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「できたー!!!」

完成した麦わら帽子を抱きしめる。お婆さんみたいにうまくは出来ていないけど、私なりに頑張ったと思う。想いが全部込められたこの帽子を、どうしようか。
実を言うと、作っている間気持ちが揺らいだ。燃やすと決めていたのに、ルフィのことを想うとやっぱり出来そうにない。やっぱり、ルフィが好きで好きでどうしようもない。

「完成したんだね。」

「おばあさん!ありがとう!」

おばあさんは優しい笑みを向けてくれる。
無理にルフィを諦めることなんてしなくていいのかもしれない。帽子を作りながら、ルフィへの想いを巡らせて、気付いた。ゆっくりと忘れていけばいいんじゃないかと。

「その帽子は、どうするんだい?」

「………迷ってる。」

「悩めばいいさ、私は店番してるからね。」

「うん、ありがとう。」

店番へ向かったおばあさんの背中を見送って、私は店から出た。帽子をかぶり、あてもなく歩く。雲ひとつない、晴れた空を見上げてルフィの顔を思い出した。ルフィの笑顔が頭から離れない。そんな簡単に、全てをかけた恋を忘れることなどできない。
激しい風が吹く。気がつけば、辺り一面花が咲いていた。おばあちゃんが大切に育てていた花達が風に揺られている。

「あっ。」

また風が吹き、私の頭にあった麦わら帽子を飛ばして行った。初めは追いかけたけど、手が届かない。
でも。これでいいのかもしれない、風と共に帽子も私の気持ちも飛んで行けばいい……
私は店に戻ろうと、飛んで行く帽子に背を向け歩き出した。

「◯◯。」

愛しい、声がして振り返る。そこには私の作った麦わら帽子を持ったルフィがいた。

ーーーーどうしてここに。

それが最初に思った言葉だった。会いたくて会いたくなかった、そんな人。ルフィの表情は帽子を深くかぶっているから見えない。ゆっくりとした足取りで近づいてきたかと思うと、そっと私に帽子をかぶせた。

「◯◯を迎えに来た。」

「!!、」

やっと表情が見えたかと思うと、ルフィは今までに見たことがない顔をしていた。いや、見たことある。子供の頃、ルフィはよく私にこの顔を向けてきた。恋をしている、顔だ。

「なつ、何言ってんの………ナミは…ナミに告白してた……のに。」

素直に喜べばいいのに。素直になるって決めたのに、すぐにこういう態度をとってしまう。でもナミに告白していたのは確かで、ルフィがどうしたいのか私にはわからない。

「あれは練習で……それから◯◯はまだ仲間じゃない。」

「何が言いたいの…?」

「怒ってるんだぞ、おれ。◯◯が冷たくて大人な男が好きって言うから努力して、演技して、なのに◯◯は泣くだろ?お前は、結局どんな男が好きなんだよ。」

ルフィは全部私のためだったんだ。
それにようやく気がついて、バカみたい。昔から両想いだったのにどうして突き放すようなことしたんだろう。嫉妬してる顔が見たいからって、ルフィを試して楽しんで………

「ルフィみたいな人が好きっ」

「◯◯は悪い女だ。」

ルフィから言われると、泣きそうになる。悪くて最低な女なんだよ。ルフィが好きなのに他の男と遊んでた、汚れた女なんだよ。

それでも、私はルフィが好きだ。

「そんな◯◯に……惚れたんだ!前にも言ったけど、おれの事が好きなら、ちゃんとおれだけを見ろよ!!他の男なんて絶対見るな。もう、そんな◯◯見たくない。」

涙が溢れた。この言葉を待ってたんじゃないかな。そのままルフィの胸に飛び込んで、泣きじゃくりたいけど今は耐える。

「ルフィのバカァァ!!」

「◯◯もバカだ!おれはずっと、◯◯だけなのに。お前は、他の…」

「ごめんなざい!!好きだよ!大好きだよ!!だから……抱ぎしめで!!」

涙でぐちゃぐちゃになってもいい、男を落とすためにしていたメイクも取れてもいい、ぎゅっと抱きしめてくれたルフィに愛されるならどうでもいい。

「◯◯は大バカだ。おれが◯◯以外の奴見るわけねェだろ。子供の頃約束したじゃねェか。」

ああ、確かルフィが演技する前だった。


ーーーおれが海賊になったら◯◯もおれの船に乗れよ

ーーーもうちょっと大人になったらおれの女になれよな

ーーー◯◯以外好きにならねェから



ルフィの台詞がフラッシュバックするを覚えててくれたんだね。どうしてルフィだけ見ていなかったんだろう。他の男になんて最初から興味すら無かったのに。本当にバカだ。

「◯◯、おれの女になれ。」

「うんっ」

涙を拭って、ルフィの唇に口付けた。どんどん溢れ出してくるこの想いは何だろう。溢れて溢れて、止まらない。ルフィに触りたい。

「うおっ、わっ!」

そのままルフィを押し倒して、馬乗りになる。ルフィは慌てた目で私を見てるけど、止まらない。

「普通逆じゃねェか?」

「私の方が経験あるから………あ、ごめん」

ルフィは私を簡単に逆転させた。ルフィが私に馬乗りになる。嫉妬でいっぱいだというその目は、私に対して本気なんだと実感できた。

「いいから黙れ」

ルフィは私の唇を塞いだ。何度も何度も、私の気持ちを確かめるようにキスされる。こんなキス初めてだ。愛しさに溢れ、両想いになって初めてできるものなんだろう。

「今はこれだけな。」

「恥ずかしい?」

「ううん、興奮してる。」

そんなこと耳元で呟かれたら顔に熱が集まるに決まってる。はやいルフィの鼓動に負けないくらい私のもはやかった。




NON PENALTY
(刑罰は与えないけど)
(今までの分のお返しは)
(ちゃんと貰うから)
(とことんおれに尽くせ)





2014/06/08


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