ドラム王国(010) 「おい邪魔口!!!」 どこからからルフィの声が聞こえて辺りを見回すが見つからない。 「ワポル様あれを!」 手下が指差したのは城の頂点、Dr.ヒルルクの旗があった場所だった。折れた旗はルフィがロープで固定したらしい。その旗を片手で握り、ルフィはワポルを睨みつけた。 「ウソッパチで命も賭けずに海賊やってたお前らは!この旗の意味を知らねェんだ!!」 「その旗の意味だと!?麦わらァ!まっはっはっは!そんな海賊どものアホな飾りに意味なんぞあるか!」 「だからお前はヘナチョコなんだ。」 「何ィ!?」 「これは!お前なんかが冗談で振りかざしていい旗じゃないんだ!!」 そう言い放ったルフィがかっこよくてフミの鼓動は早くなる。こんな時にときめくのは不謹慎かもしれないが、胸の鼓動は操作できるものじゃない。 「カバめ!冗談でなきゃ王様のこのおれが海賊旗などかかげるか!その目障りな旗をいちいち立て直すんじゃねェよ!ここはおれ様の国だと言ったはずだァ!何度でもおってやるぞ、そんなカバ旗など!」 ワポルは旗をしっかりと握るルフィに向けて大砲を撃った。 「ルフィッッッ!」 「くっ…また…!」 「よけろ危ない!!」 フミ、サンジ、チョッパーがルフィを心配して声を出すが、ルフィは決して旗を離す気などない。 「お前なんかに折れるもんか!ドクロのマークは"信念"の象徴なんだぞォ!!!」 ドゴォオオオ!という音を立てて大砲はルフィに直撃した。煙がモンモンと立ち込めてルフィがどうなったのかわからない。フミは今にも泣きそうだった。 「吹き飛べカバめ!!!」 ワポルはまっはっはっ!と笑い声を漏らす。やがて煙が晴れ、そこには旗を握ったままのルフィがいた。ロープは切れて城から旗は離れていたが、ルフィのおかげで折れていない。血だらけのルフィに、フミは顔を真っ青にした。 「ほらな、折れねェ。」 「な………!?バカな、イカレてやがる!」 「これが一体どこの誰の海賊旗かは知らねェけどな…これは命を誓う旗だから冗談で立ってる訳じゃねェんだぞ!」 ルフィの言葉にチョッパーは胸を打たれる。 「お前なんかがへらへら笑ってへし折っていい旗じゃないんだぞ!!!!」 チョッパーはやっと、なぜDr.ヒルルクが海賊の生き方に憧れたのかわかった気がした。心から"すげェ"と思った。 「おいトナカイ!おれは今からこいつらブッ飛ばすけど、お前はどうする?」 「おれは………」 「このカバ野郎めが!そんなに旗を守りたきゃ、ずっとそこで守ってろ!」 ワポルはもう一度大砲をルフィに撃とうとする。フミは慌ててワポルを止めようと走り出すが、チョッパーの方がはやかった。 「おかしな生物がいたもんだ。一時期国民が雪男だと騒いでいた元凶はお前だな。どうせ誰からも好かれねェ人生を送ってきたんだろう。哀れな怪物よ。一人ぼっちのお前が何のためにこの国を救おうってんだ!笑わせるな!」 ワポルの手下たちの挑発にチョッパーは揺るがない。胸の中にDr.ヒルルクがいるから。 「うるせェ!仲間なんていなくなっておれは戦えるんだ!ドクターの旗がある限りおれは…!」 チョッパーの言葉にフミは私たちが仲間だよと叫ぼうと思ったが、上にいたルフィを見上げてやめた。ルフィが、船長が、もう決めたらしい。 「仲間ならいるさ!!おれが仲間だ!!」 そう叫びながらルフィは空から降ってきた。城の高さから飛び降りれば誰だって軽傷で済むはずがないが、ルフィは違う。何と言っても、能力者だからだ。 「おいトナカイ、お前あいつを仕留められるか?」 「なんて事ねェ!あんな奴!」 「じゃあ決まりだな。おれの相手は邪魔口だ!」 ルフィはワポルと、チョッパーは手下のクロマーリモとチェスと戦うことになった。サンジはと言えば、この城に辿り着くために山を登っていたときに折った骨がまだ完全に治っておらず、動けなくなってしまったのだった。 「サンジくん大丈夫?」 「フミちゃんに心配されただけで治っちゃったよ〜!」 「安静にしときなって言っただろ!」 ドクトリーヌに注意されて、折れたあばらを動かさないようにサンジはしゅんとふて腐れた。 prev next 戻る |