03
「もしおれがお前の彼氏やめるって言ったらどうする」
目の前のこいつはなにを言ってるんだろうか。
その黒い瞳は私を見据え、まるで本気みたいに見える。
「死ね。」
「お前がな。」
少しの沈黙のあと、ぷっと吹き出す私たち。
「どうせ◯◯のことだし、また新しい男つくって別れてってやってんだろ?」
「さすが我が弟。鋭いな。」
ポートガス・D・エース。海賊王の息子で私の双子の弟だ。世間には知れ渡っていないし、シャンクスやローも知らなかった事実だ。
エースに似て、私も黒髪に黒い瞳。そばかすまでお揃いである。
エースのように海賊になろうとも思わなかったし、海軍に入ろうとも思わなかった私は、現在知っての通り男遊びをしている。
「白ひげ海賊団に入ったらいいじゃねェか。」
「うーん、私の恋が実ればね。」
「諦めろよな。男ばっかと遊んでるから振り向いてもらえねェんだろ。」
「違うよ、きっといつまでも振り向いてくれないよ。」
どれだけの男を捨てようとも、唯一振り向いて欲しいその人はきっと振り向いてはくれないはず。他の男の人ならできる駆け引きも彼には通用しない。
「まぁ、男遊びはやめろってことだ。」
「それは、無理かな。だって楽しいし?」
「お前、おれと同じ歳だよな。たまにすっげェ年上に見える。」
「老けてるってこと!?」
お肌のお手入れも気をつけてるし、綺麗にメイクもしてる。食生活もしっかりしてるし。
なにより、女性として愛されるほど女は綺麗になるらしい。
「綺麗になったってことだ。」
「あーらー?そんなこと言えるようになったんだー!」
「てめェ!!」
エースの頭をガシガシと撫でてやると、怒られた。まぁ、たとえ弟に男遊びをやめろって言われてもやめる気はないよ。
「じゃあそろそろ行くね。」
「また来いよ!」
「わかってるって!」
手を振って、私は消えた。
エースがもし他人だったら時、私は平気で彼を捨てたのだろうか。そんなことを考えてしまうくらい、最近の私はどうかしている。
(たった一人の家族だから)
(おれはお前の味方だから)
(好きにやってこいよ。)
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