08



「◯◯、元気にしてたか?」

「うん。元気元気!」

「もう泣いてねェか?」

「うん。全然泣いてないよ。」

嘘。毎晩毎晩あなたを想って泣いてるよ、なんて言えるわけないからこう言うしかない。嘘でもいいから、私を愛してくれないだろうか。

「夢は、見つかったか?」

「ううん、まだ。」

昔からルフィは何かと夢にこだわっていた。◯◯の夢はなんだ、とそればかりで私に気持ちがあるとは到底思えない。夢を持ったら、なにがあるんだろう。夢を持てば、なにが変わるんだろう。
なぜ私には「仲間になろう」と一度も。

「あ、また仲間が増えたんだ!」

「ルフィの欲しがっていた音楽家?」

「おう!ブルックって言うんだ。」

他の人には容易く声をかけるくせに。醜い感情が渦巻く。
泣きそうになるのを堪えながら新しい仲間の話を聞くのはこれで何回目だろう。いつになったらここに私が加わるのだろうか。ルフィにとって私は一体。

「私はね、また色んな船に乗ったよ。でももう終わり。全部終わらせてきた。」

別れを告げて殴られたりもしたけど、その時の傷が全部治ってからルフィに会いに来たんだ。
真っ白な、汚れのない私を見てもらうために。何度も色んな男性と枕を交わしている時点で、すでに汚れているのかもしれないけど、気持ちの問題だ。
ルフィが新聞に載る度に、嫉妬してきた私はもう我慢することが出来なかった。

「そっか。もう終わったのか。」

「うん、だからさ。ルフィあの…」

「とりあえずメシにしよう。腹減った。」

まるで逃げるように男部屋から去って行こうとするルフィの腕を掴んで引き止める。そしてそのまま赤い背中を抱きしめた。

「逃げないで。私と向き合ってよ。」

今まで沢山駆け引きをしてきたけど、ルフィあいてにそんな余裕はない。私の思っていることをそのまま伝えると決めていた。

「私は初めからルフィのことしか見てない!!」

「サンジと、夜なにしてた?ゾロと、コソコソなにしてた?シャンクスと他の奴らとなにしてた?全部遊びだったのか?騙してたのか?」

雷に打たれたかのような衝撃。
全部ルフィにバレてたんだ。と同時に汚い私を見られているようで、消えたくなる。それでも、伝えなければ。

「どんなに忘れようとしても、ルフィが頭から離れなかったッ!!」

涙が溢れ出しても拭わずに私は叫ぶように言った。何度も何度も忘れようとしても無理だった。いつでもルフィの笑顔が頭に思い浮かぶ。忘れることなんで初めからできなかったんだ。

「汚れた女は嫌い?」

ルフィは肯定も否定もしないまま私をやんわりと振りほどいて男部屋から出て行った。もうこの部屋には誰もいない。それをいいことに私は声をあげて泣いた。





(◯◯のために作られたスープが冷めた頃には)
(ルフィのハンモックの上で涙を流して眠っていた)


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