃああああ!」

「大園長!その技を船の上で使っては…!」

「だめだ怒りで我を忘れてる!」

勿論、被害にあっているのはメリー号だけではない。当人が乗っている海賊船も影響を受けてしまう。船員が止めるも、ショウジョウは声をあげるのに必死だった。

「………で、何やってんだあいつら」

「さー」

「でもすげェな。声で船が壊れてくぞ」

「みんな!ボーッと見てないで今の内に先へ進むのよ」

「お!ナミがもう鬼じゃねェ」

「そりゃあれだけ発散すりゃな」

メリー号が壊れる前に、とナミが指示を出す。その間にもメリー号の舟板は剥がれている。ただでさえ、メリー号はボロボロだ。ルフィ達は急いで船を進める。

「全速前進!この声の届かない場所へ!」

そのルフィの声でさえショウジョウは聞こえていない。メリー号が離れていくのを船員は見つめるしかなかった。

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