ドラム王国(002)

一方、甲板に出たナミとフミ。空は快晴、特に気候に変化はなく航海士が不在の間はゾロが進路を見ている。肩を支えながら歩いてくれるフミにナミは精一杯の笑顔を向けるが、少し苦しそうだ。

「フミ、ありがとう。」

「ナミちゃん、この熱は普通じゃない」

「大丈夫よ、今は一刻も………ってゾロはどこ!!」

突然怒り出したナミにフミは困惑するが、急いで進路を見ていたゾロに近づく。

「もうっ、あんた一体何を見てたの!?」

「何って…船はまっすぐ進んでたぞ。」

「ええ、直角にまっすぐね!この指針をちゃんと見てよ!」

「そんなもん見なくてもあの1番でかい雲を目指して…」

「雲は動くし形も変わるでしょう!?」

頭痛い、と嘆くナミはどんどん熱が上がっているような気がした。そんなナミを心配したのか、ゾロは声をかける。

「だからおれに任せて寝てろって」

「あんたに任せておけないからここに来たのよ!!」

もうゾロに進路を任せるのはやめようと心に決めたナミは空を見上げた。白い雲はゆっくりとした動きで漂っている。

「空気が……変わった…」

「空気?」

「ずっと変わらねェ晴天だぞ」

「いいから…みんなを呼んで。」

ゾロがみんなを呼び、ビビ以外が甲板に集まる。ナミが言うには真正面から大きな風がくるようで、今すぐ舵を南へいっぱいとらなければならない。
ルフィはナミへ近づき、ペタッと手を額に当てる。その行動にフミの胸はチクリと痛んだが、この状況でも嫉妬する自分に少しだけ腹が立った。

「あちい!あちいぞ!お前やっぱ船泊めて医者に行こう」

「余計なことしないでよ!これが私の平熱なの、バカやってないでロープ引いて!」

「ナミさんそりゃ、ビビちゃんのためだってのァわかるけどよ、あんまり無理すっと……」

「平気だって言ってるでしょ」

「ナミちゃん、これ飲んで」

ゼェハァと息が上がるナミにフミは一杯の水を差し出す。大量の汗で脱水症状になったら大変だ。
声を荒げる度に、ナミは辛そうな表情をしている。

「ハァ……ありがとう」

ナミの弱々しい笑顔にフミは胸が痛んだ。

「みんなにお願いがあるの」

舵をとった後、ビビが女部屋から出てきて声をかける。

「船に乗せてもらっておいて…こんなこと言うのも何だけど、今私の国は大変な事態に陥っていて、とにかく先を急ぎたい。一刻の猶予も許されない。だからこれから船を"最高速度"でアラバスタ王国へ進めてほしいの!」

ナミも助けたいしビビも助けたい、その想いで一味は複雑な気分だった。押し黙る一味にビビは言葉を続ける。

「…だったらすぐに医者のいる島を探しましょう。一刻も早くナミさんの病気を治して、そしてアラバスタへ!それがこの船の"最高速度"でしょう!?」

頼もしいアラバスタ王女の言葉に一味は笑顔を浮かべた。

「そおーさっ!それ以上のスピードは出ねェ!」

ルフィは満面の笑みで言う。

「いいのか?お前は王女として国民100万人の心配をするべきだろ。」

「そうよ!だから早くナミさんの病気を治さなきゃ!」

「ビビちゃんかっこいい…」

「よく言ったビビちゃん!ホレ直したぜおれァ!」

「いい度胸だ…」

フミ、サンジ、ゾロの言葉にビビの曇っていた表情が笑顔になった。

「ごめんなさい気を遣わせて、ムリしないでナミさん!」

「……悪い…ビビ…やっぱ私…ちょっとやばいみたい」

ビビの声を聞き、安心したナミは今にも倒れてしまいそうだ。その肩をフミは支える。さっき触れた時よりも熱い気がしてフミから変な汗が垂れた。
その時、ルフィの叫び声が聞こえる。

「オオ!なんだありゃああ!」

船の何百倍もの大きさのサイクロンが、さっきまでメリー号が進んでいた方角に現れた。もしナミの指示がなく、真っ直ぐ進んでいたとしたら今頃直撃だっただろう。ビビはナミの航海士としての実力に驚いた。

「よっしゃそれじゃ、急ごうか!」

「このまま南へ!医者探しに行くぞ!」

「うおおおおっ!」

倒れそうなナミをビビと二人で支えながら、フミは大きく腕を上げた。

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