アラバスタ(019) じりじりと日差しが照り付ける。棒を使ってなんとか体を支えて歩くルフィは"アー"と声をあげる。 「あんまりアーアー言わないでよ、ルフィ。余計ダレちゃうじゃない。」 「アー…焼ける…汗も出ねェ……」 毛皮がある分、人より暑いチョッパーは板に横になってそれをゾロが引きずっていた。 ふとチョッパーはフミの様子が気になり、顔だけ起こした。黙ったまま下を向いて歩くフミはくまのぬいぐるみを持つ手にもだんだん力が入らなくなっていた。どこを見回しても砂があるだけで、景色にも飽きていた。 「はぁはぁっ……」 「フミ?大丈夫か?」 「だ、いじょうぶ…はぁっ」 「大丈夫じゃねェだろ。」 ルフィはフミの頭に麦わら帽子をかぶせて、背中を優しく撫でる。フミの顔色は悪く、暑いはずなのに青い。視界もクラクラして頭はガンガンとうるさく鳴っているみたいに痛い。 「チョッパー!!!フミが!」 チョッパーは暑さなど忘れて慌ててフミの元へ走る。急に軽くなって驚いて振り返ったゾロも駆けつけて来た。 「ルフィ!水をフミに飲ませてやってくれ。」 フミを横にして、頭はルフィの膝の上へと乗せる。水を少しずつ飲ませ、チョッパーは目を診たり、聴診器を当てたりする。騒ぎに気付いた他の一味も慌てて引き返してくる。 「フミ、どこが痛いとかあるか?」 「頭が………痛いの……」 「そうか、薬もってきてよかった。」 白い錠剤をリュックから取り出すと、フミの口に入れ、水を飲ませた。ルフィたちはじっとなにも言わずにそれをみる。脱水症状や熱中症に薬なんて必要だったか、と勘のいいナミとビビは少しだけ疑っていた。 「おれ、フミをおぶってくよ。」 さっきまでゾロに引きずってもらっていたチョッパーが人型に変身してフミを背中にのせようとする。 「チョッパー、おれがやる。」 ルフィがフミを起こすと、チョッパーがルフィの背にフミを乗せ。ルフィは少し後ろを振り返り、息をあげるフミをみつめる。 「はやく、涼しい場所探すからな。フミ。」 ルフィが歩いていくので、みんなも黙ってついていった。さっきまで"アーアー"と言っていたルフィがフミのことになると暑さなど感じさせないほど真剣だった。 チョッパーはその背を見つめて、少しだけ長く息を吐いた。このまま言わない選択をし続けていいのだろうか、クロコダイルを倒したら相談してみようとチョッパーは思った。 岩場につき、やっと影が見つかった。横に寝かせたフミの汗で張り付いた前髪を横に流す。意識が朦朧としているようでルフィの名前を呼んだり、たまにエースの名前も出た。 そこらへんで見つけた変な怪物の肉を、太陽の光で照らされた岩に乗せると勝手に焼いてくれた。それくらい暑いということだ。 「で、何なんだそのラクダは。」 岩場にたまたまいたラクダはどうやら野生ではないようで、後ろに乗る事が出来る。が、そのラクダは女しか乗せない変態ラクダだった。 「"マツゲ"って呼びましょう。2乗りだからフミを乗せて、交代で乗りましょうかビビ。」 「ええ。フミさん大丈夫?」 「………うん、ごめんね。足引っ張って。」 「何言ってんの、逆にフミのおかげでルフィのやる気も上がったわ。」 「そうなの?」 「そうよ、ルフィさんったらフミさんのことになると必死なんだから。」 ビビとナミの言葉にフミは笑みを漏らすが、それがあまりにも弱弱しくてナミは心配になった。もし、このまま治らなかったら……そんなことはあり得ないのに何だか胸騒ぎがした。 ―――この時のナミの勘は当たっていた。フミは治らない。 ―――――――――― この話の前半は本編での3話のお話です。 あと命が1年と宣告された女の子が砂漠なんて越えられるはずがないのです。それでも弱音を吐かずに頑張る姿は本当に書いている私自身、胸が熱くなります。寿命が近づくにつれて本当に悲しくなってくるので、今から怖いです(笑) prev next 戻る |