ジャヤ(039)

「うっは〜!いいな〜!いい感じの町が見えるぞ!」

「ちょっとリゾートっぽいんじゃねェのか、おいおい!」

「リゾート!?」

「急げメリー!」

「ホント、ちょっとゆっくりして行きたい気分!」

目の前に迫っている島に一味は釘付けだった。暖かい陽気にリゾートなんて最高の組み合わせにワクワクが止まらない。記録(ログ)が貯まるのが遅ければゆっくりしていけるが、そう簡単にいくものだろうか。

「しかし港に並んでる船が全部海賊船っぽく見えるのは気のせいか?」

「も…もーウソップったら!海賊船が港に堂々と並ぶわけないじゃない?」

「ハハハ!だ、だよなー」

海賊船っぽいではなく、沢山の海賊船が並んでいる。ナミ、ウソップ、チョッパー、フミの顔色が青くなっていった。

『殺しだァ!!』

どこからかそんな声が聞こえ、ウソップなんてもう失神してしまいそうだ。

「「「何なんだろうこの町はァ〜〜!」」」

ジャヤという島の西にある町。そこは夢を見ない無法者達が集まる政府介せぬ無法地帯。人が傷つけ合い歌い笑う町。そこは嘲りの町『モックタウン』
危険な町を見て、ビビりの4人は足が震えた。ゾロとルフィは船から下り、空島の情報を聞き出すために町の方へ歩いて行くがナミは不安しかなかった。

「……無理よあの二人がトラブルを起こさないわけがない!」

「…まあ。ただでさえヤバそうな町だ…限りなく不可能に近いな」

「それじゃダメなのよっ!」

「あっナミ!」

「行っちゃった……」

「まァ大丈夫だろ。あの二人がいりゃ…」

ナミが二人を追っていく姿をウソップとチョッパーは見つめるがフミは違った。立ち上がり、船を降りていく。

「ちょ、フミ!?」

「私も行く!」

くまのぬいぐるみのブローチ(バリア機能つき)を握りしめると二人を追うナミを追っていった。

「フミ………」

チョッパーは心配でたまらないが、足が竦んで動かない。

「何だよナミさんとフミちゃんが行くんならおれも行くぞ」

「お前は行くなァ!お前まで行っちまったらこ、この船がも、もし襲われ…」

「行かないでくれよォ!」

サンジが行ってしまわないようにウソップとチョッパーは必死に身体に抱きついた。レディならいいが男に抱きしめられて嬉しいわけもなく、サンジは振りほどく。

「……わ、わかったよ…離せ!ん?ロビンちゃんは……?」

「あれ?いない…」

船には三人のみ。いつの間にかあの美女の姿が消えてしまっていた。




***




「ナミちゃんっ……」

「フミ!?」

腕を掴まれ振り返るとフミが息を乱しながら縋り付いている姿を見た。

「追って来たの?」

「心配でじっとできなくて……」

「うん、一緒に行きましょう」

ナミはフミの小さな手を握るとゆっくり走って行く。ルフィの赤い背中はもうそこまで近づいていた。
もうすぐ追いつく、そう思った時ルフィが突然振り返り二人の姿を捉えた。

「フミは来るな。」

ルフィの言葉にナミとフミは固まった。迫力のある言い方と、鋭い目つき。

「メリー号に帰れ。」

ゾロは何も言わずその光景を見つめ、ナミはルフィの頭を殴った。

「何言ってんのあんた。フミはあんたを心配して…」

「帰れ。」

フミはナミの手を離すと、何も言わず後ろを振り返り走った。涙で前が見えず転んでしまったがすぐに立ち上がって走る。遠ざかるフミの背中を見てナミはまたルフィの頭を殴った。

「どういう事?」

島に着く度にフミを連れて行きたいと駄々をこねるルフィが、どういう風の吹き回しだろうか。

「海賊船ばっかだったろ?そんなとこにフミを連れて行きたくねェ。砂漠の時体調も崩してたし」

「たまに男らしいところ見せるのよねぇ。フミの前だけ」

別にかっこつけたわけじゃねェと不貞腐れるルフィは一度だけフミが帰って行った方向をみて息をはいた。
一方メリー号に到着したフミはチョッパーに泣きついていた。

「もうルフィなんてきらーい!!」

「何があったんだ?」

「フミちゃーん!おれの胸に飛び込んで来て〜!」

サンジの方には見向きもせずフミはチョッパーの毛皮に顔を埋めたままだ。ウソップは優しく頭を撫でてあげていた。

「帰れって……睨まれた…」

「あのクッソゴム…おろす!!」

サンジは怒りで狂い、ルフィ達を追いかけようとしていたがウソップが慌てて止める。フミが泣き止むまでチョッパーは優しく抱きしめ続けた。

「……ごめん、チョッパーくん」

「落ち着いたか?」

「うん。」

「海賊が多い島だし、ルフィも心配だったんじゃねェか?」

ウソップの言葉にフミは首を横に振る。心配だったのならちゃんとそう言ってくれないとわからない。それに、今までのように「おれが守るから」と言ってほしかった。

(守られるのも嫌なくせにね……)

フミは自分の矛盾した気持ちに嫌気がさした。

「そうだ、今からメリー号の修理するんだ。チョッパーフミ、手伝ってくれ!」

「おう!いいぞ」

「うん!」

その場の空気を変えようと明るく笑いながら提案したウソップに二人は頷く。フミは考えるのをやめてウソップに板を渡した。

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