アラバスタ(028)



「あああああ〜!ルフィが生きてるぞ〜〜!ビビもいる!」

チョッパーが大きく叫んだ。
アルバーナ宮殿へと辿り着いたチョッパー、ウソップ、サンジ、そしてフミの目の前には、宮殿内にいるクロコダイルの元へ飛んで行こうとするルフィ、そしてビビがいた。
そのルフィの姿にフミは安堵し、泣いた。それはウソップも同じみたいで、泣き叫んでいる。死んだと聞いていた分、腕を伸ばす姿にひどく感動した。

「オ〜〜ビビちゃん、なんてこった!こんなに傷ついて」

「ウソップ〜〜っ!!」

ガンッと鈍い音がして、ウソップはその場に倒れた。後ろを振り返るとナミが怒りの形相でウソップに殴りかかっている。そのナミの後ろからゾロが歩いて来ていた。全員怪我はしているが、生きている。

「誰が宴会の小道具作ってって頼んだのよ!」

ウソップの作った新しい武器はユーモアが溢れすぎていたようで、ナミを怒らさせてしまった。
そこで腕を伸ばし終えたルフィがクルー達を見渡す。このままクロコダイルの方へ飛んで行く気だ。

「悪ィみんな。おれあいつにいっぺん負けちまったんだ。だからもう負けねェ!あとよろしく」

「さっさと行ってこい」

「お前で勝てなきゃ誰が勝てるんだ!」

「ルフィ!!勝って!!」

ルフィの言葉にゾロは笑い、ウソップは勇気付け、フミは叫んだ。

「終わりにするぞ、全部!」

船長の言葉に士気が高まり“おォし!”と返事をする。私にはまだこんなに仲間がいる、とビビは涙を流した。
ルフィは声をあげながら、宮殿へとゴムの力を使って飛んで行った。
そして残されたメンバーがやること、それは反乱が起きている広場を狙っているらしい砲撃手を探して止めること。砲撃まであと10分しかなかった。恐らく砲撃手はこの広場の近くにいるらしい。

「何でだよそんな事したら、その砲撃手ごとドカーンと」

「そういう男だって事ね。クロコダイルは」

「最低な人…」

「味方が死んでもいいのか!?」

ウソップ、ナミ、フミ、チョッパーが会話する中、ビビを背後から狙う影が一人。
その一人をゾロとサンジは一瞬でぶっ飛ばした。

「見つけたぜ、ビビ王女ォ!」

「おめェを殺せばどこまで昇格できる事やら」

「ビリオンズ!」

B.Wの手下達が大勢一味を取り囲んでいる。

「10分引く何秒だ」

「オイオイ話してる時間ももったいねェぞ」

「「2秒だ」」

こういう時だけ息がぴったりなサンジとゾロはビリオンズ達を倒していく。その間に他のメンバーは散り散りになって砲撃手を探す事になった。

フミはというと、チョッパーと共に走っていたのだが体力が底をついていた。足もガクガクと震え、頭もガンガンと痛い。それでもフミは歩こうとするが、とうとうガクンと膝が折れてしまい地面に倒れる。

「フミ!」

「……ハァッ……ゴホッ…!!」

フミが咳き込んだと同時に血が口から飛び出す。

「フミ、これ以上はほんとに危険だ」

悪感症は発見した時点で絶対安静が必要とされる。本当は余命までベッドの中で薬を飲み続けなければならない。

「で、も………ゲホッ…!」

「悪い、フミ。」

チョッパーはフミの項を力強く叩いた。すると一瞬でフミは意識を失う。こうするしか他に方法が思いつかなかった。

反乱に巻き込まれないように、物陰にフミを隠したチョッパーは急いで砲撃手を探し出す。
するとウソップが見つけたのか空に赤色の煙が上がる。そこへ慌てて駆けつけると大きな時計台があった。そこに砲撃手はいるらしい。
ナミの考えで、何とか時計台の上へと辿り着いたビビだったがその砲弾は時限式でどうやっても爆発は止めることが出来ない状況だった。

