06
「帰らないのか、そろそろ。」
「いきなりだね、別れたいんだ?」
「すまない。」
「うそうそ。のらないでよ!レイリーさん!」
「そうだったな。」
昔から仲のいい彼、レイリーは隣で酒を飲みながら私をみる。いつも別れたその日はここに来てお酒を飲む。そして忘れるのだ。
娘と思ってくれてるのだろう、たまにその瞳からは父に重ねた何かを感じる時がある。
「最近は多いな。来る回数が。」
「愛してほしい。本当に。」
「彼に、か。」
コクンッと頷く私はきっと酔ってる。彼が振り向くはずなんてないのに。なにを期待しているんだろう。
私はレイリーのことを本当の父親のように接している。海賊王である父なんて会ったことがないのだから、父親なんて思えない。
「◯◯……もしあれなら…」
「いや、やめないよ。止めても。」
「……すまない。◯◯は魅力的で、だから男共はお前を捨てきれない。心配なるほど。」
私は何も答えず、お酒をグッと飲み込み、席を立つ。その心配が嬉しいようで、煩わしく感じる時がある。口には出さないけど。
レイリーはいつも私を心配してくれている。ビブルカードを作ってくれと何度お願いされたことか。酷だけど、レイリーは本当のお父さんじゃないよ。と言いたかったが最後まで言えなかったな。
「全員と別れてくるよ。」
「つまり、もう来るつもりはないと。」
「彼が振り向いてくれれば、違う形で会えるかもしれないね。」
違う形。そう、ふられた私なんかじゃなくて幸せに満ちた私のこと。親への挨拶じゃないけど、堂々と紹介できるように。
「それならすぐだろう。」
「ふふっ、ありがとう。レイリー。」
レイリーの頬にチュッと触れるだけのキスをして、消えた。どうかレイリーが私なんて心配せずに、娘なんて思わずに、自分の人生を歩めますように。そう願いを込めた。
(酒の減りがはやいのはきっと気のせいだと)
(自分に言い聞かせながらまた酒を飲んだ)
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