01
「もうお前の男はやめさせてもらう」
静かに、低い色気のある声で彼は言った。
色んな男と遊んでる私が言うのも何だけど、こう言われると私が捨てられたみたいで嫌な気分だ。目の前の赤髪は真剣な表情で私を見つめる。
期待するような眼差し。私が縋り付くのを待っている。
「えええ〜!そんなのヤだよお!」
赤髪という男は、案外女らしい女が好きだ。ブリッコでも許されるし、そんな可愛らしい私が好きになったと言う。私はすがりつくようにシャンクスを抱きしめた。
「じゃあその前にお前今から男全員と別れてこい。」
あっちゃー。ばれてたか。というのが率直な感想だった。
シャンクスの船は乗り心地よかったんだけど。仕方ない、降りるか。次は誰にしようかな。と思考を巡らせる。
シャンクスは私よりもずっと年上のはずなのに、まるで子犬のような目をしていた。縋りつきたいのは、シャンクスだろうか。
「ごめんね、それはできないや!」
「◯◯の本命は誰だ」
「言えない」
シャンクスだよ、とはとても言えなかった。
傷ついたようなその顔は似合わないのに、私の前ではしてしまうのだから、良心が痛む。良心なんて、持ってはいけないものだけど。
「あなたが麦わら帽子をかぶったままなら、私は本当に好きになったのかもしれないな。」
小さく呟いた私の言葉は聞こえなかったようで、シャンクスは首を傾げた。私はその疑問に答える間もなく、手を上げる。
「じゃ、さよなら。」
「おいおい、はやいな。」
「名残惜しい?」
「そりゃそうさ、おれが惚れた女だ。」
笑っているけど、目は泣いてるよシャンクス。私を本当に愛してくれていたのは知ってる。
その本気さが、たまに私を傷つけていたとも知らずに。
「ありがとう。さようなら。」
「お前の荷物は……」
「好きにしてくれていいよ。」
シャンクスは無くなった左腕に触れて、私に微笑んだ。名残惜しい、止めたい、と表情でわかってしまう。
それでも私は罪悪感すら感じなくなっていた。最低な女なのに。弄んでいただけなのに。
「会いたくなったら会いに来ていいんだからな。」
「うーん、会いたくならないかな。」
次会ってしまったら、シャンクスに同情しちゃうでしょ?
私はシャンクスにニッコリと笑いかけると、消えた。消える前に、私に向かってくる右腕が見えたが私には届かない。
私は瞬間移動できる能力をもつ、悪魔の実の能力者だ。
(お前の物、捨てれるわけねェだろ)
(散々もてあそばれても、)
(おれはお前が好きだった)
前 / 次