そこで、ペルが砲弾を抱えて宙を舞い、空中で爆破した。ペルは国のためにビビのためにこのみちを選んだのである。

ペルの死に悲しんでいる暇などなく、ビビは立ち上がり時計台から広場を見下ろすが、まだ反乱は止まらなかった。

「戦いをやめて下さい!戦いを!やめて下さい!戦いを!!やめて下さい!!……戦いをやめて下さい!!」

ビビは時計台の上から叫び続ける。それでも反乱は止まらない中、宮殿の中からクロコダイルが飛び出してくるのが見える。ルフィが、勝ったのだ。敵はいなくなったのに、反乱を続ける民達にビビは涙が止まらない。

「戦いを…!!やめて下さい!!」

ポツ……ポツ

空から雨が降り始めた。次第に強くなっていく。

ザァァアアア…

突然の雨に、みな手を止めて空を見上げる。そしてやっと、ビビの声が届いた。広場の民達が時計台を見上げ、ビビを見る。

「今、降っている雨は昔の様にまた降ります。悪夢は全て…終わりましたから!」

ビビの声は全島民に届いた……それは声だけであった。心にまでは届かない。今まで国王軍がしてきたことを見ていたと反乱軍達は主張する。

もう、ビビの力では止めることができないのか、そう思った時死んだと思っていた人物が子供を連れて広場にやってきた。

「イガラム!!」

ビビの身代わりとなって消息不明になっていたイガラムが生きていたのだ。そしてイガラムが連れて来た子供は国王軍に撃たれたはずだったのだが、その子の口からあれは国王軍のニセモノだったんだと告げられる。

この戦いは最初から仕組まれていたのだ、と反乱軍のリーダー"コーザ"が呟いた。

「この国に起きた事の全てを…私から説明しよう。全員武器を捨てなさい」

イガラムの言葉に、広場にいた全員が武器を捨て戦いは終わる。

その光景を時計台の上から見ていたビビは慌てて下に降りて麦わらの一味を探すが、広場には見当たらない。


ナミ、サンジ、ゾロ、チョッパー、ウソップはルフィがクロコダイルと戦闘をした場所へと向かっていた。

「フミは?」

「疲れがたまってたみたいで気を失ったんだ。人気のないところで寝てるよ」

「お前……レディをそんな場所に置いてきたのか……」

「仕方なかったんだよ、もし乱闘に巻き込まれたら危険だし」

チョッパーの判断は正しかった。サンジはこれ以上何も言わず足だけを動かす。

すると前からルフィを背負った男が歩いてくるのが見えた。

「………君たちは?」

「…………アァ、あんたのその背中のやつ、運んでくれてありがとう。ウチのなんだ引き取るよ」

サンジは男の背中で気を失うルフィを指差した。

「では…君らかね、ビビをこの国まで連れてきてくれた海賊達とは」

「ア?おっさん誰だ?」

中々ルフィを渡さないその男に少し苛立ちを感じるサンジだったが、ビビの登場に目の色を変える。ビビがその男を"パパ"と呼んだからだ。

「パ、パパ!?ビビちゃんのお父様!?」

「あんた国王か」

国王は頷き、ルフィを地面に下ろしてその寝顔を見つめた。

「一度は死ぬと覚悟したが彼に救われたのだ。クロコダイルと戦ったその体で人2人かかえて地上へ飛び出した…信じ難い力だ」

激しい戦闘が嘘だったかのように安らかに眠ってはいるが、身体は血だらけだ。

「それよりビビ、早く行けよ」

「え?」

「広場へ戻れ」

ゾロは家の壁に背中を預け、座りながらビビに言った。せっかく止まった反乱に王や王女の言葉ナシじゃシマらないからだ。

ビビは国のために命を懸けてくれた麦わらの一見の事を話そうと思ったが、彼らは海賊だ国に関わる気はなかった。

ビビとその父は広場へと向かう為に一味に背中を向け、歩き出す。その背中が小さくなった頃、ドサッという音を立てて一味全員が倒れた。緊張の糸がやっと、切れたのだ。

そして、国王の

「戦った相手が誰であろうとも戦いは起こり、今終わったのだ!過去を無きものになどできはしない!この戦争の上に立ち、生きてみせよ!アラバスタ王国よ!!」

一世一代の叫びが広場中にいる国民達の心へと響いた。


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