02
「お前の男、やめるか。」
私の様子を伺うように言ってのけた目の前の外科医はニヤリと笑っている。
ふーん、冗談で言ってるわけね。これで私の気持ちを確かめてるわけか。
「あー………」
もともと君も、私の体にしか興味ないんでしょ。と言いたかったけど、それじゃあかっこよくない。
「そうかー。じゃ、ばいばい。」
私の愛用のリュックを持って立ち上がる。
ローはそこで、返事は分かっていたはずなのに眉を上げて驚いたように見えた。
「なるほどな。最初からおれに興味なんてねェわけか。」
「ないわけじゃないよ、興味がなかったのは君の方でしょ?ローくん。」
ニヤリと笑っていたローの表情が少し動いた。図星ってわけね。悲しいのよ、私に興味を示してくれないなんて。
自分も同じことをやっているのだから、ローが興味がないのなんてすぐに分かる。
「お前がみてるのは、違う男だろ。」
「えー?そう見える?」
「はぐらかすな。」
「君には教えられないな。君は本当に人を好きになったことがないからね。」
恋なんて、愛なんてくだらないとでも言いたいんだろう。ローは表情を変えずに私をみた。
なのになぜ、ローは時折私を愛しているかのように抱くんだろう。
「本気の恋っやつをしてるってことか?」
「ええ、そうなるね。私には愛する人がいるの。」
「何人もの男と遊んでおきながら、よく言うな。」
「だって楽しいんだもん。」
そろそろ君ともお別れだね。
最近別れが多い気がするのは、きっと私の気持ちに大きな変化があったからだ。
ローは今度こそ眉ひとつ動かさず、私に背を向けた。
「じゃあな、◯◯。」
「ありがとう。さようなら。」
ローの目の前から私は消えた。ローは振り返ってもくれなかった。
(本気かはわからねェけど)
(お前のためなら何でもできるってくらいには)
(大事にしてた)
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