ドラム王国(011)

ランブルボールという悪魔の実の変形の波長を狂わせる薬を5年間の研究で作り出したチョッパーは、基本3段階しか変形できない動物系の能力を7段階変形できるようにした。だけど効力はたったの3分間だ。
そしてその3分で手下を倒すことのできたチョッパーに見惚れていたルフィは城の中へとワポルを逃してしまった。ルフィは慌てて後を追いかける。

「中にはナミちゃんが……」

「あのカバ!ナミさんに手ェ出したら100回オロすぞ。」

「コラ!待ちな!!」

あばらが折れているというのに、サンジはほふく前進で城の中へと入っていく。ドクトリーヌが止める声もナミを救うことに必死で聞こえていないらしい。

「ったく、死にたいのかあいつは」

「チョッパーくん、血が出てる!」

フミは白いワンピースのポケットからピンクのハンカチを取り出してチョッパーに渡した。

「フミ……あいつすげェな」

「ルフィのこと?」

チョッパーはコクンと頷く。

「ルフィは海賊王になる男だから」

「海賊王?」

「海の王様のこと。」

「おれ、フミを救うためについて行くって約束したけど不安だったんだ。もしあいつらがおれをバケモノ扱いしたらどうしようって。」

「でもルフィの方がバケモノかもしれないね?」

「おれ、おれ………海賊になりたい」

フミは優しくチョッパーを抱きしめた。チョッパーは突然視界が真っ暗になって焦ったが、抱きしめられたぬくもりに安心して目を閉じる。

「大歓迎だよ。他のメンバーもすごくいい人ばっかりだから」

「おれ、仲間にしてもらえるかな?」

「きっと、大丈夫。」

フミの大丈夫は本当に大丈夫な気がして、チョッパーは涙を流しながら笑った。
その時、城の屋根の部分からワポルとルフィが出てきてルフィの手が伸びていく。ワポルは身動きが取れず、その伸びた手が誰に向かって飛んでくるのかわかって恐怖で震えた。

「何の覚悟もねェ奴が人のドクロに手ェ出すな。」

「ドクトリーヌ…ドラム王国が」

「この国は…ドクロに敗けたのさ。ヒーヒッヒッヒ!」

「ゴムゴムのォォオオ……バズーカァアアア!!!!」

ルフィが勝利した瞬間をみたフミは小さく微笑んだ。

すると、ゾロとウソップの声が聞こえた。フミが声をかけようとしたが、チョッパーが隠れたのを見て一緒に木の裏に隠れていることにした。
ルフィも屋根の上から降りてきて、ビビやドルトン達とも合流した。どうやらロープウェイで登ってきたらしい。
ドルトンに見つけられ、ウソップにバケモノ呼ばわりされたチョッパーは側にいたフミの手を取って走り出す。

「バカ野郎!おれが見つけた仲間ってあいつなんだぞ!」

「なにィ!?あれが!」

「ショック受けてフミ連れて逃げちまったじゃねェか!」

ルフィはウソップを殴って、チョッパーとフミを追いかける。タヌキのような体型から本物のトナカイに変形したチョッパーは背中にフミを乗せて全速力で走った。
ルフィを振り切ったチョッパーとフミは城の屋根の上へと座って、下で走り回るルフィを見下ろす。随分と逃げ回ったようで、満月の輝く夜になっていた。

「ウソップくんはあんなこと言ったけど、チョッパーくんの性格を知ったら絶対に仲良くなれると思うよ」

「行きたくねェわけじゃねェんだけど……」

「私は、チョッパーくんが好きだよ。」

「フミ………おれも!フミが好きだ。おれと普通に接してくれたし、笑いかけてくれた。」

「私はチョッパーくんと一緒に旅に出たいな。」

「…………おれ」

「お〜い!トナカイ〜!」

ルフィの声が響いてチョッパーはフミを抱えて城の屋根から飛び降りた。あまりの恐怖にフミは声が出ない。

「おいお前!いっしょに海賊やろう!」

「おれはお前たちに感謝してるんだ…だっておれはトナカイだ!角だって蹄だってあるし、青っ鼻だし。」

「チョッパーくん…」

「おれは"人間"の仲間でもないんだぞ!バケモノだし……おれなんかお前らの仲間になっていいのか…」

「うるせェ!!行こう!!!!」

ルフィは両手を空に掲げて、大声で叫んだ。チョッパーの瞳からは涙が溢れ、フミは微笑む。

「お"お"!!!!」

大きく返事をしたチョッパーにフミは抱きついた。良かったねと何度も言いながら、涙はポロポロと溢れていた。


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