ジャヤ(040)

「ル、ルフィ!ゾロ!!」

メリー号からウソップ、チョッパー、サンジ、フミが顔を出す。帰ってきたルフィとゾロの二人の身体はボロボロで顔には殴られた痕があり、血も出ている。強いあの二人が怪我なんて考えられなかった。

「お前ら何だそのケガ!何があったんだ」

「ナミさん!ナミさんは無事か!?」

「ああ…い……い…医者ァ!!」

「だからおめェが見ろよ!」

ナミは無傷で済んでいたが、サンジが慌てて駆け寄る。フミはルフィが心配で堪らないがさっきの出来事があったためどういう顔をしていいのかわからないでいた。
三人はメリー号へと登り、チョッパーに治療してもらう。

「で?大怪獣何モゲラと戦ってきたんだ?」

「海賊だ。いいんだ、もう済んだから」

「あァ」

「あんた達が済んだって私の気は済んでないのよ」

明らかにナミが不機嫌なことは全員気がついていたが誰も触れなかった。もし何か余計な事を言ってしまえば全て自分に怒りの矛先が向いてしまうような気がしたからだ。

「何よ!男なら売られたケンカは全部買ってブッ飛ばしちゃえばいいのよ!いいえ!こんなハラ立つ町いっそ町ごと吹き飛ばしちゃえばいいんだわ!」

「お前最初何て言った…」

島に上陸した時ナミは二人に喧嘩をしないように約束させた。その言葉を思い出し、ゾロが呆れたように言う。

「過去は過去よ!古い話してんじゃないわよ!ハッ倒すわよあんた!」

「おい何で無傷のあいつがあんなに荒れてんだ?」

「さあわかんねえ」

島で何が起きたのか、船に残っていた四人はわからなかったがこの状況を見れば大体わかった。
喧嘩をルフィとゾロは買わなかったこと、そしてナミを怒らせる何かが起きたこと。ナミに説明してと頼めばきっと怒り狂って鉄拳を落とされることは容易に想像できた。だから四人は何も聞かず黙ってチョッパーの治療を見守る。

治療を終えたルフィは少し距離を空けて自分を見ているフミの存在に目を向けた。いつもなら心配そうに顔を見て、可愛く抱きついてくるのに、今日はそれがない。

「フミ?」

ルフィが名前を呼ぶとフミは少し迷った後、顔を背けた。帰れと睨まれたことに怒っているのだが、ルフィは何故フミがそんな態度をとるのかわかっていない。

「フミー」

ルフィは手を広げてもう一度名前を呼んだ。ここに来い、そう言いたいことはフミもわかっている。けれど足が動かなかった。

「なんかフミも機嫌悪い…」

「あー…それは…」

ウソップが説明しようとしたが、側にいたフミが袖をつかんで止めさせた。フミはルフィが自分で気付いて、そして何故睨んで帰させたのかを説明してもらいたいのだった。ウソップは黙って頷き、フミはごめんねと謝る。
そんな二人のことは知らずにルフィは悶々と悩んでいた。どうして、無視されるのか。

「そうだ!空島の話は聞けたのか?」

「そ、ら、じ、ま…!?」

チョッパーの質問にナミの形相が鬼になっていく。

「知らないわよ。もう。空島って名前を出しただけで店中が大爆笑…私そんなに面白い事言った!?何なの一体っ!」

ナミが怒っている原因は空島のことを笑われたことらしい。笑われたにも関わらずルフィとゾロは喧嘩を買わなかった。そのことも気に食わないのだろう。
ナミではなく、目の前にいる鬼に怯えるウソップとチョッパーは死んだフリをした。

「ずいぶん荒れてどうしたの?」

「ああっ!お帰りロビンちゃん!お風呂になさる?お風呂になさる?」

ロビンの声にいち早く反応したサンジは嬉しそうに駆け寄った。その光景を静かにゾロは鼻で笑う。

「ロビンどっか行ってたのか」

「ええ。服の調達と……空島への情報でしょ?」

「そうよあんたよ!ロビン!あんたが空島がどうとか言い出すからこんな事になったのよ!もし在りもしなかったら海のモクズにしてやるわ!」

「あ…今はそっとしていてやってくれ…って言うより近づかねェ方がいいぞ」

怒り狂うナミにロビンは苦笑いを浮かべた。何が起こったかは知らないが大変だったんだろう、と察する。

「お!宝の地図だ!」

「ただの地図だろ?どこだ?コリャ」

「この島よ」

ジャヤの地図を広げてロビン、ルフィ、ウソップは覗き込む。西と東で二つの半島に分かれていた。

「左にある町の絵が現在地"モックタウン"そして対岸、東にバツ印があるでしょう?そこにジャヤのはみ出し者が住んでるらしいわ。」

「「はみ出し者?」」

「名前は"モンブラン・クリケット"夢を語りこの町を追われた男。話が合うんじゃない?」

夢を語り追われる、また地雷を踏んだかと恐る恐るナミを見たウソップはフゥと息をついた。運良くそこまで気にしていないようだった。
そのモンブラン・クリケットに会うためにメリー号は東の海岸を目指す。

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