ドラム王国(014) 島を出航して1日で9人分の食料をルフィが食べてしまい、食べるものがなくなってしまったそんな日。 「フミ。」 「ルフィ?」 「チョッパーと、仲良いな。」 出航してからというものフミはチョッパーにベッタリだった。くまのぬいぐるみとチョッパーを両方抱きしめ、頭を撫でていた。 ルフィは明らかに嫉妬していて、それに気がついたフミは嬉しそうに笑う。 「私可愛いもの大好きだから。」 「知ってる………、けどよ………」 「ルフィのことも大好きだよ。」 ルフィの頬が赤くなるのをみて、もっとフミは嬉しくなった。ルフィのことがこの世で一番大好きなんだ。 「いつも恥ずかしいからって言わないくせに……。」 「言いたくなったの。」 病気が発覚して、恥ずかしいとか言っている場合じゃない。今伝えなければ伝えられなくなるとわかったら、もう止まらなかった。 「何かあったか?」 「ん〜?特に何もないよ?」 フミのことになるとルフィは勘が鋭い。どうやって隠すか、それが問題だった。 「フミー!!」 「あ、チョッパーくんが呼んでる。」 どこからかチョッパーの声が聞こえる。診察の時間だった。一味に知られないように静かに毎日診察することになっていた。メリー号は医務室がなく、バレないようにしなければならない。 「行くのか……?」 「うん、ごめんねルフィ。」 「今日はチョッパーに貸してやる。」 チュッと甘い音がして、ルフィの匂いに包まれた。フミの大好きな匂いだった。 「行ってくるね、」 「おう、行ってこい。」 名残惜しくも、フミはチョッパーのもとへ向かった。 待ち合わせ場所は倉庫。薄暗いここは滅多に人が来ない場所だ。 「遅いぞ!フミ!」 「ごめんね、チョッパーくん。」 「診察始めるぞ。」 フミが小さく頷くと、チョッパーは聴診器をつけて腹部にあてた。ドクドクといつもより早いリズムで刻まれる鼓動。 「心臓はやいぞ?」 「それは…………ルフィのせいなの。」 「あんまりドキドキしすぎると、ちょっと危険なんだ。」 「そうなの?」 フミはルフィとのキスを思い出し、胸が高鳴って顔も赤くなっていた。ドキドキすると、心臓が痛みやすくなり病気がはやく進行してしまう。。チョッパーは丁寧に説明した。 「………みんなに、言わなくていいのか?」 「うん。私ね最後まで海賊やりたいの。ルフィは優しいから船を降りろって言うかもしれない。ナミちゃんやサンジくん、ウソップくんゾロさんにビビちゃんは私に気を使ってくれるかもしれない。でも、どっちも嬉しいけど嫌なの。私はみんなと最後までいたいの。」 くまちゃんのぬいぐるみをぎゅーっと抱きしめて、チョッパーの丸い瞳を真っ直ぐにみてフミは伝えた。その必死さに、チョッパーは頷くしかなった。最後まで伝えてもらえない仲間の気持ちを考えれば残酷だが、フミを思えばこうするしかない。 「わかった。おれ、絶対言わない。」 「ありがとう……チョッパーくん。」 フミは微笑む。その笑顔を守りたい、チョッパーはそう思った。できる限りのことを最大限やろう、それがフミを守るためにチョッパーが出来ることだった。 島を出て今日で5日目、船はからくもアラバスタへ向かっている 何とか空腹に耐えながら、釣りをするルフィとウソップ。その釣りのエサはカルーだった。フミがビビに怒られるよと伝えた直後、やはり怒られた二人の頭にはタンコブが一つ。 「あれは何…。」 ビビが船の前方をみて声をもらす。なんと海の中から煙が上がっていた。大慌てで航海士のナミに伝えれば、特に害は無いらしい。 「ホットスポットっていうの。」 「何だそりゃ」 ホットスポットというのはマグマが出来る場所のことで、下には"海底火山"があり何千年何万年後にこの場所に新しい島が生まれる。 「すごい場所なのね」 「そうよ!」 「何万年っておれ生きてるかな?」 「…そこは死んどけよ人として」 カルーをエサにして二人が釣りを続ける中、船は煙の中に突入した。 その煙を吸ってフミが咳き込む。ルフィが大丈夫かと声をかける前にチョッパーが慌ててフミに駆け寄った。 「フミ!大丈夫か?」 「うん、エホッ…大丈夫だよ。」 そのチョッパーの行動にルフィは少しムッとする。1番に気づいて声をかけようとしたのは自分だ、と。 「フミ。」 煙でよく前が見えない中、ルフィはフミの腕を掴んで引き寄せた。突然の出来事にフミは小さな悲鳴をあげた。 「ル、ルフィ…びっくりした。」 「大丈夫か?」 「うん、ありがとう。」 「煙、吸わねェようにしてやるよ。」 ルフィは唇でフミの唇を塞ぐ。そしてそれは煙が晴れるまで続いた。 ーーーーーーー こちらの最初は本編の2話です。 本編では主人公目線になっています。 薄暗い中、声のトーンを下げて秘密で診察する二人を想像するだけで胸が痛くなります。 prev next 戻る |