アラバスタ(022)

「クロコダイルのいる"レインベース"というオアシスは今いる"ユバ"から北へ真っ直ぐ。まる1日砂漠を歩くわ。」

「そこには水はあるのかな」

「ええ、ここは平気。国の反乱とはほとんど無縁のギャンブルの町よ。」

「いやーん!ギャンブル!?」

"ギャンブル"という単語にナミの目の色が変わった。同じアラバスタでも呑気な町もあるもんだな、とサンジは正直な感想を漏らした。

「私そろそろマツゲくんから下りるね。」

「何言ってるのフミ!また倒れるかもしれねェんだぞ!」

チョッパーはフミを心配して声をかけるが、首を横に振った。

「私だって頑張る。海賊だもん。」

「でも、無理はしないでねフミ。ルフィの隣にずっといなさいよ?」

「うん、ありがとうナミちゃん。」

フミはずっと乗り続けていたラクダのマツゲから下りて、顎を優しく撫でた。するとマツゲは鳴き声を出した。

「"もっと乗っててもよかったのに、可愛いし"って言ってるぞ」

「なんだこのエロラクダ。フミ、こっち来い。」

ルフィはフミの肩を掴んで引き寄せた。マツゲは悲しそうな顔をしたが、次に後ろに乗ったビビにメロメロだ。フミはルフィの隣に並んで満足気の様子。

「手は暑いけど、袖…持ってていい?」

ルフィが頷く前にフミは袖を握っていた。その行動が可愛くて抱きしめようかと思ったが、また暑さでフミが倒れては危険だとグッと抑えた。

「ルフィさん。」

「ん?」

「ありがとう。」

ビビはニコリと笑う。

「私じゃとてもこんな決断下せなかった…」

「そォか?………メシ食わせろよ。」

「え?」

「クロコダイルをブッ飛ばしたら死ぬほどメシ食わせろ。」

「うん、約束する!」

海賊だったらお金や宝石と言いそうだが、ルフィは"メシ"と"冒険"が何よりも最優先だった。そんなルフィだからこそビビも心を開けたのかもしれない。

そして歩き続けること丸1日、"レインベース"が見えて全員カラカラの喉から音が鳴った。やっと水が飲めることに喜んだ。

「よーし!クロコダイルをブッ飛ばすぞ!!」

「みず〜〜〜!!!」

「うるせえなァ、お前ら」

うるさいと言いつつもゾロも喉がカラカラで嬉しさが顔から滲み出ている。

「…そうだウソップ。頼んどいたあれできてる?」

「オオ…あれかできてるぜ。すげェのが」

そしてウソップは何やら変な棒を取り出してナミに手渡した。

「見ろ、これがお前の新しい武器。"クリマ・タクト"だ!」

「クリマ・タクト?」

「そう一見、前とは変わらねェただの棒だが全然違う。3つの棒の組み方でなんと攻撃が変わるんだ。」

かっこいい武器の登場に女であるナミもワクワクした。ウソップに一通り使い方を聞いて、早くこれを使ってみたくて仕方がなかった。

「フミ、ちょっとそのクマのぬいぐるみ貸してくれ。」

「え?うん、どうぞ」

ウソップはフミが抱きかかえていたぬいぐるみを受け取ると、それに巻かれていたリボンに何かを取り付けた。

「真っ赤なブローチ……?」

「おれからのプレゼントだ。しかもそれはただのブローチじゃねェ、真ん中長押ししてみろ。」

ウソップは早く押してほしいのかウズウズとしている。フミが恐る恐るブリーチを押してみるとフミは赤い何かに包まれた。

「これはいわゆる"バリア"だ。」

「バリア……?」

「気圧とか色々いじくったら出来るんだが、この説明はいらねェだろ。つまりどんな攻撃からも守られるってわけだ。」

何の攻撃手段を持っていないフミを見ていたウソップが思いついた守りの武器だった。ナミのクリマ・タクトを作っているときに平行して作っていたもので、いくらルフィは守ると言い張っていてもこれから守れない場面は沢山出てくるだろうとウソップは考えていた。

「だが、ずっと使えるわけじゃねェ。長押ししている間だけで、その時間は2分。それ以降は15分待たねェと使えない。」

「すごい!!すごいよウソップくん!ありがとう!!!」

フミの満面の笑みにウソップは作ってよかったと心の底から思った。手先が器用だと昔から褒められてはいたが、こんなに嬉しいのは久しぶりだった。

「このウソップ様にかかれば、容易いことだ!」

「お前ら何話してんだ?」

「ルフィ、ウソップくんからプレゼント貰ったの!」

「プレゼントォ!?」

「バカ、ルフィ!勘違いすんなよ!?やめろ、その目!怖ェよ!!」

フミの命を守るためのプレゼントなのだが、聞く耳を持たないルフィは喉の渇きなど忘れてウソップを追いかけまわした。

そして一味は夢の町"レインベース"へと辿り着いた。

「あいつらに任せて大丈夫かな」

「お使いくらいできるでしょ、平気よ。」

「そうかね…どうせまたトラブル背負って帰ってくんじゃねェのか?準備運動でもしといた方がいいぜ」

水のお使いを頼んだルフィとウソップの体を心配する人はいない、そのあとの自分達の身を心配していた。チョッパーがトイレに行ったその時、騒ぎ声が聞こえた。香水で有名な"ナノハナ"でも一度聞いたこの騒ぎ声。ナノハナの時はルフィが海兵に追いかけられていた。今回は……ルフィとウソップが海兵に追いかけられている。

「ウソでしょう!?で、何でこっちへ逃げてくんのよ!」

「ねぇ、トニー君がまだ来てないわ!」

「放っとけ、てめェで何とかするさ!」

慌てて逃げる麦わらの一味、でもこれだけ騒げばB.Wに見つかってしまうかもしれない。でもそんな心配はいらなかった。もう既にバレているからだ。

「じゃ、このまま行こう!」

「え?」

「クロコダイルのとこだビビ!」

「うん、あそこに!ワニの屋根の建物が見えるでしょ?あれがクロコダイルの経営するカジノ"レインディナーズ"」

走っていく先を見上げるとワニの乗ったピラミッド型の建物が堂々と立っている。後ろから追って来る海兵の数はナノハナの時より多い気がした。

「散った方がよさそうだ。」

「そうだな」

「よし、じゃあ後で!ワニの家で会おう!」

ルフィはケムリンことスモーカーを引き付けて、ゾロとビビとフミの三人、そしてサンジとナミとウソップで別れた。フミはルフィのことが気になったが、強さを信じることに決めた。

「二人で先に行け!」

ゾロは海兵たちを引き付けてくれるようで、ビビはフミの手を掴んで走り出した。

「大丈夫かしら、Mr.ブシドー」
「ゾロならきっと大丈夫だよ。」

二人は後ろを振り返り、緑の頭の背中を見つめた後"レインディナーズ"に向かって走った。

prev next
戻る
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -