ジャヤ(038) 気候も安定し、ジャヤの気候海域に入ったとナミの言葉が聞こえた。チョッパーとフミの二人は倉庫の中にいる。 ぽかぽかとして気持ちがいいのに、フミは胃の辺りが気持ち悪かった。誰にも見つからないように診察するのはこれで何回目だろうか。 「チョッパーくん……砂漠のとき、あんなに息があがったのは悪感症のせい?」 小さな灯りに照らされているチョッパーの顔はどこか暗かった。 「そうだ。体力も低下するから。」 「私……みんなと冒険できなくなるのかな。」 「………っ、おれが……サポートするから大丈夫だ!」 「チョッパーくん………」 少しずつ、じわじわとフミの体が病に侵されていく。その恐怖で気が狂いそうになる夜もあるが、今のフミは明るかった。 「私、今を楽しむことにするね。」 「えっ」 「暗い顔してても笑顔でも何も変わらないなら、笑ってたほうがいいもん」 「……おう!おれ、ウソップに釣り誘われてるんだ!フミもするか?」 「する!!」 フミは薬を飲み終え、診察も問題なく終わり勢いよく倉庫を飛び出した。ジャヤまではあと少し、どんな島なんだろうとワクワクした。 二人は甲板で退屈そうに島を探すウソップに抱き付く。ウソップは驚いた後、笑った。 「お前らー!!」 「ウソップくんが追いかけてくるー!」 「逃げろー!!!」 「こらウソップ!!フミを追いかけるな!」 「ぎゃあああ!ルフィが追いかけてくる!!」 ルフィはウソップを追って、フミとチョッパーはウソップに追われて、ナミ達は呆れた様子で見守っていた。追いかけられる方も追いかける方も楽しそうに笑う。 「捕まえた!」 「きゃっ、」 捕まったのはフミ、捕まえたのはルフィ。いつの間にかルフィはフミを追っていたようだ。ウソップはチョッパーを追いかけ続けてる。 「はぁはぁ、ルフィはやいね!」 「フミそんなに体力なかったか?」 「………いつもと変わらないよ?」 フミはドキリとした。ルフィはこんなにも鋭い人間だったのか、と。鈍感そうに見えてフミのことになると鋭いのは愛の力なのか。 「あんまり、無茶すんな。」 「………砂漠のときのこと?」 フミを後ろから抱きしめるルフィはその小さな肩に顔を埋めて頷いた。フミの匂いがして抱きしめる手に力を込める。あの時のフミを思い出すと怖くなった。 「あんときはビビった。フミの顔、真っ青で苦しそうで………」 「ごめんね、ルフィ。」 フミは謝ることしかできなかった。心配かけてごめん、迷惑かけてごめん、本当の事を言えなくてごめん。すべて込めた謝罪だった。 その弱弱しい声に不安を感じたルフィはフミの耳元に近づいて愛を囁いた。「大好きだ」その言葉でフミは泣きそうになる。それは、ルフィの声が今にも泣きそうだったからだ。 幼い頃は毎日のように泣いていたルフィだったが、今では涙を流すことは少ない。エースに泣くなと怒られたからだ。最近では簡単なことで泣くなんてなくなったはずなのに、今は上を向いていないと溢れ出しそうだった。 「ルフィ。私も大好き。」 ああ、やめてくれ。ルフィの瞳から一筋の涙が零れ落ちた。 「ルフィ〜!フミ〜!島が見えたぞ!」 ウソップの声に二人はすぐに離れた。目を合わせ、二人とも瞳が潤っている。その様子がおかしくて二人で笑い合い手を絡めた。今は楽しい事を考えよう。ルフィ達が目指しているのは空島だ。夢の島だ。二人は手を繋いだまま、みんなが集まる船首の方へ歩いた。 *** 本編の4話の話です。 なんとなく気づき始めているルフィ。いつかは言わないといけない日が来る、その時をルフィも無意識に待っているんだと思います。 prev next 戻る |